「リーダーシップはOSというよりアプリ」AI時代のリーダーシップのキモ
「リーダーはかくあるべし」という理想像が語られ、数々の実績を持つ経営者がリーダー論を説いた本が書店に並ぶのを見ると、リーダーの役割やリーダーシップを取ることには重大な責任が伴い、自分にはその資質がないと考えがちだ。
『無重力リーダーシップ』(クロスメディア・パブリッシング刊)は、リーダーシップにまつわるそんな思い込みや気負いを壊す一冊。リーダーシップはもっと気軽で、そしてもっとカジュアルでいい。そんなメッセージを伝える著者の礒谷幸始さんに、AI全盛の現代におけるリーダーシップについて語っていただいた。
■リーダーシップってアプリみたいなものかもしれない
――『無重力リーダーシップ』は、堅苦しく考えがちな「リーダーシップ」が身近に感じられるようになる一冊です。礒谷さんは社会人までアメフトをされていて、学生時代から常にキャプテンをされていたとのことですが、当時のリーダーシップについての考え方はどのようなものでしたか?
礒谷:学生時代はそれこそ「俺についてこい」ですよね。スポーツの世界ってプレイヤーとしての実力があると威張るじゃないですか。「すごい人ならどうしようもないけど、たいしたことない人が偉そうにすんなや」みたいに。若い時はそんな感じでしたね。
――それが小中高、そして大学社会人とアメフトを続けて、その後ビジネスの世界で戦う過程で変わっていかれた。
礒谷:やっぱり今言ったやり方で全部うまくいくわけじゃないので、PDCAを回すじゃないですか。バージョンアップを繰り返して今に至る、という感じです。
そもそもリーダーシップってメンバーによっても違うじゃないですか。以前に「AKB48 CAFE」の立ち上げに携わったことがあるのですが、相手は「カフェっ娘」と呼ばれる女の子たちです。そういう女の子たちにどう教育研修をしていくかっていうと、やっぱり体育会と同じようにやったらダメです。だから、基本的にほめて、「その爪かわいいじゃん、どうしたの?」とか、ギャル男のようなコミュニケーションをとっていました。
遅刻した子がいたとしても、昭和の体育会なら「坊主にせえ」ですが、こちらは「明日からがんばろうね」です。メンバーによってリーダーシップはこれだけ違うんです。
――まさに、本書にあったような「リーダーシップはOSではなく、アプリを入れるようなものかもしれない」というお話ですね。ただ、みんなが礒谷さんのように器用にできるものなのかという疑問もあります。
礒谷:これはまず他の人がやっているリーダーシップを観察して取り入れて見るのがいいと思います。自分には出来ないでなく、まずは真似してみることですね。相手のタイプによってリーダーシップって変えられるといいですよね。例えば、相手のタイプによってデートの誘い方一つでも違いますよね。
リーダーシップも同じことで、若い女性が相手のリーダーシップと、全員60代以上のメンバーが相手のリーダーシップは違いますし、性格によっても違います。ケースバイケースで正解はありません。でも、デートの話であったように、それってみんな多かれ少なかれやっているんですよ。
――デート以外にも飲み会の幹事など、どんな人でも日常生活の中でリーダーシップをとる場面があるというお話は本の中でもされていましたが、こうした日常生活の中のリーダーシップを、たとえば「仕事で大きなプロジェクトを任された時にどうするか」など、ビジネスシーンに導入していくためのアドバイスをいただければと思います。
礒谷:まずはメンバーをよく観察すべきでしょう。どういうメンバーがいて、その人と自分の関係性はどうなっていて、チームの存在意義とゴールがある。そういったことを整理する。自分ならまずそうします。
あとは相互理解です。これは自分が自分自身を理解することも含まれます。マネジャーが受ける研修の基礎として「自己理解」がありますが、これが一番難しいと言われています。今の時代なら、外部にその道のプロであるメンターがいることが重要かなと思います。
(後編につづく)