会社の成長を決める「経営者の器」を決める要素とは?
年商5000万円であっても、年商100億円であっても、経営者ならば事業や会社の成長を目指す気持ちは同じ。しかし、やはり誰もが望み通りの結果を得られるわけではない。
売上が停滞していたり、新事業が当たらなかったり、経営上の壁にぶつかっているなら、「経営者である自分」の仕事や考え方から見直すべきかもしれない。会社の規模や年商ごとに、経営者に必要とされるマインドも、やるべき仕事も違うからである。
『ゼロから年商10億円企業を創る』(松本剛徹著、ぱる出版刊)は、そんなことを教えてくれる一冊だ。会社はステージごとに直面する問題の性質が変わるため、それに対処するために経営者自身が自分を変えていかなければいかない。
今回は著者の松本剛徹さんにインタビュー。年商1億円未満から年商10億円まで、会社が直面する問題について語っていただいた。
■会社の成長を決める「経営者の器」とは
――『ゼロから年商10億円企業を創る』はこれまでの松本さんご自身の事業立ち上げ経験から得た知見が散りばめられています。これまでにどのような事業を作ってきたのか教えていただきたいです。
松本:2011年に立ち上げた最初の会社は、スマートフォンを使ったマーケティングや集客を専門にするサービスを提供していました。そこから事業を多角化していきまして、人や会社、サービスなどを対象にしたプロデュース事業や歯科クリニックの経営、AI関連事業などを手がけました。プロデュース事業は今でもやっています。
――それだけ事業の立ち上げからグロースまで関わっているとなるとすごい経験値ですね。
松本:そうですね。ほぼほぼゼロイチで立ち上げてきたので。
――「社長の器で会社の規模が決まる」とされていました。器の大きな経営者とそうでない経営者の違いはどのようなところにありますか?
松本:これは大きく二つありますね。一つは、どれだけ「他人」の範囲を広げられるかです。
事業を興したばかりの頃は、みんな「自分が儲けたい、稼ぎたい」なんです。それが満たされると次は周りの人を豊かにしたい、という考えになるのですが、それが自分の家族で終わるのか、従業員まで広がるのか、もっと広がって業界全体や地域、日本、世界を視野に入れられるのかというところです。もう一つは「修羅場」の数ですね。
――修羅場というのは経営上の困難ということですよね。
松本:そうです。やはり経営していると大変なことはたくさんあるので。それを経験すればするほど、自分の足りないところがわかるといいますか、「自分のこういうところは改めないといけないな」というのがわかってきて、それによって経営者としての人格が形成されていくところがありますね。
――「他人」の範囲が狭いと、そこを満足させるくらいの成功しか掴めない、ということですね。
松本:結果的にそうなることが多いです。だって、従業員は社長を稼がせるために働くわけじゃないじゃないですか。だから、まず社長の方が従業員のことを考えないと、彼らだって協力しないですよ。
――この本は、年商10億円未満の会社を3段階に分けて、課題やその乗り越え方、経営戦略などについて解説しています。松本さんご自身がこの3段階それぞれで直面した問題と、それをどうやって乗り越えたのかについて教えていただきたいです。
松本:まずは、「年商1億円の壁」があります。僕が起業した時も、1年目の年商は5500万だったんですよ。2年目は2億2000万で4倍になったのですが、「年商1億円」を超えられたのは、1年目から2年目に行くときに、単価を上げてビジネスモデルの設計を変えたからなんです。最初の壁を超えるのはそこが大事だと思います。
――値上げはタイミングが難しそうですね。
松本:結局は上げただけの付加価値をつけられるかどうかですよね。サービス自体の付加価値もそうですが、こちら側のブランディングで付加価値をつけるやり方もあります。
――それはすごくよく分かります。どうやってブランド力をつけたのでしょうか?
松本:簡単なのは著作です。本はやはりすごくブランディングになる。あとはメディア出演でしょうね。
――次の段階の年商1億円から5億円の企業の壁についてはいかがですか?
松本:ここは人材の壁だと思いますね。この額になると、一人では無理なので、誰かを雇うなり、業務委託をするなりしないといけないのですが、その時にマネジメントをうまくできるかがポイントです。
――人を雇うとなった時に、社長の目が届く範囲というのはどれくらいですか?
松本:経験上、7人が限界かなと思います。それ以上になったら中間管理職を置いた方がいい。
――最後の年商5億円から10億円の企業の壁についてもお聞きしたいです。
松本:ここも人材関係なのですが、どちらかというと経営チームの作り方が課題になりやすいです。年商10億円を超えるとなった時に、既存の事業を伸ばして達成するやり方もあれば、同じくらいの売上がある事業をもう一つ育てるやり方もありますが、どちらにしてもここでは社長である自分のブレーンをいかにつくるかで結果が変わってきます。
かならずしも自前でブレーンを育てなければいけないわけではなくて、外部から連れてくることも選択肢に入れて、自分の右腕になる人を作るのがこのステージですね。
――第2段階で出てきた人材の悩みについては、小さい中小企業だと、リソース面で自社で育成するのが難しいと聞きます。こうした育成の課題はどのように乗り越えるべきでしょうか。
松本:自分で学んで成長できる人や成長意欲の高い人をいかに入れるかが最大のポイントです。だから育成よりも採用ですね。
じゃあそういう人をどう連れてくるかというところですが、私は新卒学生から見つけてくるのがいいと思っています。面接で成長意欲までを見抜くのは難しいですから、インターンとして一定期間一緒に働いてみて、その間に判断するというのがいいのではないでしょうか。
(後編につづく)