だれかに話したくなる本の話

過ちを犯した人を許すのは誰か。一人の男の「転落」と「再生」を描く物語

『泥の中で咲け』(幻冬舎刊)

一人で自分を育ててくれた母親が突然死んだ。

父親の記憶は4歳の頃から消えている。生活は困窮を極め、小学校の修学旅行にも行かなかった。中学生になっても、決して目立つこともせず、愛だの恋だのと騒ぐクラスメートをしり目に、ひっそりとやり過ごした。
高校生になると、すぐに引きこもりになった。そして、あの日がやってきた。7月初旬、家でゲームをしていると、電話が鳴った。

「お母さんが職場で倒れて、救急搬送されました」

泥の中で咲け

泥の中で咲け

人々のつながりと家族の再生を描いた連作短篇集。