税理士が語る「26歳までに正しいお金の知識が必要」な理由
生きていくうえで考えずにはいられないのが「お金」。
どうやって貯めるか、だけではなく、どうやって増やすか。そしてそもそもどうやって稼ぐのか。それに保険や税金についても知識があった方がいい。
そう考えると、ひとくちに「お金」といってもテーマは実にさまざまである。ただし、これらのテーマは結局「自分はどんな人生を送りたいのか」という一つの問いにまとまっていく。そう、お金について考えることは、人生について考えることなのだ。
『26歳の自分に受けさせたいお金の講義』(すばる舎刊)は26歳を「人生の分岐点」としてとらえ、お金に左右されない人生を送るための知識を授けてくれる。今回はその著者であり、全国でもわずか1%しかいない20代の税理士である安江一勢さんに、若いうちからお金について考える意味についてお話をうかがった。
◾️26歳までに「正しいお金の知識」が必要な理由
――『26歳の自分に受けさせたいお金の講義』についてお話をお聞かせください。現在29歳の安江さんですが、26歳の時のマネーリテラシーについて教えていただきたいです。
安江:税理士なので税金については知識がありましたが、私生活ではまだ結婚していなかったですし、子どももいなかったので、あまりお金について現実感を持って考えることはなかった気がしますね。
投資についても月1万円で投資信託をやっていたくらいです。それも自分で選ぶのではなく人に勧められるままやっていたという感じで。だから26歳の人の平均的な知識しかなかったと思います。税金に詳しかったから給与明細が読めたくらいで。
――なぜ「26歳」を人生の分岐点になりうるのでしょうか?
安江:26歳というと大卒だと社会人4年目で、高卒だと8年目。転職が視野に入ってきたり、周りの人が次々に結婚したり出産したりと、人生の「次のステージ」が見えてくる時期、という意味で人生の分岐点だと書きました。
そこでどんな選択をするにしても、お金が必ず絡んでくる。だからこそ、このタイミングでお金について知って、お金を通して人生を考えてみようということで今回の本を書きました。
――「幸せになるためにはお金との付き合い方が大切」と書かれていましたが、「付き合い方」をさらに具体的に言い表すとしたらどのようなご説明になりますか?
安江:著者としては、この本を読むことで「今の自分のお金の使い方」を振り返るきっかけになってほしいと考えています。
たとえばですが、「お金について考える」となると、「節約・貯金」という思考になる方が多いのですが、必ずしもそれが正解ではなくて、自己投資など自分のためになることであれば、しっかりお金を使った方がいいとおすすめしています。
じゃあ、お金をどんな基準で使うかという話になるわけですが、これは自分が「どういう人生にしたいか」とある意味で同じ問いです。お金との付き合い方とは、「どういうふうにお金を使っていきたいか」であり、そのためにはどんな人生にしたいかを定める必要があると考えています。
――本書では投資、税金、保険、銀行など、人生にかかわるお金について、それぞれの性質と使い方が解説されています。また「稼ぐこと」や「借金」についても正しい知識を授けてくれます。若年層に向けて書かれた本ですが、書くうえで注意していたことや気をつけていたことがありましたら教えていただければと思います。
安江:20代・30代だけでなくて、40代・50代の方にも読んでいただきたいと思っているのですが、やはり主な読者層は若い世代だろうということで、たとえば「介護」のように彼らからするとまだ現実的な問題として捉えるには時間があるだろう話題は入れないようにしました。
また、この世代はまだ潤沢にお金があるわけではないということで、どうしても思考が「貯金」に向いてしまいがちなので、どちらかというとお金を「守る」のではなく、「使える」ようになってほしいという気持ちはありましたね。それこそ自己投資を含めた投資や必要な保険などにお金を配分できるようになってほしいというのがテーマとしてありました。
――お金について考えることで人生について考えるきっかけにしてほしいというお話がありましたが、人生全体のデザインとなると20代の頃はまだクリアではないことが多いと思います。その意味では、「お金」は人生をデザインしていくための入り口としてすごくいいですよね。
安江:お金の本なんですけど、お金そのものよりも自分の人生に思いが向かうようには書いています。投資や保険などお金にまつわる様々なトピックを取り上げていますが、興味が湧いたら他の本を読んで深い知識を得るとか、この本をきっかけに関心が広がっていけばいいなと思っています。
(後編に続く)