【「本が好き!」レビュー】『明治をつくった人びと: 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵写真』刑部芳則編
提供: 本が好き!レビューを拝見して、この本に興味を持ちました。明治天皇に献上するために大蔵省印刷局や国内外の写真館で撮影した写真をまとめた「明治12年明治天皇御下命人物写真帖」に収録された4500人に及ぶ皇族、華族、政府官員、軍人などから重要人物1000人を抜粋したそうです。当時の職・年齢・家格・爵位などが掲載されています。
文明開化到来後、景色などの土産写真がでまわるようになりましたが芸者、歌舞伎役者と並び皇族、華族、政府高官たちの写真も人気が高まったとか。アイドルでも人気役者でもない人たちの写真をどういう思いで手に入れたのでしょうか。拝んでいれば、何かご利益がありそうとか?
コラムが綴られていますが、基本写真集なのでおなじみの伊藤博文や山形有朋、大隈重信といった人物の写真も掲載されています。驚いたのが板垣退助、歴史の教科書だったかはたまた紙幣だったかで見たことのある板垣退助とは違って、かなり若い!明治天皇の崩御により妻とともに殉死した乃木希典のお顔は、初めて見たような気がします。
山岡鉄舟、高橋泥舟と共に「幕末の三舟」と言われた勝安芳(勝海舟)もこの写真帖に載っているのですが、官職に就いているわけでも、華族でもなく本来は御下命写真の対象となるべき人ではないそうですが、海軍卿という勅任官の経験から対象となったようです。江戸城無血開城の功績よりも、海軍卿の任務の方の功績が大きいとみなされたようです。
この写真帖に載っているであろう人を見つけることができませんでした。西郷隆盛です、写真嫌いだったから?と思う方もいるかもしれませんが、西南戦争を引き起こし、官位剥奪に加えて逆臣の汚名を着せられたことが原因だそうです。
さらに、徳川慶喜の写真もありませんでした。慶喜は、1868年鳥羽伏見の戦いで新政府軍に敗れた結果、水戸や静岡で暮らしていて公的な場所には出なかったそうですが、明治5年には、従四位を授与されています。しかし、一度は朝敵になり、錦旗に逆らい官位剥奪となった身であることや16代徳川宗家当主家達に遠慮してのことではないかと記述されていました。
伊藤博文内閣の大蔵大臣を務め後、総理大臣を務めた松方正義の写真も載っていました。松方正義の三男幸次郎の名前は、国立美術館所蔵松方コレクションで目にしたことがありました。最後に、意外にイケメンだったのが大隈重信です。歴史の教科書などで見たことがある写真とは少し違っていていい感じでした。好奇心だけで図書館の参考図書室に籠り読みましたが、面白い一冊でした。
(レビュー:morimori)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」