一体何が違う? 儲かる会社と儲からない会社のビジネスモデル
今や「良いモノやサービスを提供すれば売れる」「安ければ売れる」という時代ではなくなった。大企業でも悪戦苦闘する中、中小企業が生き残っていくには、継続的に儲かる仕組みをつくる「戦略」が不可欠になっている。
しかし、多くの中小企業経営者の本音は「これ以上何をすればいいのかわからない」というものではないだろうか。
もう打つ手が見つからない…。そんな悩みを抱えている中小企業の業績を飛躍的に改善させるヒントが得られる一冊がある。
『すぐに1億円 小さな会社のビジネスモデル超入門』(高井洋子著、ダイヤモンド社刊)だ。
本書では、中小企業にこそ明確な「ビジネスモデル」の構築が必要だと説かれている。
ビジネスモデルの重要性はこれまでも説かれてきたが、既存のビジネスモデルの指南書は大企業や海外の事例が多く、中小企業が応用するには難しいものが多かった。
しかし、本書は中小企業の実例をモデルにしたストーリーと詳細な解説が交互に展開されていく構成となっているので、イメージがしやすく、且つ、実践的なビジネスモデルのつくり方が学べるようになっている。
では、中小企業はどのようにビジネスモデルを組み立て、自社の業績を上げていけばいいのだろうか?
■中小企業が目指すべきは「ストックビジネス」
物語部分では、凄腕経営コンサルタント・遠山桜子が、年商1億円以下に留まっている「高級住宅街の整体サロン」「駅前商店街の電気屋」「2店舗を構える美容室」のビジネスを改善していくというストーリーが展開されていく。
この3つのビジネスで共通して目指すのがストックビジネス(継続収入)だ。
中小企業のビジネスは、顧客との関係が一回きりの取引で終わってしまうフロービジネスであることが多い。仮に継続している顧客がいても購入や利用の頻度が低ければ意味がない。
物語の中で桜子は、高級住宅街の整体サロンの経営者にビジネスをストック化するために「月額制の会員コース」をつくることを勧める。
会員制の導入は、前受金を増やし資金繰りが楽になる、客離れの予防などの効果がある。また、月額制の場合、料金が引き落としになるケースが多いので、支払いを意識させず、競合への目移りを考えさせにくいというメリットもあるのだ。
中小企業経営者は、「自分のビジネスはストック化が難しい」と最初から諦めてしまっているケースが多いという。しかし、世の中には意外とストックビジネスは多い。身近なところでは、公共料金や携帯電話、経理ソフト、店舗のポイントカードなどがある。
自身のビジネスをどうすればストック化できるかを考えることが、中小企業の業績改善のポイントなのだ。
■利益率の高い「本命商品」を買ってもらうための「ジョウゴの法則」
儲けを出すには、「本当に収益の出る本命商品やサービス」の存在が不可欠だ。
しかし、利益率の高い商品やサービスをいきなり売り込んでも、買ってもらえる見込みは薄いだろう。
本書では、そんな本命商品やサービスを売るための「ジョウゴの法則」という手法が紹介されている。これは、入り口が広くて出口が狭い円錐状の器具「ジョウゴ」のように、途中でこぼれることなくゴールである本命商品に客を導くイメージだ。
「ジョウゴの法則」には、4つの段階がある。
1.ターゲットとなる人に知ってもらう「告知・認知」
2.お得な商品やサービスで集客する「おとり」
3.顧客との関係性を深める「リピート」
4.利益率の高い商品やサービスを売る「本命」
まず、店内外のポップやDM、チラシなどで客に「告知・認知」を図る。
次に、本命商品を売るための「おとり」の商品やサービスで集客をする。「おとり」から、いきなり本命商品の売り込みをすると客は離れていってしまう可能性が高いので、「リピート」の商品やサービスで関係性や信頼性を築いていく。
顧客との関係を深めて、他社の商品やサービスに見向きもしない状態をつくれば「本命」も売りやすくなる、という戦略だ。
この本に登場する「駅前商店街の電気屋」を具体例にみてみよう。
この電気屋は、古くから商店街にあり認知度はあるものの、家電量販店におされて売行きが悪く、高齢者層からの「キッチンのレンジフードの交換」という仕事でなんとか儲けを出していた。
そこで、桜子は主力だった「レンジフードの交換」を「おとり」として前面に押し出すことを提案する。そこからキッチン周りのリフォームや家電の買い替えなどを勧めて「リピート」をつくる。そうやって関係性を深めたところで「本命」の年会費1万2000円の修理や工事サービスを提供することで「ストック化」していくのだ。
全国380万社の中小企業のうち80.5%の中小企業は、年商1億円を超えていないという。
しかし、戦略と戦術さえわかれば大型店舗やインターネット通販が当たり前になった今の時代でも、「売上1億円」は可能だと著者は述べる。
本書からは「売上1億円」の壁を超え、安定した継続的なビジネスのヒントが得られるだろう。
(ライター/大村佑介)