「アニメ業界はテレビの犠牲者です」 ぴえろ創業者が語るアニメの未来と課題
■日本のアニメーションは海外ではビジネスになっていない?
――DVDやブルーレイには観るだけでなく、コレクションの価値がありますし、アニメグッズも売れます。
単にアニメーションの流通経路が変わりつつあるという話ではなくて、楽しみ方が多様になっていると思いますが、布川さんはその点をどのようにお考えですか?
布川:DVDやブルーレイでいえば、録画技術が高品質になって今でも売れているというのは不思議に思うところがあります。なぜなんだろう、と。おそらく、アニメファンはパッケージした商品に価値を見出してくれている。これはありがたいことですよね。
実はこうしたアニメファンの行動はレーザーディスクでパッケージしていた頃から変わっていません。だから私たちも、パッケージすることの大事さをよく知っているところがあります。
――本書では「日本のコンテンツは海外でビジネスになっていない」「海外にファンが増えても、日本で行っているようなかたちでではお金にできていない」と書かれていたのも驚きでした。海外では日本のアニメが流行しているというイメージがありましたが。
布川:この場合の「お金にできていない」というのは、「テレビに売れていない」ということです。基本的にテレビは国によって規制があったりしますから、例えば中国の国営放送(CCTV)は参入できません。『ドラえもん』くらいですね、放送しているのは。
だから中国人がどうやって日本のアニメを観るかというと、海賊盤であったり、違法配信であったりしましたが、今では中国の配信はほぼ合法的になっています。ようやくビジネスになってきています。しかし配信はすぐに国境を越えることができますから、国によっては違法アップロードサイトを利用している人も多いです。
海外のテレビで共通して需要がある日本のアニメーションは、かなりジャンルが限られていて、『ドラえもん』なり『アンパンマン』というところになります。つまり子どもからの人気が高いアニメですね。
『NARUTO-ナルト-』も『ワンピース』も人気がありますし、それ以外にも日本のアニメやマンガが広まっていることは確かです。ただ、触れ方が違法であったりということが多く、そこでビジネスにできていない現状があるんです。
この点については、本の中で詳しく書いていますが、ライツ(版権)管理がカギを握っていると思います。キャラクターグッズやおもちゃなどを売るマーチャンダイジングは海外のコンテンツ産業でも主要なビジネスになっていますから。現在のライツ管理は我々民間では手が及ばなくなってしまっているとしか言いようがないと思います。
(中編に続く)