5万円の物件で高利回りを実現「ボロ物件投資」の難易度とは?
資産運用や副業として古くから人気がある不動産投資だが、物件を購入するのにまとまったお金が必要なため、なかなか「普通のサラリーマン」には手が出しにくい。
そんな不動産投資の常識を変えるのが『“5万円”購入ではじめる「副業」不動産投資』(脇田雄太/著、ごま書房新社/刊)で紹介されている「ボロ物件」を利用した不動産投資だ。この手法では老朽化した戸建て物件を格安で購入し、リフォームを施して賃貸に回す。これなら、人によってはローンを組まずとも物件を手に入れることができる。
この手法の成功の秘訣や注意すべきポイントはどんなところにあるのか。今回は著者の脇田雄太氏にお話をうかがった。その後編をお届けする。
■5万円の物件で高利回りを実現「ボロ物件投資」の難易度
――ローンを組まずに済むくらいの低予算で始められるというのは脇田さんの不動産投資手法のいいところだと思いますが、立地さえまちがえなければそこまで難易度は高くないと考えていいのでしょうか。
脇田:参入障壁は低いですが、やはり難しさはあると思いますね。おっしゃるようにお金がなくても参入できますし、やろうと思えばやれるのですが、根気がいりますし、コミュニケーション能力もある程度必要です。一つ一つの作業は難しくないのですが、それを地道に積み上げられるかどうかが成功できるかどうかを分けると考えています。
――「根気がいる」というのは、物件の仲介業者と関係づくりをして、「売ってもいい人」と思ってもらえるまで付き合うところですか?
脇田:それもあります。ただ、その次の段階で、買った物件をリフォームするところでも根気は必要です。
こちらの思惑は「いい工事を安く」ですが、不動産会社やリフォーム会社に丸投げすると高くつくんですよ。じゃあどうするかというと、リフォーム会社が使っている職人さん一人一人と知り合って、職人さんの電話番号が自分の携帯にたくさん入っていて、直接連絡して発注できるようになると、リフォーム費用は不動産会社経由で頼んだリフォーム会社にやってもらうのと比べると半額から3分の1くらいになります。
これは仲介業者と親しくなるところからつながっていて、まず物件をネットで探して、良さそうなところがあったら現地に行って仲介業者に案内してもらう。そこで買うかどうかはどちらでもよくて、仲介業者の方と名刺交換して知り合いになることが大切です。物件を買わなかったからサヨナラではなくて、食事に誘ったりしてある程度親しくなると、リフォーム業者も紹介してもらえるようになります。
「不動産仲介業者の人」としてではなくて「個人的に頼まれているんだな」と思わせるくらいの関係性にならないといけないわけで、かなり根気が必要ですが、こうなると強い。
――長崎市内の戸建て物件の家賃相場はどれくらいですか?
脇田:だいたい5万円プラスマイナス1割くらいです。4万5000円から5万5000円の間にだいたい収まると思います。
――長崎は階段立地が多く、土地が安いというお話がありましたが、他の都道府県にも階段立地はありますよね。そういうところに目をつけて不動産投資をするというのもアリなのでしょうか。
脇田:階段立地があったとしても、他に平地がたくさんあるような場所だったら人はそちらに住むので、あまり賃貸需要は見込めません。賃貸需要がある階段立地というのは、国内では長崎しか私は知らないです。
私が長崎に目をつけたのは、本当に平地がなくて、階段立地を開発するしかないからです。 長崎市の人が住んでいる面積の8割くらいが階段立地だと言われています。だから、平地に分譲マンションができたりすると、そのマンションは福岡より高い。だから普通の人はなかなか住めません。長崎でマンションに住んでいるというと「お金持ちだね」となる。そのくらい平地が貴重なんです。
そして「5万円で戸建てが買えるんだから、家賃で月5万円払わずに自分で買おう」という人もあまりいません。普通の人はそういう家を直して住むという発想がないんです。私が長崎に目をつけたのはそれも理由です。
――「ボロ物件投資」で初心者が失敗しがちなことについて教えていただきたいです。
脇田:失敗している人のほとんどは、お金をかけすぎて失敗しています。物件を高く買いすぎたり、高いリフォーム業者に発注したり、しなくてもいい工事をしてしまったり、ということです。
不動産投資の問題って、ほとんどお金で解決できるんですよ。建物が古いのも、地盤沈下しているのも、白アリがいるのも、基本的にはお金で解決できます。でも、お金をかけすぎてしまったことについてはお金で解決できないんです。
――なぜお金をかけすぎてしまうのでしょうか。
脇田:リフォームでいうと、人に貸す事業で行うリフォーム工事と、自分が住む家のリフォーム工事を分けて考えられない人が多い印象です。私からすると、たとえばフローリング材を選ぶとして、ご入居者さんのお引越し当日からもう床材は傷みはじめるわけですから賃料に影響を与えづらい高級品をわざわざ使わなくてもB級品C級品で十分だと思うんです。どこかの大きなマンションの新築時に特注したけど余ったものがネットで流通しています。そういうものを使っても十分きれいですよ。でも、中にはわざわざ桜の木をフローリング材に使ったりする人もいます。自分が住む物件と人に貸す物件を分けて考えられないと失敗しやすいですね。
――本の中で「入居者が決まらない物件には決まらない理由がある」と書かれていましたが、決まらない理由はやはり立地ですか?
脇田:立地で決まらないこともあると思いますが、立地は多少悪くても価格を下げれば人は入ります。ということは価格設定がまちがっているんです。立地やリフォームの程度、広さなど物件の価値に対して家賃が高ければ入らないし、安ければ決まります。
――お話をうかがっていて、タイトルにあるように「副業」としてやるのはかなり大変なのではないかと思いました。下見にいったり、業者と関係を築いたりでかなり手間がかかるのではないかと思いますが、そのあたりについてはいかがですか?
脇田:副業としてやりやすいとは思います。不動産は確かに手間ひまかかるのですが、会社員のように月曜日から金曜日まで9時から17時まで忙しいということはありません。不動産投資をする時に忙しいのって入居者が決まるまでです。そこからは管理会社に任せてしまえるので、会社勤めをしている方の副業としてやりやすいと思います。
――最後に、「ボロ物件投資」に興味がある方々にメッセージをいただければと思います。
脇田:いかに軍資金を作るかが大切です。僕自身もすごく大変だったのですが、最初は節約したり副業したりして、お金を貯めることに専念してほしいと思います。
たとえ5万円の物件を買うのでも、物件を見に現地に足を運んだり業者と関係を作ったり、リフォームで仕上げたりするのも含めると、最初の物件には500万円から600万円はかかると思います。ただ、その金額にひるむ必要はありません。
なぜかというと、5万円で物件を買って、そこから何年かかけてリフォームのお金を貯めたっていいわけですし、リフォームも業者に頼まずDIYで少しずつ修理する方法もあるわけです。月5万円の家賃をいただこうとするとリフォームにたくさんお金をかけないといけませんが、家賃2万5000円でよければそこまでお金をかけなくても借り手はつきます。
色々とやりようはあります。まず第一歩を踏み出してみると色んな知識が入ってきますから、2軒目、3軒目はもっと楽になる。だからまずはお金を貯めて一歩目を踏み出してみていただきたいですね。
(新刊JP編集部)