秀吉の妻の視点から見る「豊臣秀吉」と「戦国時代」
戦乱の世を終わらせた天下人、豊臣秀吉。
兵農分離と軍備の近代化、度量衡の統一、大判小判など通貨制度の確立、商工業の振興、貿易の拡大など様々な成果を収め、その功績はナポレオンに似ているとも言われる。
そんな豊臣秀吉の時代を、秀吉の妻である寧々の視点でつづっているのが『寧々の戦国日記』(八幡和郎、八幡衣代著、ワニブックス刊)だ。本書では、最新の歴史検証と考察に基づき、豊臣秀吉と寧々夫婦の等身大の生涯と彼らを取り巻く人々を「北政所寧々の回想」という形で描いている。
■秀吉はなぜ寧々と結婚できたのか?
出自もよくわからない秀吉は、武家の娘である寧々と、どのようにして身分違いの結婚を成功させたのか。
本書での寧々によれば、藤吉郎(秀吉)は小柄で身のこなしが軽く、黒くて小さな顔に頬骨と顎がとがり、ぎらぎらした小さなめは目立ち、ハンサムではないがどことなく愛嬌があったという。また、買い物などで出かけたときに会うと、荷物を持ってくれたり、まめな人だった。
寧々の母である朝日は、年頃になった自慢の娘だった寧々に良縁を求めて動き出していた。それを聞いた藤吉郎は得意の調略を始める。朝日は出自もよくわからない藤吉郎との結婚など承知するはずもない。寧々の父である杉原定利は、大人しくて何事も朝日の意向に逆らえるような人ではなかった。
そこで藤吉郎は、義理の叔父の浅野長勝に的を絞って攻勢をかける。
その頃、藤吉郎は織田信長のお気に入りで頭角を現し始めていた。一方の長勝も藤吉郎は有望株だから悪い話でもないと思っていた。結局、藤吉郎はさらに目上の上司からも浅野長勝に口添えをしてもらい、「杉原家から藤吉郎などに嫁にはやれぬ」という朝日を説得するために、長勝は寧々を妹のややと同じように自分の養女だということにして、この結婚を取り計らってもらったという。
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このエピソードから秀吉の執念と、調略の上手さが見えてくる。
寧々の視点から描く秀吉の生涯はどんなものだったのか。新たな視点で歴史を楽しむことができる一冊だ。
(T・N/新刊JP編集部)