成功企業社長が語る 経営に「理念」「哲学」が必要な本当の理由
栄枯盛衰がビジネスの掟。
業績好調だった企業がちょっとしたつまづきから倒産寸前にまで落ち込むこともあれば、その逆もある。
そんなビジネスの世界で、堅実に着実に業績を伸ばし続ける、安定成長企業ではどのような経営が行われているのだろうか。
大阪に本社を置く建設会社、進和建設工業は年商43億ほどの中堅企業。浮き沈みの大きな建設業界で無借金経営を続けるなど、堅調な発展を見せる優良企業である。
今回は『中堅建設会社が実践する 「家計簿経営」』(プレジデント社刊)の著者で同社社長の西田芳明氏にインタビュー。成功を支える自身の経営手法と哲学について語っていただいた。その後編をお届けする。
――本書では「理念」を持った経営者が少ないと書かれていました。「理念」や「哲学」は企業活動にどのような影響を与えるのでしょうか。
西田:理念というのは、何のために事業をやっているのかという目的ですから、これがないということは、迷った時に戻る場所がないのと同じです。
それと、理念や哲学といったものは、従業員と一体感を持つためにも必要なものです。経営者も従業員も全員が共有する価値観が、理念や哲学なんです。
――「人づくり」の章が印象深かったです。社員に対して人間性を育てるための勉強会を開いているとのことですが、どんなお話をされるのでしょうか。また、その勉強会について社員からはどんな感想が出ていますか?
西田:月に一度、人間塾やフィロフソフィー勉強会を開いています。また、社長コンパで社長の生き様を伝えたり、理念を語り合うというのが主な内容です。こちらから社員に何か教えようというものではなくて、「感じ取れ」、「掴み取れ」という意味が強いですね。
社員からは、自身のことを客観的に見てどんな問題点があったか、という気づきがよく挙げられます。あるいは社長と自分の考え方の違いや価値観の違いですね。
――西田さんは稲盛和夫さんの「盛和塾」で学ばれました。西田さんと稲盛さんの出会いはどのようなものだったのでしょうか。また稲盛さんの経営哲学に初めて触れた時の感想を教えていただきたいです。
西田:私にも心が動いて定まらない時期がありまして、その時期に稲盛さんの『心を高める、経営を伸ばす―素晴らしい人生をおくるために』という本に出会いました。読んで腹にスカッと落ちるものがあった。それがきっかけです。
稲盛さん自身の経験や体験をふまえて、わかりやすく伝えてくださるから、頭に入りやすいんだと思います。稲盛さんの考えに触れて、迷った時の判断基準ができました。
特に印象に残っているのは「動機善なりか私心なかりしか」という言葉です。「私心」という言葉が響きます。あとは、「理念を進化し続ける」という言葉もいいですね。
稲盛さんの教えと出会った頃、私はとにかく自分の価値観、人生観を確立したかった。仕事観も経営観も、人生観や価値観から出てくるものですから、まずはそれらが定まらないと経営ができないと思っていました。その意味では、私は稲盛さんの教えから自分の根になるものを感じ取ったんだと思います。
――起業して自分の会社を立ち上げようとしている人と、今既に会社経営をしているものの思ったように業績が上がらない人、それぞれにメッセージをお願いします。
西田:これから起業して自分の会社を立ち上げようとしている人には、志を高くもって、自分を成長させる取り組みを続け、世の中に影響を与えられる企業を作っていただきたいです。そのためには、自分の経営者としての質を高めることが第一です。
今現在会社を経営されている人、業績が中々上がらない人は、原点に立ち返ること。つまり、なぜ自分はこの会社を立ち上げたかをもう一度考えてみていただきたいです。そのうえで根本的な問題点を抽出して、「問題は課題」という考え方をもって改善にあたるべきでしょうね。
会社というのは設立した時点で公のものです。周りから生かされているという気持ちを忘れずにいてほしいと思います。
(新刊JP編集部)