「お客を捨てる」店舗経営を成功させるための誰も知らない鉄則
飲食店でも美容室でも、書店や雑貨店でも、大半のお客はそのお店が好きだから来るわけではない。「安いから」「セールをやっているから」「駅から近いから」「いつも空いていて待たせないから」、そんな理由でやってくる。
こうしたお客の「自分都合」な理由を、お店側は「顧客ニーズ」だと勘違いし、彼らを大事にし、すり寄ろうとする。実はこれが間違いの始まりだ。いくらやっても彼らがリピーターとして定着することはない。自分の都合で来たお客は、自分の都合で去っていく。こうした「一見客」に頼る店は、昨今のコロナ禍のような社会の変化に弱く、売上は安定しない。
本当にやるべきことは逆だ。スモールビジネスほどお客を選び、店の商品や方針に共鳴してくれるお客以外は捨てるべきなのだ。
■成功しているお店ほど「お客を捨てる」
そんな一風変わったマーケティング戦略を物語として提唱しているのが『お客を捨てる勇気』(中谷嘉孝著、クロスメディア・パブリッシング刊)だ。
主人公は美容師として独立したばかりの倉本ソウタ。店を繁盛させたいという意気込みはあるのだが、なかなかビジネスは軌道に乗らず。悩んでいるところに作家風の謎の人物・秋山聡に出会う。この秋山のアドバイスが、前述の「お客は捨てろ」なのだ。
「つまり、ビジネスも恋愛と同じで、おそらく最も重要なのは、いかにわかり合えるお客とだけ付き合うかってことなんじゃないかな?特に店をやる人にとって、ビジネスって人生そのものだと思うから」(P81より)
秋山はソウタにこんなアドバイスをし、ソウタに「旗を立てろ」と言う。「旗」とは自分の店のウリや強み、その根底にあるミッションや想い、ポリシーなどのこと。そこに共鳴してくれるお客だけを大事にすればいい、ということだ。
ただ、この「旗」がない店はあまりに多い。結果として利便性やお得感目当ての「自分都合のお客」、つまりリピートが望めないお客ばかりが集まることになる。
■リピート率が上がらないのはお店のせいではなく、お客のせいである
だからこそ本書では 「お客が定着しない、リピート率が上がらないのはお店のせいじゃない、お客のせいなんだ」 としている。そもそもリピートなどしないことはわかりきっているお客を呼び込んでいる限り、店側がどんなにがんばってもリピート率は上がらない、というわけだ。
集客サイトやクーポンサイトを利用しても無駄だ。「旗」を立てていない限り、こうしたサービスでお店にやってくる新規客がリピーターになる確率はないに等しい。まずは「旗」を立てること。それがすべての始まりだ。
では「旗」、つまり自分の店だけの売り物や価値、ミッションや想いはどのように打ち立てればいいのか。本書ではその点についても詳しく解説されている。
また、「店の価値観に合わないお客は捨てる」という行動は、やろうと思ってもなかなか踏ん切りがつかない人も多いかもしれない。「お客を大事する」という商売の大原則から外れるような気がするからだろう。ただ、本書は「お客を大事にするな」と言っているわけではない。「大事にするお客を見極めろ」と言っているのだ。
なぜ大事にするお客を選び、それ以外のお客は捨てなければならないのか。それをすることで何が起こるのか。本書を読めばソウタと秋山の会話からそれらがすっきりと腹落ちするに違いない。
(新刊JP編集部)