新刊ラジオ第1510回 「理不尽な給料―なぜサラリーマンは優秀でも公務員より安月給なのか?」
「なぜサラリーマンは優秀でも公務員より安月給なの?」「あなたの給料が安い理由は何?」 本書は、人事・賃金制度コンサルタントとして数多くの会社を見てきた著者が、日本に存在する不自然な賃金格差のカラクリと実態を解説します。サラリーマンや就職活動中の学生、派遣社員やパート・アルバイトが知っておくと役立つ情報満載です。
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概要
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◆この本をひと言でまとめると 「日本の“理不尽な給与”の現場を紹介する」
◆著者について 山口俊一(やまぐちしゅんいち)さんは、人事コンサルタントとして、評価制 度や給与制度の設計を20年以上も行ってきた方です。個人商店のような小規模の 会社から、東証一部上場の大企業まで、さまざまな会社における、賃金事情の現 場を見てきました。
◆おすすめの読者 ◎これから就職活動を控えた学生さん ◎派遣社員・パート・アルバイトなどの非正規社員 ○民間企業に勤めるサラリーマン ○給与に不満を感じる方・収入を上げたいと考える人 (賃金が決まるカラクリを知るという意味で)
同一労働同一賃金の考え方
本書は、人事・賃金制度コンサルタントとして、多くの会社の給与制度を構築 してきた著者が「現代の賃金事情」を解説した本です。大企業VS中小企業格差や、 官民格差、規制業界の賃金構造にまで話題は及び、世の中の様々な“不条理な給 料”について読むことができます。
山口さんは、多くの給与制度を見てきた上で、このように断言しています。
『日本の賃金は理不尽である!!!』
なぜ、山口さんは、「日本の賃金は理不尽だ」といっているのでしょうか。
賃金政策には、「同一労働同一賃金」という考え方があります。これは、「同 じ価値の仕事内容であれば、(性別や雇用形態に限らず)同じ賃金を支払おう」 という考え方です。つまり賃金は、「仕事の内容×仕事の出来ばえ」で決めよう というものです。
山口さんによると、「同一労働同一賃金の考え方は、先進国では当然の考え方 として認識されている」とのことなんですが、日本でそうはなっていないことは、 今現在働いている方ならわかると思います。
たとえば、中小企業の給料は大企業の7割以下、小売業の給料は銀行の7割以 下、女子社員の給料は男子社員の7割以下、派遣社員の給料は正社員の7割以下 になっているという事実とその理由が、この本では具体的データをもとに紹介さ れています。
これを理不尽だと考えるのか、社会がそういう仕組みで動いているんだから仕 方ないと考えるのかはそれぞれだと思いますが、次のような例を紹介します。 下さい。
給食のおばさん700万円、掃除のおじさん900万円
給食のおばさんとして親しまれている学校給食員。公務員の場合、平均給与 が月額で36万600円。これが民間の調理師平均だと、25万6800円。1.4倍も公務 員の方が高いことになります。
しかも、年齢別で見ると、学校給食員の月給のピークは55歳から59歳の層で、 44万8300円。仮に、年間4ヶ月の賞与としても、700万円以上の年収ということ になります。一方で、この年代の民間調理師は、400万円ほどにしかなりませ ん。 実に、1.7倍以上の開きです。
また、清掃職員の場合、これまたピーク時は55歳から59歳の層で、平均月収 にして、55万9600円、年収だと900万円前後になる計算。同じ年代の民間廃棄 物 処理従業員は、月給32万7900円、年収で500万円前後です。
民間企業は、基本的に市場原理の中で戦っています。飲食業であれば、コス トを一定以内に抑えなければ店が成り立たないので、自ずと調理師の賃金水準 も決まってきます。
一方、公務員の給料は、毎年昇給していくしくみのため、たいていの人は定 年前が一番高くなるのです。今時たいていの民間企業であれば、昇進・昇格せ ずに同じ仕事のレベルを継続していれば、何年かすれば給与が頭打ちになりま す。それ以上は、年齢を重ねても給与水準は上がりません。
それに対して、公務員の場合は、昇格できない人もほぼ定年まで昇給が続く。 そのため、55歳から59歳の層の官民格差が最も大きくなっているのです。
(P187〜188より抜粋)
いかがでしょうか。 同一労働であっても、官・民で、1.4倍から1.7倍以上も公務員の方が高くなっ てしまう例のひとつです。公務員の前時代的な年功序列の賃金制度は、度々、取 りざたされますが、これもひとつの“理不尽な賃金”といえるのではないでしょ うか。
世の中にある6分類の理不尽な給料
官民間の格差について一例をご紹介しました。 このように本書では6つの区分にわけて、日本に存在する不自然な賃金格差―― この本では「理不尽な給料」と表現しています――を解説しています。
<6つの区分> 1.企業間の格差(規模や業種など) 2.年齢・役職間の格差 3.職種間の格差(営業職や技術職など) 4.男女間の格差 5.雇用間の格差(正社員と非正規社員の格差) 6.官民間の格差(公務員と民間企業の格差)
賃金格差は、6区分それぞれにおいて存在しています。
山口さんは、「いつまでも公務員や規制に守られた産業だけが高い賃金を享受 できるのは「理不尽だ。仕事の価値や能力、努力が正当に評価されて、それに見 合った賃金が決まる社会に近づいてほしい」と、考えを発する一方で、「同じ努 力をするなら、報われるフィールドで勝負すべきだ」など、理不尽な給与格差が そうそう変わらないことを認めた上での働き方というものも本書で指南していま す。
◆まとめ 業種、雇用形態、その他、色々な要因からなる、世の中の「給与格差」のカラ クリを明らかにした一冊。興味本位で読んでみるのも良し、自分の能力を活かし て給与アップを目指せるフィールドを探す参考にするのも良し、おすすめの一冊 です。
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