だれかに話したくなる本の話

「何度も死のうと思った」 働き詰めのサラリーマンはいかにしてうつから抜け出したのか(後編)

ブラック企業で働き詰めになり、上司のパワハラや年下の部下からの嫌味を浴び続けたサラリーマン・マサユキはついにうつ病で倒れてしまう。

「この世から消えてしまいたい」という気持ちにとらわれるマサユキ。そんな彼を救ったのは高野山奥之院で出会った龍・コハクだった。マサユキはコハクから11の「龍の知恵」を授かりながら、自分の人生を少しずつ手繰り寄せていく。

これは『夢をかなえる龍』(光文社刊)で描かれている物語であり、その内容はこの本は著者であり“龍師”と呼ばれるSHINGO氏の実話に基づいているという。

激務のあまり、「ボールペンで太ももを刺して傷つけたりしていました」という状況まで追い込まれたSHINGO氏の張り詰めた糸は、ある朝、突如プツンと切れる。そして、もやもやを抱えながらスピリチュアルへの道を辿ることで、「うつ」という真っ暗闇のトンネルを抜け出していく。

このインタビューでは本書をもとに、SHINGO氏の「うつ」の抜け出しエピソードとともに、「自分の人生を生きる」とはどういうことかについて、詳しくうかがった。今回はその後編だ。

(新刊JP編集部)

インタビュー前編はこちらから

■「ポンコツになっているくらいのほうが面白いことはたくさん起こるんです」

――今回の『夢をかなえる龍』はSHINGOさんにとって初めての本です。執筆した経緯について教えていただけますか?

SHINGO:もともとサラリーマン時代から本を読むのが好きで、本を出すのは一つの夢だったんです。そして、働き詰めになった結果、うつ病になってサラリーマンをやめるのですが、せっかくなのだから自分のやりたいことをやろうと(笑)。それで、本を出す夢をかなえるべく、ブログを書き始めました。

――そのブログは大人気となりましたね。

SHINGO:はい。実はブログは自分の本を出すことを目的で始めたんです。そこで色々な体験や情報を発信していたら、今回光文社さんからお話をいただきまして、自分のスピリチュアルな経験を小説しようということになりました。

――同じような寓話形式の本としては『夢をかなえるゾウ』というベストセラーがありますが、タイトルも物語も通じるな、と。

SHINGO:実際意識はしていますし、モチーフにさせていただきました(笑)。神様みたいな存在がダメ男を育てていくというコンセプトは一緒ですし、タイトルについても『夢をかなえるゾウ』って多くの人が覚えていると思うんですね。自己啓発書っぽく『龍が教えてくれた11の知恵』というようなタイトルでも良かったんですけど、覚えにくいじゃないですか。なんとかして本を届けたいというところで、プライドを捨ててでも、という想いはありました。

――本書には龍のコハクがマサユキに「11の龍の知恵」を授けます。最初の「ポンコツになれ」という言葉はすごく大切というか、「自分はできる」と思うことが逆にストレスになって思いつめちゃったりするじゃないですか。

SHINGO:龍が見えていた前後くらいで、いろんな霊能者に話を聞きに行ったことがあったのですが、必ず「今の君は頭を使いすぎだ」と言われるんですよ。「考えるな、感じろ」じゃないですけど、繊細なメッセージをキャッチできる態勢が整っていなかったんです。だから、まずは自分をポンコツな状態に置くことで感受性を豊かにするというか、そういう体の使い方を覚えていきました。

実際ポンコツのほうが面白いことがたくさん起こるんです。神社ツアーを開催しているんですけど、参加者はみんな知っている人だし、ちゃんとできなくても許してくれるだろうということで、あまり行程を細かく決めずに行ったんですね。そしたらいろいろなシンクロニシティが起きて。道を間違えたら知られていないスピリチュアルなスポットに達したり、ミステリアスで楽しい会になりました。逆にちゃんとツアーをやろうとすると「SHINGOさん、今日はあまり面白くなかった」と言われるんですよね。

「ポンコツになる」ということは、神様と同調するということだと思います。この「11の知恵」は僕自身が龍に教えてもらったことですが、この「ポンコツになる」というのはツアーの参加者を介して教わったことです。

――また、自分の受け取ったメッセージを人に教えることも大事と。まさにこの本ではないですけど。

SHINGO:これはスピリチュアル関係なく、そうだと思います。僕の人生を変えてくれたのは龍という存在もあるのですが、もう一つブログなんです。ブログを書くことによって自分のことを知ってくれる人が増えて、自分に会いたいと思う人があらわれた。まさに引き寄せのツールであり、インプットとアウトプットを循環することで人生が豊かになることを証明してくれていると思います。愛を持って発信すると、愛が引き寄せられる。それがブログなのだと。

――龍に出会う前の働き詰めの頃の自分に戻りそうになったことはありますか?

SHINGO:これはないです。身近に僕を痛めつける坂上上司は身近にいないですから(笑)。感情の浮き沈みはもちろんありますけど、今の人生は我慢することがほとんどないですからね。

――常に気持ちを前向きに保ち続けているために、日々心掛けていることはなんですか?

SHINGO:好きなものを選ぶとか、我慢をしないこと。あとは好きな人と一緒にいるようにするとか、できる限りの範囲で自分の心が前向きになることを選択しています。あとは、体を動かす、早く寝るといった生活習慣も気を付けています。

――新刊JPの読者の皆さんに、SHINGOさんのおすすめの「パワースポット」を教えていただけないでしょうか?

SHINGO:日本全国でいうとやっぱり高野山かな。この『夢をかなえる龍』ではマサユキがいろんな神社に行くのですが、僕がおすすめのスポットを舞台にしています。高野山、京都の鞍馬寺、貴船神社。あとは東京近郊だと秩父の三峰神社ですとか。

東京だと日枝神社、明治神宮、品川神社、田無神社。箱根の九頭龍神社。田無神社は龍がたくさんいる神社なんですが、この本を書き始める前にベストセラー祈願で昇殿参拝させていただきました。この本の雰囲気と田無神社の雰囲気は合っていると思います。

――SHINGOさんが最も影響を受けた本はなんですか?

SHINGO:これは本田健さんが無料で配布している『幸せな小金持ちへの8つのステップ』という小冊子ですね。20代前半に読みました。あの冊子が大学のお蕎麦屋さんに3冊置かれていて、すごく分かりやすかったんですよ。好きなことをやって、年収3000万円で、幸せなお金持ちになる。そんな世界があるんだ、みたいな。

その後本田健さんのセミナーに行って、この方はビジネスマンでもあり、人間関係の専門家でもあり、時にスピリチュアルな感覚も使われているような…みたいな。最近も本田健さんが開催している出版合宿に参加させていただいて、この本のコンセプトを固めるためのヒントをもらいました。

――この『夢をかなえる龍』をどんな人に読んでほしいとお考えですか?

SHINGO:我慢して自分の人生を値踏みしている人でしょうか。こういう生き方がしたいと思っているんだけど、いろんな制約で自分を制限してしまっている。僕はうつ病になったことが自分の人生を変えるきっかけになりましたが、そういう人たちに読んでほしいですね。随所に「あるある」ネタを入れたつもりです。

――昔のSHINGOさんのように、もやもやしたものを抱えながら日々を送っている方々にエールをお願いできればと思います。

SHINGO:僕は「このまま自分は死ぬんだ」と思っていたし、今の自分から抜け出すことはできないと考えていました。ただ、それでも大きく変わったということは、そこから抜け出すためのきっかけがおそらくあるのだと思います。だから死なないでください、と思います。僕は当時何度も死のうと思っていたけれど、今は「死ななくて良かった」と思います。希望なんて持てないかもしれないけれど、助けの手はどこかにあるから、希望を持って生きてくださいと言いたいです。

――ちなみに、今振り返って、SHINGOさんがうつを抜け出した最大の要因はなんだと思いますか?

SHINGO:実はいつの間にか治っていたという感覚なんですよ。薬も途中から飲まなくなっていたし。なんででしょうね…。

――日常がガラっと変わったからでしょうか?

SHINGO:それはあると思いますね。サラリーマンの自分から抜け出すことがイコールとしてうつから抜け出すということだったのかもしれません。「自由な人生でいいですね」と言われたことがあるのですが、自分自身がそう言われて「あ、自分は変わったんだ」と思いました。会社員じゃなくなって自分のアイデンティティが変わったことが、大きな要因だったのかな、と今になって思います。

(了)

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