海外はビジネスチャンスの宝庫 「令和の虎」出演の起業家が語る海外で人生を切り開く秘訣
ビジネスにおいて、自分で事業を興すのは一つの冒険だ。どんなに周到に計画したとしても、成功するとは限らない。それでもチャレンジする決断ができるかの最後の決め手は「どんな困難も受け入れる」という覚悟なのだろう。
『覚悟がすべてを変える 運とお金の正体』(安藤功一郎著、青志社刊)は人気YouTube番組「令和の虎」に出演する起業家の安藤功一郎さんが、自身の成功を支えた考え方と生き方をつづった一冊。リスクを負いながらもチャレンジを続けるメンタリティの源は何なのか。ご本人にお話をうかがった。
■海外に出るとビジネスアイデアが出やすい理由
――『覚悟がすべてを変える 運とお金の正体』は安藤さんの初めての著書です。今回、ご自身の半生やビジネスをするうえで土台になっている考え方を本にして残してみようと考えた理由についてお聞きできればと思います。
安藤:以前から本を出したいとは思っていました。そこに今回「令和の虎」絡みで本を出さないかというお話があったので、良いきっかけになりました。
若い世代の人に向けて書いたというところもあるのですが、どちらかというと40代前半の僕と同世代の人に「まだまだ人生終わりじゃない、チャレンジしようよ」というメッセージが届けばいいなと思っています。この年代って家庭が落ち着いてきて、仕事の方もなんとなく将来が見えてきて、「混沌」としやすく、この先の生き方に迷いが出やすいので。
――起業を志す人だけでなく、何らかの目標を追っている人に向けて書いている印象を受けました。全体を通してのメッセージとしては「まだ落ち着くところじゃないよ」とか、「もっとチャレンジしよう」ということになるのでしょうか?
安藤:そうですね。ただ、一番伝えたかったのは「日本に生まれたからといって、日本で仕事をしなければいけないわけではないし、日本だけで終わる必要もないよ」ということかもしれません。
僕だって、言葉なんて全然できないなかで日本を飛び出したのですが、どうにかやれていますし、それなりに成功することができた。そういう選択肢もあるってことを伝えたかったんです。
――安藤さんは十数年前にタイに渡り、それからタイを中心にビジネスを展開されています。そんな安藤さんでも、やりたいことがありつつも行動をするのをためらった経験はあるのですか?
安藤:思い立ったことはやってしまいますね。プライベートの方はあまりやりたいこと自体がなかったりするのですが、ビジネスの方は「やらなくて後悔するより、やって後悔しよう」という考えでいます。「あれ、やっておけばよかったな」とはなりたくないんですよね。
――経営上の意思決定をする際に気をつけていることがありましたら教えていただきたいです。
安藤:考えうる事態をできる限り想定したり、検証すること。その分野に詳しい人に相談してみることなど、できることはすべてやったうえで決断するようにしています。「人事を尽くして天命を待つ」という言葉が好きなんです。
あとは大雑把に言うとリーダーの役割って「事業・組織課題の分析」「役割と目標の定義」「方針・KPIの策定」「仕組みの構築」の結果生み出される成果を「評価」というフィードバックによって回していくものです。メンバーが思うように力を発揮できていなかったり、組織が成果を生み出せていない状態というのは、プロセスのどこかに課題を抱えており、それさえ見極めれば対処も明確です。
ビジネスではやれることを全部やってもギャンブルな部分は残るものなのですが、それでも「人事を尽くす」というのは重要だと思います。最後の何パーセントかはギャンブルになるとしても、それ以外のところはすべて準備、検証してから決断することを心がけていますね。
――新規事業を始める時などは、当然あらゆることを調べて情報を入れたうえで「よし、やろう」となるわけですが、それでもその事業がうまくいくかどうかはわかりません。GOサインを出す最後の決め手は何なのでしょうか?
安藤:最後は「自分自身がワクワクするかどうか」だと思います。あとは、世の中にとってそのサービスや商品が役に立ったり、課題解決になるかどうかですね。
それは「世の中のために」という社会的意義のためにビジネスをやっているということではなくて、便利なサービスやプロダクトならみんな使ってくれるじゃないですか。自分たちが提供しようとしている商品やサービスがすでにあるものだったり、世の中の課題解決にもならないものなら、それはやる意味がないですからね。
――「ワクワク」とは具体的にどのような感覚なのでしょうか。
安藤:「こうなりたいと願う自分になれるかもしれない」という憧れだったり、切磋琢磨して成功に向かっていく過程を楽しめそうだという期待ではないでしょうか。
――今手がけているタイでの不動産ビジネスについては、最初の「ワクワク」はどんなところに感じたのでしょうか?
安藤:スタートはタイの不動産会社の対応がどこも良くなくて、自分たちがやればもっと良くなると思ったところです。それ以前もタイにいたから、自分でも物件を探したりするじゃないですか。でも、どこも全然よくなかったんです。
「自分ならお客さんにこんな提案をするのにな」とか「価格や条件もこうすればお客さんもオーナーさんも満足するのにな」というアイデアがたくさん出てきたので、それなら「自分でやってしまおう」と。
海外はビジネスが日本ほど研ぎ澄まされていないことが多いので、日本から行くと課題が目について、ビジネスのアイデアは出やすいかもしれません。ただ、それが現地で受け入れられるかはまた別問題なのですが。
(後編につづく)