平成で一番売れた実用書『バカの壁』 そのタイトルの意味とは?
今日で「平成」が終わる。
この31年間でさまざまなベストセラーが生まれてきたが、その中で最も売れた本は何だろうか?
4月6日に放送された日本テレビ『世界一受けたい授業』では、「平成で売れた実用書ランキング」を発表。その1位に輝いたのが2003年(平成15年)に刊行された『バカの壁』(新潮社刊)だった。
現在はその累計発行部数が440万部を超えており、まさに平成を代表する書籍の一つである『バカの壁』。著者は解剖学者の養老孟司氏。キャッチーなタイトルだが、世界で起きていることや人生でぶつかる諸問題について、養老氏が多角的に見るためのヒントを与えてくれる。
では、この「バカの壁」という言葉は一体どんな意味が込められているのか?
その答えが本書の冒頭につづられている。
この言葉は、養老氏が最初に書いた本である『形を読む』から取ったという。その意図は「結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できない。つまり学問が最終的に突き当たる壁は、自分の脳だ」(p.4より)というもの。
これだけではその意味がまだ分かりにくいかもしれない。
例えば、「バカの壁」について言及する第一章では、「話せばわかる」という言葉は「大嘘」だと指摘している。
薬学部の学生たちにある夫婦の妊娠から出産までを詳細に追ったドキュメンタリービデオを見せたところ、女子学生と男子学生の感想は真っ二つに分かれたという。女子学生のほとんどは「新しい発見がたくさんありました」と書いたのに対し、男子学生は皆一様に「すでに保健の授業で知っているようなことばかりだ」という答えだった。
この反応の違いに対して養老氏は、「与えられた情報に対する姿勢の問題」と述べる。つまり、男子は「出産」について実感を持ちたくないがために、ビデオを見ても女子のような発見ができなかった、むしろ積極的に発見しようとしなかったのだ。
そして、「自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまっている。ここに壁が存在しています。これも一種の『バカの壁』です」(p.14より)と結論づける。
本当は何もわかっていないのに、「知っている」「わかっている」と思って遮断してしまう。これは私たちもよく陥りがちになることだろう。
養老氏が指摘した「バカの壁」を自分自身は乗り越えられてきたのか。今一度本書を読み、再考したい。
(新刊JP編集部)