ブラック企業とブラック社員をなくすただ一つの方法
誰にとっても有限で、平等に分け与えられている時間。
自分の夢や目標を叶えられるかどうかも、仕事で大きな成果を出せるかどうかも、結局は自分に与えられた時間をどう使うかにかかっている。
ただし、世に溢れている小手先の時短テクニックに価値が無いことは時代が証明済みだ。働き方改革が推進されたと言っても、労働者の残業問題すら未だ解決に至っていない。
ビジネスで継続的に成果を出すだけでなく、プライベートでも豊かな人生を歩み続けるためには、テクニックの前に理解しておくべき原理原則がある。
今回は、すべての日本人が知っておくべき時間術について、『仕事ができる人の最高の時間術』(明日香出版社刊)の著者、田路カズヤさんにお話をうかがった。その後編をお届けする。
――時間の使い方の重要性は、仕事に限らず人生すべてに共通しています。本に書かれているように、「何に時間を投資するか」を考える上で「パッション(情熱=自分がワクワクして取り組めること)」と「ミッション(使命=生き方に関する個人の信条)」を基準にすることは有効だと思いますが、多くの人は自分の「パッション」や「ミッション」について考えていないように思います。
田路:私は今、主に営業職向けの研修をファシリテーションしていますが、研修序盤で一番盛り上がり、受講者の目の色が変わる場面は、受講者の「パッション」や「ミッション」を言語化する作業をしているときなんです。自分の人生なのに、自分が本当にやりたいことすらわかっていない人が、それだけ多いということですよね。
本にも書きましたが、日本のビジネスパーソンは、自分の仕事に「パッション」を持てている人の割合がとても低いんです。そもそも自分の人生にすら「パッション」を持てていない人もいます。ただ、そういう人は、本当にやりたいことが無いわけではないんです。やる前から「自分には無理だ」と諦めてしまっていたり、何かを理由にして自分の欲求に蓋をしていたりする真面目な人ほど陥りやすい傾向にあります。一度きりの自分の人生なのに、贅沢に生きることができていない人を見ると、本当に勿体ないと思います。
自分の「パッション」と「ミッション」を明確にして、勇気ある最初の一歩を踏み出せるように伴走することが、講師としての私の使命と言えるかもしれません。
――本書のテーマになっている「時間術」ですが、今しきりにいわれている「生産性」とつながりが深いワードです。日本人の生産性は低いとされていますが、これは時間の使い方だけの問題なのでしょうか。
田路:社会や組織の構造上の問題やそこで培われたパラダイム(固定観念)の影響が大きいように思います。
日本企業では、まだまだ上司と部下の上下関係が強いこともあり、「これをやっておけ」という上司からの指示に、その必要性を検討しないまま部下が従ってしまうことが多々あります。本当は、そのタスクが必要かどうかを部下が検討して、無駄な仕事だと思ったら断ったり、やり方を変えたりすべきなんですけど、「上司に意見すること=ダメなこと」という固定観念が強いので、部下もそういったことをしようとしません。この負の連鎖が、日本企業で無駄な仕事を増やしています。まずは経営者や管理職側の意識が変わらないことには、本当の意味での生産性向上はできないと思いますね。
――組織構造上の問題で生産性向上が妨げられているとすると、個人が時間の使い方を見直してもどこまで効果があるのかという疑問が残ります。
田路:日本企業の多くがこうした問題を抱えているとしても、「仕方ない」と諦めてしまったら何も変わりません。だから、自分のできる範囲内のことだけでもいいので時間の使い方を見直して、変えていくべきだと思っています。
もっと言えば、自分でやれることをやり尽くしても、上から無駄な仕事が降ってきて、無駄に時間が消費されていると感じるならば、そもそもその会社にいるべきなのかを考えた方がいいです。そういう会社はこれから確実に淘汰されていきますよ。
企業側に「ブラック企業」と呼ばれる企業が存在するように、従業員側にも「ブラック社員」は存在します。
「ブラック企業」がなぜ無くならないかと言うと、自分の時間を会社に捧げることによって、会社から対価をいただくという考え方を持つ「ブラック社員」が存在するからですよね。この「ブラック企業」と「ブラック社員」の互恵関係が、日本企業の生産性を下げる1つの大きな要因になっていると思います。
――「どうせ残業することになるから」と時間の使い方を改善することを諦めてしまっている人にアドバイスをするとしたらどのようなものになりますか?
田路:例えが不適切かもしれませんが、サービス残業が当たり前になってしまっている会社員の方は、戦時中の特攻隊と同じです。他に武器が何も無くなり、自分の時間を提供することで戦おうとしている。でも、時間は命ですよ。命を差し出していることと同じなのだと認識したほうが良いですね。
ですから、「ブラック社員」や「社畜」と呼ばれる前に、「自分がワクワクする退社時間」を設定することからおススメします。「この時間に帰ることができたら、ワクワクする」と思える退社時間を決め、その時間以降は仕事できないように、スケジュールをブロックするんです。1年分のスケジュールをブロックしてしまうことが重要です。そして、理想の退社時間を決めてから、「その時間に退社するためには、自分は何を捨てなければならないか」を脳みそちぎれるくらい考えてほしいです。
こんなことを言うと、「そんな簡単に変えられるはずがない」と思う人もいるでしょうけど、実際、「ワーママ」と呼ばれる働くママさんたちは、「保育園にお迎え行く時間」を絶対的な退社時間として認識しているので、総じて時間生産性の高い仕事をしていますよね。
この考え方だけではありませんが、私のメソッドを愚直に実践したクライアントは、営業部門の総労働時間を3分の2にし、売上を2倍にすることに成功しています。つまり、時間生産性を3倍にしたということですね。中には、労働時間ではなく、社員の数を3分の2にして、売上を2倍にすることに成功したクライアント企業様もいます。
――最後になりますが「時間が足りない」と日々奮闘している方々にメッセージをお願いいたします。
田路:私は、「忙しい」という言葉を世の中から撲滅したいと考えています。「忙しい」という字は、「心を亡くす」と書いて「忙しい」ですよね。こんなに恥ずかしい言葉を恥ずかしげも無く吐く社会を変えたいと考えています。
そんな私も30歳くらいまでは「忙しい」が口癖でした。昔の私のような現場の最前線で働く若手・中堅社員を特に救いたいですね。
今回の本のタイトルは『仕事ができる人の最高の時間術』となっていますが、私は、「自分の人生を贅沢に生きるための時間術」を書いたつもりです。「忙しい」を言い訳にせず、限られた時間の中でも自分の夢や目標を確実に達成するための方法を書きました。
ビジネスパーソンだけでなく、主婦や就活中の学生さんの人生も変えることができると思っています。実際、「夢や目標が明確になった」「生き方が変わった」「ダイエットに成功した」「内定が貰えた」「子供の受験がうまくいった」など、本当に様々な読者の方から嬉しい感想をいただいています。
また、書籍の購入特典としてダウンロードいただけるワークシートに日々書き込んでいただくことで、本を読んだ価値を何倍にもすることができるということはお約束したいと思います。この本は、「読む本」ではなく「実践するための本」であり、「習慣化させる本」だと思っています。
新しい夢や目標に向かうタイミングで読んでいただきたい一冊です。ぜひ年末年始や年度初めにこそ、手に取ってみてください!
(新刊JP編集部)