「人との出会いが新しさをもたらす」。『SWITCH』編集長が語る「インタビュー」と「旅」
雑誌からの依頼を断っていたマツコ・デラックスを表紙に据えてインタビューを掲載したり、SMAP解散騒動の最中の木村拓哉にフォーカスして「アウトローへの道」という特集を組んだりするなど、尖った企画を繰り出し続ける『SWITCH』(スイッチ・パブリッシング刊)。
その編集長である新井敏記氏が手掛けるもう一冊の雑誌が、「人、旅をする」をテーマに、賢人たちと旅をする雑誌『Coyote』(スイッチ・パブリッシング刊)だ。
■写真家との話から構想を固めていった『Coyote』
表紙には悠久の自然の中で佇む写真家・星野道夫の姿。そして中を開くと目に飛び込んでくる「トーテムポール」は先住民の生活の跡を示し、人々が信仰した神話の息遣いを感じることができる。アラスカに魅せられた星野の写真の数々は、思わず息をのむものばかりだ。
最新号となるVol.59では、この雑誌の創刊に大きな影響を与え、1996年8月にロシアで熊に襲われて亡くなり、没後20年を迎えた星野道夫とともに、カナダ西部の「ハイダ・グワイ」を訪ねる。
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――『Coyote』最新号の星野道夫さんの特集の巻頭言で、新井編集長は「自然の理不尽さに納得できずにいる」と書かれています。この「理不尽さ」はどのような意味を込めているのでしょうか。
新井:彼はアラスカの先住民であるクリンギット・インディアンから、「カーツ」という神話を元にした熊の家系の名前をもらいます。
そして、その名前を軸にインディアンの神話の世界を訪ねていくのですが、最期は彼の守り神であるはずの熊に襲われて命を落とした。
それは、その時の状況や環境を含めていろいろな理屈を当てはめることができます。けれども、僕はいまだに彼の死に納得ができていないんです。もう彼の新たな写真を見ることも、文章を読むこともできないわけですから。
そして、いまだに納得できないからこそ、彼の遺した写真や文章を色あせることなく伝えていきたいというのは、一人の編集者としての想いですよね。
星野さんは、自然は人間にとって決して脅威ではないこと、自然に沿って生きるとはどういうことかということを、絶えず伝えてくれていました。だから、僕らにとって、彼のメッセージを伝えていくことは大きな目標なんです。