「アニメ業界はテレビの犠牲者です」 ぴえろ創業者が語るアニメの未来と課題
■アニメ業界は「テレビの犠牲者」である
――それが第1話から凄まじい反響を呼びました。
布川:別の意味でも反響を呼んでしまったのですが(苦笑)、すごかったですね。
アニメ番組というのは分からないんです。放送されても全く当たらなくて、「やっぱり」と思うことの方が多い。だから、賛否両論あるにせよ、私たちの予想とは別の勢いをつけてくれたところでは良かったです。
この世界は「勝てば官軍」なのでね、私たちの企画力が要因ですと言えるのかもしれないけれど、『おそ松さん』については分からない。スタジオぴえろのスタッフ全員が謙虚に結果を受け止めています(笑)。
――この本で、テレビにおける「視聴率」の力が薄れていること、視聴率を取れなくてもビジネスとして成功を収められることが書かれています。
ただその一方で番組に投資をするスポンサーは、視聴率を一つの指標として投資をすると思います。番組とスポンサー企業の関係はどのように変わったのでしょうか。
布川:現在、週80タイトル近くのアニメーションが放送されていますが、現在ではスポンサーだけで成り立つ番組はほとんどありません。そのような番組は『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』といった昔から放送している枠くらいじゃないですか。
ほとんどのアニメ番組は製作委員会方式ですが、要はスポンサーだけでは成り立たないから、こういう方式になるんです。今のテレビ業界ではアニメくらいですね。製作委員会方式は。
アニメ業界はテレビの犠牲者のようなところがありまして、バブル期にものすごい営業が入ってきて、ゴールデン帯で放送をしていました。ただ、アニメって30分放送じゃないですか。実はこの30分枠って広告代理店からすれば一番売りづらい長さなんですよ。
――時間が短いからですか?
布川:そうです。1時間半とか2時間とかの枠をドンと売り切って大きな金をつかんだ方がいい。だから、ゴールデン帯の30分のアニメ枠は減っていき、深夜に移っていきます。
編成上の理由によってアニメ番組は子どもの枠から離れていき、少子化も手伝って子ども向けビジネスに精通する企業もスポンサーにつかなくなっていきました。
そういう状況の中でもアニメ業界はしたたかさを発揮して(笑)、民放の中でも電波利用料が安いテレビ東京に移り、さらにローカル局の東京MXテレビにも進出しました。そうしてアニメーションの制作だけは確保していったんです。
もちろん以前のように視聴率は取れなくなったけれど、そこからでも大ヒットは出ています。『進撃の巨人』は東京ではMXテレビで大ヒットしましたよね。
大ヒットを生むのは必ずしもゴールデン帯だけではないし、インターネットなどを通じて人気が広がっていく可能性が高くなった。流通も報道形式も、チャネルがたくさんあるので、その中で宣伝の仕方も多様になっているわけです。