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不動産投資は「情報」が成否を分ける!プロの情報収集ツールと金融動向の見方

どんな投資にもリスクはある。しかし、押さえるべきポイントがわかっていれば「負けにくい」のが不動産投資だ。「買ったあとは祈る」ことしかできない株や国債とは違い、修繕や保険の活用次第でリスクコントロールができるのも魅力である。

不動産投資で勝ち残っていくために必要なのが、優良な物件と不動産にまつわる情報の見極め方。 そのポイントを、プロの不動産業者でありながらプロの「不動産投資家」で、『超実践 不動産投資のプロ技』 (彩図社刊)を上梓した関田タカシ氏に伺う。

インタビュー前編では、不動産投資初心者が気をつけるべきことをお聞きした。後編となる今回は、プロならではの市場の見方について語っていただいた。

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(取材・文:大村佑介)

■不動産投資の「プロ」と「アマチュア」はここが違う

――不動産投資のプロとアマチュアで、もっとも大きく差が出るポイントはどこでしょうか?

関田タカシ(以下、関田):一言でいえば、「自分のモノサシ」を持っているかどうかです。 「こう言った条件に合致する物件であれば購入します」という部分がある程度固まっていると、いざ物件が出てきたときに買うかどうかの取捨選択がスムーズになります。

不動産投資のポータルサイトから自分で探すにしても、不動産業者やブローカーから紹介を受けるにしても、物件のポテンシャルの見極めをするのに「これにハマっていれば買いだ」もしくは「買いじゃない」ということがわかっていると失敗しなくなります。適正な金額で購入できていれば、ほぼ勝てるのが不動産投資です。

――本書ではプロならではの「Googleマップの活用術」が紹介されていましたが、インターネット時代になってから活用され始めたガジェットやツールはありますか?

関田:今であれば「LINE」ですね。
近頃は業者間のやり取りでも、得に仲の良い担当者同士であれば、物件資料から「今、現地を見てきたよ」という写真のやりとりまでLINEでやってしまいます。
情報の機密性など、気になる部分がなくはないのですが、それに勝るスピード感と手軽さ、浸透度は目を見張るものがあります。

――有益な情報を得ていくためには、どれだけLINEグループに食い込めるかというのもポイントになりそうですね。

関田:大きいと思います。LINEの交換はある程度、人間関係ができている人とでないとしないですからね。
他には、物件資料や金融機関提出用の確定申告書などのデータをまとめて送る際には「宅ふぁいる便」などのデータ転送サービス、ドロップボックスなどのクラウドサービスは重宝しています。メールだと容量の限界がありますから。

私が新卒でこの業界に入ったときは、FAXが主流だったのですが、深夜に延々と紙が出続けて途中で詰まってしまう、なんてこともありました(笑)それを考えると時代が変わって非常に効率的になりましたね。
ただ、この商売は高齢になってもできるので、業界内でもネットやデジタルツールに対応できていないご高齢な業者の方もいらっしゃいます。その意味では、デジタルツールだけでなく、紙の資料や今では面倒になった手法にも対応できる人は強いかもしれませんね。

■不動産投資の成否を分ける「金融動向」に注目せよ!

――本書では、一般的に懸念されている「オリンピック後の動向」よりも「金融機関の動向」を見ることの大切さが書かれていましたが、この先の金融動向をどのように予測されていますか。

関田:投資用収益不動産のマーケットについては、銀行融資が出るか出ないかにかかっています。 融資が緩くなれば、買える人が増えて価格は上がり、利回りは下がります。逆に、融資が厳しくなると買える人が少なくなり、価格が下がって、利回りは上がります。そういった点から、金融動向は把握しておくべきです。

今現在(2018年11月下旬)は、スルガ銀行をはじめ、投資用不動産界隈での金融機関の不正な取り組みが頻出し、融資が全体的に絞られています。
それに伴って、特に地方、郊外の中古一棟アパート、一棟マンションの価格は下落して、利回りが上昇しているという雰囲気が露骨に出できている状況です。
本来であれば、まだ日銀の大胆な金融政策は継続され、金余りな現状であることから、マネーは行き先を探しているはずなのですが、肝心な末端の蛇口が閉まっているわけです。

あくまで個人的な予測ですが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成割合で日本株の割合を増やしたり、日銀も株式を買い入れたりする動きをしているため、国内だけを見れば消費税増税の時期までは、株価は支えられるかとイメージしています。

しかしながら、2019年10月に本当の消費税増税があると、これは楽観視できないと思っています。 過去二回の増税時にはガクンと経済が落ち込みました。直前に駆け込み需要はあるでしょうが、それは単純に需要の先食いでしかないので、その後の落ち込みは相当なものになるのではないかと思います。
不動産のマーケットは日経平均を三ヶ月から半年ほど遅れて追う傾向がありますから、株価全体が落ち込むと、不動産も落ちてしまうのではないか、と予想されます。

また、消費税増税については、大家業にとって悪でしかありません。家賃収入は非課税なのに対して、修繕費や電気代などコストには消費税がすべて上乗せされます。他の商売であれば、増税された分を商品に転嫁することもできますが、家賃収入は非課税なため転嫁もできません。この点は非常にマイナスですね。

――逆に考えると、銀行の融資が厳しくなった結果、投資をやめて物件を手放していく不動産投資家がいるとしたら物件の牌は増えていくので、勝ち残りの確率も高くなっていくという可能性もありますね。

関田:そうですね。特にそういう状況になった場合、融資がつかずに、物件がダブつくことになるので、現金を持っている人が強くなるでしょうね。
現金を持っていなければ買えないというわけではありませんが、フルローン、オーバーローンでなければ買えない人が大半の中で「半分だったら現金を出せます」となれば、銀行からの融資が下りるケースもあると思います。

――そうした状況の中、現在、不動産投資で盛り上がりを見せている地域などはありますか?

関田:先ほどもお話しした通り、相場観としては踊り場にある状況です。
ただ、東京の中心地のような良いエリアはいまだに高値で止まっています。たとえば、銀座や港区の一部地域などは不動産としても手堅いです。

あとは2020年の東京オリンピック選手村の跡地は「HARUMI FLAG」という名前で5000戸の分譲になります。5000戸というと街ができるレベルですが、需要よりも供給が多いと金額が下がるので、これはどちらに振れるかはわからないですね。

他には、開発の勢いがあるのは渋谷です。「100年に一度の再開発」と言われているくらいなので、盛り上がりを見せています。渋谷は拠点になる街なので周辺エリアも含めて、あの界隈は価格が上がっても不思議ではないですね。ただ、どこまでを「渋谷の周辺エリア」とみなすかは難しいところですが。

――最後に、不動産投資を真剣に考えている方々にメッセージをお願いします。

関田:押さえるべきポイントがわかってくれば、ものすごく「負けにくい」のが不動産投資です。
物件の持つポテンシャルの見極めに、今回の書籍を最大限活用いただければ幸いです。

超実践 不動産投資のプロ技

超実践 不動産投資のプロ技

現役不動産営業マンかつ、現役大家である著者がプロが実践している不動産投資のテクニックを公開!

この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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