だれかに話したくなる本の話

企業人事部が知るべき体育会系人材の伸ばし方

学生時代に部活やスポーツに打ち込んできた人が社会に出ると、上司や先輩から「体力と根性はあるはずだ」と見られやすい。同時に本人も、「スポーツばかりやってきて世間を知らない」という自覚から「体力だけが取り柄です」と自己紹介しがちだ。

しかし、スポーツに没頭してきた人材は、競技を極める過程で社会人になっても必要とされる様々な能力を社会に出る時点で既に身につけており、特別なポテンシャルがある、とするのが『アスリート人材 飛び抜けた突破力と問題解決力で100%やり遂げる!』(松本隆宏著、マネジメント社刊)だ。

今回は著者の松本隆宏さんにインタビュー。アスリート人材が備えた能力と、その活かし方についてお話をうかがった。その後編をお届けする。

松本隆宏さんインタビュー前編を読む

■なぜアスリート人材はスポーツで培った能力を仕事で活かせないのか

――本書では能力や精神性、礼儀正しさなど、アスリート人材のさまざまな強みを挙げられていました。その中でもこれからの時代において特に活きてくると予想される強みがありましたら教えていただきたいです。

松本:どの能力も活きると思います。たとえば、体育会でスポーツをやっていた人って、教わることにも教えることにも慣れている人が多いのですが、教えてもらったことを自分なりに解釈したり、逆に自分の感覚を言葉にして人に伝えられるって、考えてみるとすごい能力ですよね。

また、イメージ力もスポーツをやっていた人の大きな強みだと思います。たとえば野球でカーブを打つとなったら、どんな球筋でボールがきて、どのタイミングでスイングするかをイメージします。そうやってこれから起こることを思い描くことは、営業でも経営でも大切なことです。このイメージ能力の高さは競技者特有のものでしょうね。

――本書で指摘されていたように、世界経済フォーラムの「2022年に企業が求めるビジネススキルの調査レポート」にある能力の多くはアスリートが日々の鍛錬で習得しているものです。これらの能力をビジネスの現場で発揮していくためにはどんなことが必要になるのでしょうか。また、ビジネスの現場で発揮できる人とできない人の違いについてもご意見を伺えればと思います。

松本:一つは「競技者としては現役を退いたけど、ビジネスの世界でもやってやるぞ」という「想いの強さ」でしょうね。どんなことをするにしても、「今より良くなりたい」という思いが根底にないと何も生まれないと思うので。

もう一つは「敏感さ」だと思います。同じ風景を見ても、何かに気づいて仕事に活かせる人もいれば、何も感じずにただ見ているだけの人もいます。両者の違いは大きいですよ。

たとえば商談をしていて、顧客の顔色が変わった時に何を察知するのか。私がやっていた野球はこういう小さな変化に気づくかどうかが大切なスポーツです。経験上、野球をやっていた人はこういう敏感さに長けた人が多いのではないかと思います。

――ただ、繰り返しになりますが本人には自分が身につけてきた能力を客観視できる人が少ないということですか。

松本:そうですね。だから競技から得てきた能力をなかなか仕事と紐づけられないんです。逆に言えば紐づける技術を身につければ、自分の過去がもっと活きてくるはずです。

今回の本がそのために役立ってくれたら嬉しいです。自分が身につけてきた能力に気づいて、スポーツで得た経験やスキルを仕事と紐づけられれば、商談でも交渉ごとでも気後れせずに臨めるはずなので。

――本書はアスリートや元アスリートだけでなく、人材採用に関わる人や経営者にも向けられていると感じました。こちらの方々にアスリート人材について伝えたいことはどんなことですか?

松本:体育会の学生やスポーツに打ち込んできた人たち本人は、自分たちの能力に気づいていないことが多いので、そこに気づかせて自己概念を磨くように促していただきたいですね。

――自己概念とは「自分は社会人として武器になる能力を持っている」という自己概念ですよね?

松本:そうですね。能力に気づいただけでは不十分で、その能力を磨き鍛えないといけないので。

あとは何よりマインドの部分を鍛えてあげることでしょうね。ストイックに打ち込むからこそ技術が伸びていくというのはスポーツも仕事も同じです。社会に出ても自己鍛錬は必要なのですが、意外と社会人になるとこれを怠ってしまう人が多いんです。

――今回の本はどんな人を念頭に書かれましたか?

松本:元々スポーツをやっていて今社会人として働いている方や、今まさに大学で部活をやっている方、スポーツをやってるお子さんをお持ちの父兄の方に読んでいただけたらと思って書きました。

――最後に、そういった方々にメッセージをお願いします。

松本:好きなことを夢中になってやるのはすごく大切なことで、やる以上は中途半端ではなくとことんやってほしいと思っています。夢中になるからこその喜びは必ずありますし、夢中になっているからこそ傷つくこともある。夢中になれることを通じて様々な経験ができるのは素晴らしいことです。

それが次のステージでどれだけ活きるのかは、次になってみないとわからないわけですが、野球が大好きな人は練習で疲れていても自主的にバットを振ることを「努力」とは思っていないはずです。どんなスポーツであれ、「好き」を通して誰に言われなくても目的に向かって地道に訓練する習慣が身についているのは大きな強みです。この本を通してそうしたアスリート人材ならではの強みに気づいていただけたらうれしいです。

(新刊JP編集部)

松本隆宏さんインタビュー前編を読む

アスリート人材 飛び抜けた突破力と問題解決力で100%やり遂げる!

アスリート人材 飛び抜けた突破力と問題解決力で100%やり遂げる!

体育会系人材を「アスリート人材」と呼びたい。
アスリートとは、ラテン語で「賞を狙って競う人」を意味しています。
レベルを問わず、スポーツで勝ちたい、タイムを縮めたいと、本気で取り組んでいる人はすべてアスリートなのです。
これは、スポーツだけに限った話ではありません。
例えば吹奏楽部などで、賞を目指して日々頑張っている人もアスリートと言えるでしょう。
日々の努力の中で培われた、特別なポテンシャルをもっているアスリートには、 「物事をロジカルにとらえる批判的思考力」や、いろいろな「挫折を乗り越えるセルフマネジメント能力」が備わっています。
スポーツは肉体のパワーだけでは絶対に勝てません。
計画や戦略・戦術など考える力が必要になるのです。それらは監督やコーチが指導したこと、経験したことを、「批判的に思考していく力」です。
ビジネスでも必要とされる、 PDCA(Plan=計画、Do=行動、Check=確認、Action=改善)の思考回路そのものなのです。
AIにとってかわることのできない職業でこそ活躍できるのが「アスリート」。
彼らが体得したものはすべて、社会に出てからも幅広く評価され、活躍するための武器になるのです。
アスリート人材が、自信をもってビジネスの世界で生きていくための唯一無二の書。

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