『女王フアナ』ホセ・ルイス オライソラ著【「本が好き!」レビュー】
提供: 本が好き!狂女とも呼ばれたフアナの生涯を追った本です。
カトリック両王と呼ばれるカスティーリャ女王イザベル1世とアラゴン王フェルナンド5世のもとに産まれたのは四人の娘と一人の息子だった。
グラナダ陥落によりレコンキスタも完了し、カスティーリャとアラゴンの結びつきでスペイン王国が誕生する。
カトリック両王の子供たちは当然のごとく近隣の王国と婚姻による結びつきのために結婚相手が決められる。
なかでも神聖ローマ帝国とは長男フアンとハプスブルク家の王女マルガレーテ、次女フアナとマルガレーテの兄であるフェリペ美麗王という二重の婚姻で結ばれることになる。
だがハプスブルクに嫁いだフアナの幸せは短かった。
倹約家のイザベル女王が大盤振る舞いをして大艦隊でフアナを送り出したとき、フアナの未来は明るく輝いていた。
そして滞在先の修道院で夫となるフェリペと出会い、その日の夜に結婚してしまった時も。
10年の結婚生活で次々と子供を産んだことも、幸せの象徴だろう。
狂女と言われる所以は政略結婚だったにもかかわらず夫を愛したことだったのかもしれない。
その愛の激しさはまさしくスペインらしいのかな。
浮気な夫に愛想をつかさなかったのが原因のような気もするけどね。
だがフアナは夫の浮気と子供の健康の心配をしていればいい立場ではなかった。
両親の期待を一身に背負った長男フアンが子のないまま病死し、ポルトガル王に嫁いだ姉のイザベルは産褥で死んで産まれた子も幼くして病死する。
こうしてフアナにアラゴン・カスティーリャの継承権が回ってきて、フアナの産んだ長男カルロスはアラゴン・カスティーリャに加え神聖ローマ帝国の継承権も持つことになる。
美男ではあっても思慮の浅いフェリペは政略にもフアナや子供を利用するし、両親との間の溝にも苦しめられたのでしょう。
さらに夫が病死して今度は父親が利権のために娘を幽閉し、それは息子に引き継がれて生涯続くことになる。
歴史的にも有名な狂気だけれど、本書を読む限りでは完全に精神を病んでいたというわけでもなさそうだ。
躁うつ病の気質に周囲の扱いがそれを悪化させたかのように語られていました。
精神は脆くても身体が頑健だったのは幸せなのか不幸なのか。
カバーは映画化された時のワンシーンのようだけど、本作で描かれるフアナのイメージ通りの綺麗な人ですね。
これなら狂っていったとしても愛に苦しみ傷ついていく女王といった風情がある。
しかしプラディーリャの描いた狂女ファナの2枚の絵のほうが迫力があった。
(レビュー:DB)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」