だれかに話したくなる本の話

憧れと現実の狭間で…新人外科医の挫折と再生の物語

『孤独な子ドクター』(月村易人著、幻冬舎刊)

スポーツ選手に警察官、科学者や研究者。
憧れる人が多いこれらの職業だが、どんな職業でもいざ就いてみると、「憧れ」と「現実」のギャップがある。憧れの職業に就いたはいいものの、仕事の現場で「こんなはずじゃなかった」と感じることは、たぶん珍しくない。そのギャップをどう考えるかが、一人前になれるかどうかを分けるのだろう。

やはり、「憧れの職業」として定番の医師も、例外ではない。
『孤独な子ドクター』(月村易人著、幻冬舎刊)は、念願叶って外科医になった主人公が、医療の現場での様々な経験を通して一人前になっていく物語だ。

孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニケーションをとったり、先輩医師に怒られることもしばしば。そして、ある出来事を機に、山川の頭の中に一つの考えが芽生えはじめる。