だれかに話したくなる本の話

交錯する運命と冒険『天風』に込めた作者の思いとは

『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)

『宝島』(スティーヴンソン)、『海底二万マイル』(ヴェルヌ)など、冒険小説は何歳になっても、私たちの心をつかむ。もしかしたら、私たちには「知らない場所を、自分の知力と体力を頼りに旅してみたい」という本能的な欲求があるのかもしれない。

『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)もまた、私たちの奥深くに刻まれた旅心を刺激してくれる小説だ。「神子」にまつわる伝説と、その伝説に魅せられた人たちが織りなす人間ドラマと、どこにいるかもわからない人を探す旅。それは、インターネットやSNSが普及した現代に生きる私たちにはもうできないものなのかもしれない。

今回は著者の小山結夏さんにインタビュー。この物語に込めた思いについてお話をうかがった。その後編をお届けする。

天風

天風

貧しい村と、そこに暮らす母を救おうと修行の旅に出た男がいた。理京と名を改めた男は、旅のさなか、二人の神の子に宿された玉の封印を誤って解いてしまう。龍子と風丸と名乗る神の子は、やがて別々の道を歩むことに。宿命を負った神の子と、親元を離れたひとりの少女、琴芽。そして玉の持つ威力に惑わされたものたちが繰り広げる、ファンタジー冒険小説。