成長できない人が陥る「思考停止」。そこから脱却するために必要なことは?
社会や環境の大きな変化の中で、変わらないものがある。その一つが「仕事」の基本だ。
デキるビジネスパーソンになるためには、どんな環境、場所においても通用する「基本」をまず習得することが大切だ。では、どのように「基本」を覚えていけばいいのだろうか?
今回は『仕事がデキる「新人・若手社員」になる! 潮田式 "1on1" ビジネス基礎研修』(ごま書房新社刊)の著者であり、研修講師として新人からベテランまで幅広いビジネスパーソンに研修を行っている潮田、滋彦さんに「デキるビジネスパーソン」になるために必要なことを伺う。
ここでは、仕事をする上で大事な3つのことを中心に、仕事外にもつながる新たな習慣付けの大切さを聞いた。
(新刊JP編集部)
■「物事の本質を捉える」「自分の当たり前にはまらない」「柔軟な姿勢で取り組む」
――『仕事がデキる「新人・若手社員」になる! 潮田式 "1on1" ビジネス基礎研修』はどんなことを伝えたいと思って書かれたのでしょうか。
潮田:この本の中で一貫して伝えていることは3つあります。1つ目は「物事の本質を捉える」。2つ目は「自分の当たり前にはまらない」。そして最後は「柔軟な姿勢で取り組む」です。
この3つを外してしまうと、どんな環境であっても成長はできません。
――潮田さんはこれまで『新版”思考停止人生”から卒業するための個人授業』という本を書かれてきましたが、「思考停止からの卒業」という要素は本書でも核になっているように思います。
潮田:そうですね。まさにこの本は「思考停止」とは地続きになっていると思っています。人は現状維持を求めはじめると、流されるようになってしまい、自分で考えなくなるんです。だから、常に自分の頭で考えることが大事ですし、考えることを習慣化することが必要です。
もちろん、今日だけ考えて明日は考えないでは習慣にはなりません。常に自分なりに問いかけてみる、周囲の言っていることが本当にそうなのか考えてみる、その積み重ねをし続けていくことが思考停止から脱却することにつながるんです。
――本書は7日間のセッションを通してPDCAや問題意識、コミュニケーション力などを学んでいきますが、1日目のセッションは「メモの取り方」です。これはメモが全ての基本だからでしょうか。
潮田:まさしくその通りです。この本の中でも、(登場人物で部下役の)オオタさんはメモを取っていないために、グループミーティングでどんな話がされたのか再現できません。
メモを取って記録し、それを見直すことで、いろいろなことが再現できるようになっていく。それを何よりも最初に習慣づけるべきことです。メモがちゃんと取れていれば、上司からの投げかけに対しても、メモを通して学んだことに照らし合わせて答えが出せるようになるんですね。この本の中でも、メモがきちんと取れるようになってから、オオタさんは飛躍的に成長していきます。
――本書のタイトルに「仕事がデキる」という言葉がありますが、この「デキる」の定義について潮田さんの考えを教えてください。
潮田:成果も出し、一緒に仕事をしていて気持ちいいと思わせてくれる社員、ということ。また、もっと言うならば、周囲を上手く巻き込んで成果を出せる人、先を見据えて次の成長を作り出せる人でしょうか。
重要なことは、組織の中で仕事をするわけですから、独りよがりになってはいけないということです。これは3日目の「問題意識」のセッションで「自分ごと化」と言っていますが、職場の中で上手くいかないことがあったとき、「それは自分の仕事じゃないから」と他人ごとにするのではなく、自分はどう思うのか、自分だったらどうするのか、それを言っていく。また、他者の考えや思いを受け入れることも大事になりますね。これができる人は「仕事がデキる」と言えると思います。
――自分が独りよがりになっている状況が自分で気づけないこともあります。自分を客観視するにはどうすればいいでしょうか。
潮田:6日目の「提案力」のセッションで、「視点」「視野」「視座」という3つのものごとのとらえ方を説明していますが、まずは自分の仕事は他者が評価するということを受け入れて、他者からの視点で自分を見ることが大切です。また、視座を広く持って、自分が世界全体のほんの一部であることを意識すると、ものごとの捉え方が全く違ってきます。
――この他者目線は、たくさんの人と関わることによって得られるものだと思います。
潮田:そうですね。だから、まずは周囲の人に興味を持ちましょう。なぜこの人はこういうことを言うんだろうと想像してみることが大切です。
――先ほどお話された3つの仕事の基本について、最後に柔軟性をあげていましたが、それは、この社会の変化のスピードについていくためにも必要です。この柔軟性を鍛えるためにはどうすればいいでしょうか。
潮田:やはり習慣ですね。会社以外でも、家族や友人、恋人とのやりとりなど、普段の日常生活の中でのやりとりについて、自分の接し方をちょっと立ち止まって考えてみてください。意外と「オレ様」で接している人は多いですから。
自分の接し方を客観的に見て、相手のことを考えてみる。そのときに「そういえば、会話をするときによく遮っちゃうな」と思ったら、最後まで話を聞いてみるようにする。こういうことが重要です。
人の話をちゃんと聞いて、自分の話をちゃんと発信する。この2つを意識すれば、新しい情報はどんどん集まってきます。「自分はこうだ、分かったか」ではなく、相手が受け取れるように伝える。これを習慣化をしていくんです。
もちろん、自分の意見や考えを持っていることは大事ですが、そこに固執しないでほしいですね。年齢が高くなっていくと、少しずつ柔軟性がなくなっていくので(笑)
――仕事の基本が普段の生活にダイレクトにつながるということですね。
潮田:そうですね。人生のどの場面にも自分の生き方が出てきますから。
――本書をどのような方に読んでほしいですか?
潮田:大きく分けると4つですね。まずは、タイトルに直接的に書いている「新人・若手」の皆さんです。この本の特徴は、単に「メモを取りましょう」とか「PDCAをまわしましょう」とか「コミュニケーションが重要です」という話を書いているのではなく、深いレベルでそれらの重要性を納得しながら仕事の基本を学べるようになっています。そして、若いうちに物事の本質を捉える力や柔軟性を持って考える習慣が身に付けば、それはどんな環境においても役立つので、ぜひ学んでほしいですね。
2つ目はリーダー、役職者、リーダー候補の皆さんです。この本でオオタさんを指導するスギナミ課長はすごく良い上司なんですけど、まさしくこういう理想的な上司を目指してほしいです。インタビューの前編でもお話ししましたが、スギナミ課長にはティーチングとコーチングのアプローチを入れていて、人材の育成はその両輪が必要だと思っています。スギナミ課長の存在から学べることはたくさんあって、どんな風に部下と接するべきか、話を進めるべきか、とても良い教材になると思います。リーダーや役職者の方が読むと、何度もハッとさせられる場面があると思います。
3つ目は、比較的大きな企業だと、OJT指導員やメンターといった育成担当の方がいるんですが、そういう若手を育成する担当の方に読んでほしいですね。この本を新人さんと一緒に読んでいくことで、共通言語を持てると思います。
最後は本のオビに書いてあるのですが、経営者の方や企業の人事教育担当の皆さんです。
前編でも話題に出ましたが、自宅で業務をする人も多くいると思いますし、コロナ禍において、物理的・経済的な理由でなかなか研修を実施できない企業も多いと思います。でも、人材育成は待ったなしで必要です。そのようなときに絶好のテキストになると思います。若手社員に読んでもらい、各自の具体的な行動を宣言してもらう形がいいのではないかと思います。
そうなると、ほとんどすべてのビジネスパーソンというのが本書の読者ターゲットになりますね(笑)。ベテランの方にも意外と忘れていたり、できていないことがあったりするので、読んでほしいです。
――リーダー層以上は、自分のことを振り返らないといけないなと思いますね。
潮田:そうですね。ただ、できていないからダメというわけではなく、できていないことが見つかったら、より良い姿になるように新たな習慣を身につけていくことが大事だと思います。本書は自分の姿を客観的に見るためのツールとしても使えるので、ぜひ読んで頂きたいですね。
(了)