「当然」か「不要」か 会社が社員に課す「ノルマ」の功罪
「〇〇さん、今月の売上どうなってる?」
「数字を持って初めて一人前」
ほとんどの企業の現場では、こんな言葉が飛び交っているはず。話題にしているのは、そう「ノルマ」だ。
ノルマを達成することに心から燃えられる人ならば何も問題はない。しかし、ノルマを重圧に感じたり、ノルマを達成するために働いている自分に嫌気がさしている人も、きっといるはずだ。そして、こんな疑問もわいてくる。
「ノルマを課す管理方法は、企業にとって有益なのだろうか?」
■社員にノルマを課すのは逆効果 その理由とは
そもそも、従業員にノルマを課す企業の思惑とはどのようなものか。
そこには当然ながら業績の向上があり、従業員を管理したいという思惑もある。ただ、従業員をノルマで縛りつけることで、業績は上がるのだろうか?
『ノルマは逆効果 ~なぜ、あの組織のメンバーは自ら動けるのか~』(藤田勝利著、太田出版刊)では、この問いに対して「ノルマは逆効果」と言い切り、数値目標で従業員を従わせても長期的には企業の利益にはならないとしている。
会社として従業員にノルマを負わせることにはメリットもある。課せられた数値目標を達成するためにはどうすればいいのかを考えさせ、実行させることによって、営業であれば売るためのスキルは身についていくだろう。
ただ、こうした働き方は決して「主体的」とは言えない。ノルマとは、本人の意志とは別のところで課された義務だからだ。義務を果たすための行動を主体的とは呼ばない。そして、こうした働き方を長く続けることはむずかしい。
社員はノルマをこなすために入社するわけではない。その人なりにその会社でやりたいことがあって入社してくる。そうした人材にノルマだけを与え続けると、次第に疲弊し、モチベーションは失われる。
人材それぞれへの影響だけではない。本書では、ノルマを課すことの組織への悪影響についても指摘している。
ノルマを追うことによって、それ以外のことへの関心度は下がる。最終的に行きつくのは「ノルマさえこなしておけばOK」という思考だ。そうなると、組織全体の改善のアイデアや、新しいビジネスのアイデア、自社が提供しつつある新しい価値についてのアイデアは生まれない。
こうなった会社はジリ貧だ。未来についての新しいアイデアを生む時間を削って、目先の利益を作っている状態だからである。ノルマという短期目標を追わせた結果、会社の将来が損なわれてしまうことが往々にして起こりうるのだ。経営陣がそのことに気づいた時にはもう遅い。方向転換には大変なコストと時間がかかる。
とはいえ、ノルマなしの組織マネジメントは可能なのか。どんな組織も何かしらのノルマがあるのではないか。という疑問もあるだろう。本書ではその問いに答えて、ノルマのない会社の実例と、そこで行われているマネジメントについて解説していく。
「あと何件で売り上げ達成?」
「売り上げを達成してから言いたいことを言え」
長くこんな言葉が飛び交ってきた日本の企業だが、ノルマがなければ社員は働かないというのは経営側の思い込みにすぎない。そんなものがなくても成果と業績を残せる組織を作るために、本書は多くの学びを与えてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)