写真でしつこい「痛み」をコントロール? 脳と「痛み」の最先端メソッドとは
病院に行っても、整体やマッサージに行っても、なかなか取れないしつこい体の「痛み」。
しかし昨今、アメリカのスタンフォード大学やノースウェスタン大学の研究によって、この「慢性的な痛み」に対して、新たなアプローチがなされているといいます。
注目すべきポイントは「脳」です。
■人が「痛い!」と感じるのはなぜ?
医学博士の河合隆志さんは最新の医学に基づき、「痛みは、脳が作り出している」と考えます。
人が痛みを感じるのは、患部から脳に「痛い!」という信号が送られてくるから。この信号を最終的にキャッチするのが脳の扁桃体という部位なのですが、この扁桃体がクセモノ。扁桃体は一度「痛い!」と感じ、痛みにおびえてしまうと、患部が完治しても相変わらず「痛い!」と勘違いしてしまうクセがついてしまうと河合さんは述べます
■写真で脳を「騙す」?
では、河合さんは「慢性的な痛み」にどう対処すべきと考えているのでしょうか?
その著書『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』(アスコム刊)では、まず、スタンフォード大学での研究を引用し、脳を刺激する「写真」を紹介します。
同大学の研究(*1)では、慢性痛に苦しむ人が、「好きな人の写真」を見たところ、脳の血流量が増加し、痛みがやわらいでいったという結果が得られたといいます。
その上で、本書には32枚の写真を掲載。
「脳が驚く写真」「脳が元気になる写真」「脳が喜ぶ写真」「脳がリラックスする写真」「脳が安心する写真」の5種類の写真たちを通して、痛みを感じる脳を騙そうというわけです。
写真を見ると、雄大なものから、不思議なもの、騙し絵のようなものまでさまざま。
例えば「脳が元気になる写真」では、豪快な動きや水しぶき、キラキラした日差しなど、明るい気持ちになれる写真が多数並んでいます。子どもの歓声を思い浮かべれば、心に平和を感じられるかも?
『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』には、写真を筆頭に、慢性的な痛みに対するちょっとした日々の工夫やメソッドが紹介されています。
日本整形外科学会専門医の河合さんは、慢性的な痛みに悩む人たちと数多く接してきました。
「くれぐれも、まず病院で体自体が壊れていないか、徹底的に調べてもらうことは忘れないでくださいね」と念を押した上で、新しいメソッドということで賛否両論を覚悟しつつも「少しでも痛みが楽になるなら」とこの本を書いたそうです。
本書はそんな河合さんの想いが詰まった一冊といえるはずです。
(新刊JP編集部)
*1…Younger J, Aron A, Parke S, Chatterjee N, Mackey S: Viewing pictures of a romantic partner reduces experimental pain: involvement of neural reward systems. PLoS ONE 2010; 5(10): 1-7.