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不眠や寝つきの悪さを改善するための「正しい睡眠の知識」

朝は目覚まし時計のアラームで起きている人は多いだろう。しかし、アラームのような「音」による目覚めは、睡眠習慣としては実は「NG」だという。

そう語るのはTV、新聞、雑誌などのメディアでも注目されている睡眠改善インストラクターであり、『睡眠改善インストラクターが教える「眠りの魔法」』(坪田聡監修、ぱる出版刊)を上梓した竹田浩一氏だ。

竹田氏は20年以上不眠症に悩んできた人物だが、知人の勧めで「光」による目覚めの習慣に変えたところ不眠が改善。その後、光目覚まし時計の開発や睡眠に関する講演なども行い、多くの不眠症に悩む人のサポートをしてきた。

竹田氏によれば、光による目覚めは、睡眠に欠かせない脳内物質「セロトニン」と「メラトニン」の分泌に作用し、快適な睡眠と目覚めのサイクルをつくりだすという。
こうした睡眠についての知識は意外に知られていない。そこで竹田氏に不眠や寝つきの悪さの解消に役立つ睡眠についてのお話を伺った。

インタビュー前編では、「光」で目覚めることが不眠改善につながるメカニズムについて語っていただいた。後編となる今回は、快眠を得るための睡眠の正しい知識についてのお話を伺う。

(取材・文:大村佑介)

■不眠改善のポイントは「正しい睡眠の知識」

――不眠や寝起きの悪さで悩んでいる人の習慣で最も悪いものはなんだと思いますか?

竹田:悪習慣というよりも、睡眠の正しい知識が足りないということが一番だと思います。私が小さい頃もそうでしたが、睡眠の知識があれば、自分の生活習慣が悪いものだということがわかるので。

睡眠の講座をしていると「コーヒーを飲まないと眠れない」というお話をよく聞きます。寝る前にホッと一息ついて眠るとか、飲まないと寝られないという人がけっこういるんです。
でも、カフェインを摂っているので睡眠の質は落ちているはずなんです。本人はそれで眠れていると感じているのですが、本当はよりよく眠れて、睡眠の質を高めることもできるわけですね。知識があればそういうこともわかるので。

なので、睡眠にとって悪いことだと知らずにやっているというところが大きいのかなと思います。

――そうなると、不眠ではない人でも、もっと睡眠の質を高められるのにもったいないことをしているケースもありそうですね。

竹田:そういう方は多いと思いますね。

――竹田さんは、小さい頃から快眠グッズを使ってきたということですが、やはり寝具には気を使ったほうがいいのでしょうか?

竹田:実は、寝具は日本人がお金をかけないところで、年間で平均2000円だという話もあります。アメリカが年間平均1万円とも言われているので、比べるとかなり低いですよね。2000円というと枕や布団のカバーくらいのお値段ですから。

たとえば、マットレスや枕を何年も替えないという方は非常に多いです。
寝具の専門店でも、枕などは2、3年で買い替えることが勧められますが、もったいないと思ってくたびれた枕を使い続けていたりしますよね。本当に睡眠を改善するのであれば、やはり専門店のスタッフさんのアドバイスには従ったほうがいいと思います。

また、快眠グッズを選ぶときは、機能面をしっかり見ることは大事です。
たとえば、「光目覚まし時計」というものがあります。これはその時間になると朝日と同じくらいの強さの光で目覚めをサポートしてくれる時計です。

光の照度の単位はルクスといいますが、太陽の光は晴天なら10万ルクス、曇りの日でも5万ルクスで、セロトニンの分泌に必要な照度は2500ルクス以上だと言われています。一般的な室内照明は、だいたい500~1000ルクス程度で、比較的照度が高いコンビニでも1500~2000ルクスくらいです。

光時計は2500ルクス以上の光が出るというのがポイントなのですが、実は、その十倍の25000ルクスの照度がある光時計でも、光源30cm離れると2500ルクス程度になってしまうんです。
「朝の快適な目覚めに2500ルクスが必要」ということをご存知の方は多くいらっしゃるのですが、30cm離れただけ光が10分の1程度に弱まることまで知っている方は少ないかもしれません。先ほど、知識が大切という話をしましたが、こうした快眠グッズの機能についての正しい知識も知っておいてほしいところです。

■生活に取り入れやすい「3つの睡眠改善法」

――睡眠改善法として、生活習慣に取り入れやすいものを3つ挙げるとしたらどのような方法があるでしょうか?

竹田:まず、「できるだけ光を浴びるようにする」ことですね。
朝、光で起きるようするのはもちろん、通勤通学中もできるだけ日の当たる道を歩くようにする。寝室に朝日が入ってくるのであれば、布団やベッドの配置を光が浴びられる場所に移すのもいいと思います。

二つ目は、「夕方以降を薄暗くする」ことです。
夕方以降に暗い環境に身を置かないと、睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されにくくなります。なので、日中は明るく夕方からは薄暗くというのが睡眠にとっては大事です。

夕方以降の明るさは、イメージとしてはホテルの暖色系の照明です。
ホテルってけっこう薄暗いですよね。ご家庭でも蛍光灯の白い光を暖色系の間接照明に変えるだけで環境は大きく改善されます。難しいようであれば、いくつかある蛍光灯のひとつを消すとか、照明の紐を引いて、照明を一段階下げるといった工夫をしてみるといいと思います。

三つめは、「眠れなくても許す」ことです。
私の小さい頃を振り返っても、眠れないことに対するこだわりが強すぎたせいで悪循環になっていた部分がありました。眠れないことを許すだとか、お酒の飲みすぎや夜ふかしなど、睡眠に悪いことをしても許して受け入れることは、心の問題として大事ですね。

生活習慣を変えようとすると、どうしても「間違ったことをしてはいけない」というイメージにとらわれすぎてしまいがちですが、いい意味でのゆるさは必要だと思います。考えすぎると眠れなくなってしまうこともあります。
睡眠は、身体的、精神的、環境的な要素で成り立っているので、どの要素が自分の睡眠に大きく作用しているはがわかりにくい部分もあると思います。なので、ひとつひとつできることを試していってほしいですね。

――最後に、不眠や寝つきの悪さなど、睡眠について悩みを抱えている方々にメッセージをお願いします。

竹田:まずは正しい睡眠の知識を持ってもらいたいと思っています。
その上で、睡眠には「これだけを食べていたら眠れる」とか「この道具を使えば100%眠れる」といったウルトラCの技があるわけではないので、正しい知識の下、日常の生活の中で自分に合ったものを試していってほしいです。

あとは、なるべく日の光に当たるとか、寝る前にカフェインを摂らないといったことは、絶対にやれないことではないと思うんです。一発逆転の大技はないですけれど、ちょっとした小技の積み重ねをしていくことが大切だと考えています。

(了)

睡眠改善インストラクターが教える「眠りの魔法」

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この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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