「PASONAの法則」が顧客流出の原因だった! 既存顧客からの売上を最大化させる4つのメッセージモデルとは
せっかく新しい顧客と契約が成立したのに、すぐに別のサービスに切り替えられてしまう。新規顧客の獲得は上手くいっているのだけど、どんどん顧客が離れていってしまう。
サブスクリプション・エコノミーの時代に入り、新規顧客だけでなく、既存顧客に対するアプローチが重要になっていることを、私たちは感じている。
しかし、契約更新を促す際、あるいは値上げやアップセルの提案のとき、さらには何かあった際の謝罪をするときに、これまでのセールストークが通用しないのである。
これまでは鉄板と思われていた手法も次第に通用しなくなり、バージョンアップなり、新しい手法が求められている。
そうした変化が顕著なのが現代という時代だろう。
経営コンサルタントの神田昌典氏ですら自身が開発したコピーライティングの技術である「PASONAの法則」を自己批判する。――使う状況を間違えると、逆効果になりかねないと。
「PASONAの法則」とは「問題(P)」「共感(A)」「解決(So)」「適合(N)」「行動(A)」の順番に伝えるべきことを伝えると劇的な売上を生むというメッセージモデルだ。
このメッセージはどんな場面でも使われるものだと思われてきた。しかし、実は既存顧客に対してはむしろ流出が加速するおそれがあるのだ。
では、どのようなメッセージを既存顧客に発信していけばいいのか?
『ストックセールス 顧客が雪だるま式に増えていく最強のフレームワーク「4つのメッセージモデル」』(エリック・ピーターソン、ティム・リーステラー著、神田昌典、リブ・コンサルティング監修、福井久美子訳、実業之日本社刊)にその答えが書かれている。
本書では、新規顧客と既存顧客のアプローチが全く別であるということを示し、既存顧客にどのように伝えれば売り上げがあがるかが解説されている。さっそくその一部をご紹介しよう。
■刺激を与えると顧客は流出する? 現状維持を促す最適なメッセージモデルとは
本書の核である「4つのメッセージモデル」は、「更新」「値上げ」「アップセル」「謝罪」という4つの商機にフォーカスされている。
今回は「更新」のメッセージモデルを説明していこう。
人間は「現状維持バイアス」から安定を求める。見込み顧客が他社のサービスを使っていて、自社の製品に乗り換えてほしい場合は、このバイアスを壊すことが重要になるわけだが、既存顧客にそのままサービスなり商材を「更新」してほしいときはどうすればいいのか。
この本では調査を通じて、どのようなメッセージが効果的かを探っている。
その調査は、顧客に更新を促すシーンという設定のもと、被験者を3つのグループに分けて、用意した3種類のメッセージのどれがもっとも効果的かをテストするというものだ。
まずは「現状維持を強化するメッセージ」、次に「変化を促す刺激的なメッセージ」、そして最後に「アップセルを促す刺激的なメッセージ」の3つである。
「現状維持を強化するメッセージ」では、今日までのプランの運用成績はうまくいっており、会社は目標達成に向けて前進をしているという好意的な説明を聞かせ、さらに現状を維持したくなるような文章も読んでもらった。
続いて「変化を促す刺激的なメッセージ」では、今日までの運用成績を報告したあと、トーンを変えて現在のやり方を否定するような新しいプランを紹介した。
最後の「アップセルを促す刺激的なメッセージ」は、「変化を促す刺激的なメッセージ」の刺激的なプレゼンに加え、従業員がそれぞれの目標を達成できるようオンラインツールを選択できるようになったと言い、高いプランへの移行を提案した。
この3つのメッセージはどのように被験者に作用したのか。
結果、刺激的な2つのプレゼンよりも、現状維持で更新をすると答えた人が13%多かった。さらに、現状維持のプレゼンを好意的に捉えた人が他のプレゼンよりも9%多く、信頼性も7%高かったというデータが出てきたのだ。
そして、何よりも重要なことが、刺激的なプレゼンを受けた人たちは、現状維持を勧められた人よりも10%も多くプロバイダーを切り替える可能性があると答えた。つまり、刺激的なプレゼンが顧客流出のリスクを高めていたのだ。
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ここでは、「契約更新」のメッセージの伝え方について紹介してきたが、本書では、「値上げ」「アップセル」「謝罪」それぞれの場でのプロセスを網羅している。
そのメッセージは一部重複するものもあるが、それぞれで異なるメッセージが求められる。その内容はぜひ本書を読んで参考にしてほしい。
時代が変わり、ビジネスのあり方も変わってきた。営業担当者やマーケッター、そしてカスタマー・サクセスの担当者はどのようにメッセージを伝えるかで、売上も顧客との関係性も大きく変わる。今こそ一読しておくべき一冊といえるだろう。
(新刊JP編集部)