【「本が好き!」レビュー】『マヤ文明の謎』青木晴夫著
提供: 本が好き!アメリカ大陸で栄えた文明の中でもマヤ文明は神秘的だ。
時々展示会をしているので見に行くのですが、ジャガーの神様やトウモロコシの絵が印象に残っています。
絵文字のような独特の文字もあるし、何より正確な暦を何種類か使って運用していたことがすぐに思い浮かぶ。
しかしわたしが習った世界史は四大文明の次はギリシャ文明に進み、アメリカ大陸が登場してくるのはコロンブス以降。
そして独立戦争で再登場するくらいしか記憶にない。
破壊しつくされた上に今があるからなんだろうか。
マヤ文明は紀元前2000年ごろにはじまり、最盛期はA.D300~900年だという。
10世紀にはいると古典期が終わっているので、16世紀にヨーロッパ人が来る500年も前にマヤの都市は廃墟となっていた。
本著ではジャングルの中に残る石の都ティカルを最初に紹介しています。
グアテマラのペテン低地にあるティカルの都はマヤ文明の政治経済の中心都市として繁栄したそうだ。
階段ピラミッドのような形の神殿や球技場に広場、宮殿に市場を備えた壮麗な都市だ。
マヤの人々はこの都の中でどのように生きていて、何を感じていたのだろうか。
マヤ文明の謎として人口密度が高いことが挙げられている。
それには湿地を利用した農業と、ラモンの木の実というカロリーの高い実が取れたことで解決しています。
人口はその土地が生産できるカロリーで決まるというのはグローバル化以前の鉄則ですね。
ラモンの実ってどんな味なんだろう。
現代から見ると不思議なのは、マヤの人々が自分の血や生贄を神に捧げる風習があったこと。
どこかの展示で王妃が自分の舌にトゲを突き刺して血を神に捧げるレリーフがあったのを思い出した。
アステカでも捕虜の心臓を神に捧げる風習がある。
その文明の祀る神がどのような性格なのか、っていうことはその人々の死生観にもつながっている。
生贄を求める神ってことは平和的な人種ではなかったと思うけれどね。
最大の謎は、マヤの神殿を中心にした壮大な都がなぜ遺棄されたのか。
これが宇宙人説が出てくる原因の一つでもあるけれど。
作者はこの謎に、マヤの暦と彼らが歴史は繰り返すということを信じていたことを挙げている。
疫病か何かが再び巡ってくる前に人々が都を捨ててしまったのかもしれない。
そうしてジャングルに飲み込まれてしまった都ですが、遺跡の発掘と復元が徐々に進んでいるそうです。
ジャングルの中に突如現れる石の都をいつか見てみたい。
(レビュー:DB)
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