慢性的な冷えの原因に 使われないままになっている「冷たい筋肉」とは
冷え込みが厳しいこの季節。体の冷えや冷えからくる体の不調に悩まされている人は多いはず。自分なりの冷えへの対処法を持っている人もいるかもしれません。
ただ、「冷えやすい体」を変えないことには冷えの問題は解決できません。『ぷるトレ』(飛鳥新社刊)は全身の筋肉を同時に震えさせることで、体が熱を生み出す「産熱機能」を強化し、「冷えにくい体」づくりを目指します。
本書の著者でアスリートゴリラ鍼灸接骨院院長の高林孝光さんいわく「体温は自分で上げられるもの」。今回は高林さんにお話をうかがい、この言葉の真意と、冷えにくい体づくりのためのエクササイズ「ふるえトレーニング」についてお話をうかがいました。
■わざと震えて寒さを撃退!「ふるえトレーニング」とは
――高林さんの著書『ぷるトレ』は、冷えや冷えによる体の不調を改善するために、人間の体が本来持つ産熱機能を強化するノウハウが紹介されています。普段鍼灸院を営まれている高林さんが今回「冷え」をテーマに本を書かれた理由についてうかがえればと思います。
高林:体温を上げると健康になるということがしきりに言われていて、それについての本もたくさん出ているのですが、ほとんどは食事などの生活習慣の改善にまつわるもので、その場で体温を上げられる方法について書かれた本は私が調べた限りではなかったんです。
意識されている方は多くないでしょうが、体温というのは自分である程度コントロールできるものです。そのことを伝えたくてこの本を書きました。
――自分で体温を上げる方法として、本書では意図的に体を震えさせる「ふるえトレーニング」というエクササイズが紹介されています。この体操はどのように生み出されたものなのでしょうか。
高林:私は「アスリートゴリラ」という、アスリートから趣味で楽しむ方までスポーツをされる方がよくいらっしゃる鍼灸接骨院を運営しているのですが、話を聞くとアスリートがケガをする原因はたいてい「アップ不足」なんです。
どんなスポーツでも試合前にアップはするのですが、全員が試合開始から出るわけではなくて、試合途中に急に呼ばれることがどうしてもあるわけです。野球のピッチャーでいえば肩ができるまでに「ここで行ってくれ」ということがある。
選手に話を聞いても、体が冷えたら手に息を吹きかけたり、体を擦るくらいしかしないと。ストレッチをするにしても、全身やるほどの時間はないことが多い。そういう時のために、曲げる筋肉も伸ばす筋肉も同時多発的に短時間で温められる方法があればケガを防げるんじゃないかと考案したのが「ふるえトレーニング」です。
――代表的なのが「忍者ぷるぷる体操」ですが、これは両手を力いっぱい押し合うなどして体の広い範囲の筋肉を同時に使い、震えを生じさせることで体の内側から熱を生じさせるというものです。この原理を教えていただけますか?
高林:たとえば、おしっこをした後に体が自然にぶるぶるっと震えることがありますよね。あれは、おしっこを出したことで体から熱が奪われたために、震えることで体が産熱しているんです。風邪をひいて寒気がした時に震えがくるのも同じです。震えっていうのは体が冷えた時に体内で熱を作るための機能なんです。
それならば、体が冷えた時は自分の意思で体を震えさせてしまえばいい。自然にくる震えは自律神経の働きによるものですが、意図的に運動神経を使って震えを作り出すのも体の産熱機能を使うという意味では同じなので。
――『ぷるトレ』は、お話にあったようにスポーツ選手向けに考案された体を温める方法を、慢性的な冷えによる体の不調の改善に応用しようというものです。冷えは筋肉量の少なさや運動不足で筋肉を使っていないことが原因だとされているのですが、私は普段から運動をしているのに手足の末端が冷えてしまいます。これにはどんな理由があるのでしょうか。
高林:一ついえるのは、今は生活が便利になりすぎてしまって、使う筋肉と使われていない筋肉がはっきり分かれてしまっている人が多いんです。
今、生活の中で足の指を使うことってほとんどないでしょう。そうなると足の指からふくらはぎまでつながっている「長母指屈筋」が十分に使われず短くなって、運動をしていてもこの筋肉が使われなくなってしまうんです。
筋肉は、もんだりさすったりして外から温められるものばかりではありません。この長母指屈筋も、外からアプローチできるのはアキレス腱の付近だけです。何が言いたいかというと、普段使っていない、かつ揉んでもさすっても触れない筋肉があって、そこについてはいくら外からアプローチしても温まらない。これが運動をしていても冷えに悩まされる人がいる一つの理由です。
こうした普段使われず外から刺激するのも難しいおかげで冷えたままになってしまっている筋肉はどんな人にもあります。繰り返しになりますが、これらに対してしっかり機能させて温めることができるのが「震え」なんです。
――他にもこうした筋肉で代表的なものはありますか?
高林:腹横筋や腸腰筋といった体幹の奥にある筋肉もそうです。昔は掃除をする時に廊下を雑巾がけしてこの筋肉を使っていたのですが、今はまず雑巾がけなんてやりませんから使われないままになってしまっている人が少なくありません。
使われずに冷えたままになっている筋肉を使うことができれば体の産熱機能は高まりますから、冷えの根本的な改善につながるというのが今回の本で伝えたかったことです。
――逆に、普段特に運動していないにも関わらず冷えとは無縁という人もいるのでしょうか。
高林:子どもはともかく、大人は運動をしないと年々筋肉が減っていくので、やはり冷えるでしょうね。
(後編につづく)