認知症の不可解な言動の理由は?適切な接し方がマンガでわかる!
世界的に見ると、今や3.2秒に1人の割合で認知症の患者数が増えているといわれています。このように深刻かつ世界的な問題でありながら、実は、認知症について理解している人が十分とは言い難いのが実情です。
親が認知症と診断されると、家族は突然、その対応を迫られることになります。「同じことを何度も聞く」「急に出かけて帰ってこなくなる」「誰もいないところに話しかける」など、認知症の不可解な言動に対応できず、家族は戸惑い、やがて疲弊してしまいます。
「認知症の人の心の中はどうなっているのだろう?」そんな疑問を抱いたことのある人も少なくないでしょう。
■認知症の人の心がわかれば介護をする側・される側双方にとって大きなメリットになる
認知症のケアや予防のプログラムの開発に携わる理学療法士の川畑智さんは、これまで長年、介護現場で数多くの認知症の方のケアを通して、認知症の人の心理状態について深く考え、ケアやコミュニケーションの方法を確立させてきました。『マンガでわかる 認知症の人の心の中が見える本』(わかさ出版)では、そんな川畑さんが培ってきた経験をもとに認知症の人の心理状態についてひも解いていきます。
本書は大きくわけて2章の構成になっています。
第1章では「何度も同じことを聞く」「どこにいるのかがわからない」「この人、誰かしら」「帰り道がわからない」「簡単な計算ができない」など、認知症で見られる代表的な10種の症状について、ご本人の心理状態とケアをする人や家族から見た世界の両面をマンガで比較して紹介します。
第2章では、川畑さんが介護の現場で出合った認知症の人にまつわる印象的な出来事を紹介していきます。「『喉が渇いた』といってハサミを欲しがる理由は?」「『サラダが怖い』と言って食べないのはどうして?」「夜になると現れる幽霊の正体は?」など、川畑さんが認知症の人の不可解な言動の理由をいかにして突き止め、適切なケアに導いたかをマンガでわかりやすく紹介していきます。
本書を読めば、認知症の人の不可解な言動にも理由があることがわかります。理由がわかれば適切な接し方が考えられるようになり、介護する人の心が軽くなって優しく接することができるようになるはずです。認知症の人に向ける目線も変わり、介護をする側、される側、双方にとって大きなメリットになるのです。
■来るべき「認知症とともに生きる社会」に向けた具体的なヒントが満載
川畑さんによれば「認知症の症状は①不安→②不満→③不信→④不穏の4つの段階を経て進行していく」とのこと。
記憶が苦手になると、認知症の人は「何かがおかしい」と不安や孤独感に苛まれます。何度も同じことを聞くのは、そんな不安を解消するためです。
それなのに、家族から「何度も言ったでしょう?」と叱責されたり、「ハイハイ」などとおざなりな対応をされたりすると、ご本人には「不満」が募り、やがて周囲への「不信」につながります。やがて「不穏」、つまり「心穏やかでない状態」になり、介護の抵抗や暴言・暴力へと進んでしまうのです。
そこで、適切な接し方ができれば、認知症の人が不安にさいなまれることなく生活でき、症状の進行を防ぐことができるのです。
「認知症と診断されると何もかもわからなくなってしまう」「認知症の人は家族も不幸になってしまう」認知症には、未だにそんなイメージが根強く存在します。しかし実は、認知症と診断されたからといって急に何もかもわからなくなるわけではありません。また、認知症の人の心は最後まで残っているそう。適切なケアができれば、認知症の人の自尊心が守られ、自信を回復でき、最後までその人らしい人生を送ることができます。
政府は今年の6月18日、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて「共生」と「予防」の二本柱で、認知症になっても自分らしく暮らせる社会の実現を目指す方針を決定しました。今後、認知症の人をいかに理解し、接するかはますます重要な課題となっていくことが予想されます。
本書を読めば、来るべき「認知症とともに生きる社会」に向けた、たくさんのヒントが得られるのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)