初版部数は「平均的」。『英単語の語源図鑑』ベストセラーへの道のり
2020年の東京オリンピックを見据え、「外国人と少しは話せるようにならないと」ということで英語に関する本を読もうと考えている人は少なくないだろう。
今、最も売れている英語本の一つが、かんき出版から刊行されている『英単語の語源図鑑』だ。
2018年5月23日に書店に並ぶと、じわじわと部数を伸ばし、発売5ヶ月後の10月には25万部を突破。2019年8月末現在で60万部超と異例のベストセラーに。9月4日には第2弾となる『続 英単語の語源図鑑』が発行され、シリーズ70万部となっている。
著者の清水建二氏とすずきひろし氏はともに英語講師で、人に英語を教えるプロフェッショナル。そして本書の最大の特徴である英単語すべてに添えられているイラストを、本間昭文氏が担当している。
かんき出版情報企画部次長の相澤健一さんは、このイラストこそが最も差別化している点ではないかと考える。
「イラストをふんだんに使った『語源図鑑』というアイデアは、著者の清水さんによるものです。それを編集者が形にしたところ、『これは面白いものができるかもしれない』となりました。実は、同じ清水先生の著書で、同じく語源を切り口にした英単語本があったのですが、全ての単語にイラストをつけるという切り口を追加することで、英単語を直感的に理解しやすくなるという差別化ができました」
■「英語を学び直したい」と思っていた人たちが手に取る「想定外」
本書では、語源を手がかりに英単語を関連付けて覚える方法を提唱している。
例えば「attend」という単語は、「at」と「tend」に切り分ける。「at」は前置詞で「~の方へ」という意味、そして「tend」は「伸ばす」という動詞なので、「~の方へ足を伸ばす」=「参加する、出席する」という意味になる。
さらに「tend」は「外に」を示す「ex」と結びつくと「extend」=「延長する、伸ばす」となり、「共に」を意味する「con」と結びつくと「contend」=「争う、競い合う」と、いわば芋づる式に広がっていく。さらにすべての単語にイラストを加えることで、感覚的に単語の意味を捉えることができる。
このように手間暇と工夫が光る一冊だが、初版は5000部だった。「弊社としては平均的な部数。当初からベストセラーになるという確信があったわけではありませんでした。」(以下コメントは相澤さん)
それでも、刊行当初から売れ行きは良く、「早い段階からレビューや読者からの感想も多くいただいていて、『こんな本がほしかった』という声をもらっていました」という。
もともとの本書のターゲットは英語を学習している人たち。しかし、実際売り場に本が並ぶと、それを手に取る読者は、TOEICや英検での資格取得を目指しているような人たちだけではなく、「気軽な気持ちで英語を学び直したいと思っている人たち」だった。これが本書のヒットを手繰り寄せた最大の要因の一つなのだろう。
「いわゆる『学び直し』の層と言いますか。オリンピックの影響かどうかは分かりませんが、ちょっと英語を学び直したいという気持ちのある人たちが実はたくさんいた。その結果、語学書の棚だけではなく、書店の売れ筋や新刊の棚に置いていただくことができた。そういう部分は大きかったと思います」