「いいね!」であなたも年収1億円
フェイスブックで2週間で儲ける方法
著者: 佐藤 みきひろ
定価: 1,575円
出版社: 講談社
ISBN-10: 4062182270
ISBN-13: 978-4062182270
― 今回は、本書『「いいね!」であなたも年収1億円 フェイスブックで2週間で儲ける方法』についてお話を伺えればと思います。まず、タイトルにある「1億円」なのですが、この金額は佐藤さんの年収ということでしょうか。
佐藤 「ソーシャルメディアについての僕のセミナーやコンサルティングの収入が約1億円ということですね。ただ、僕は複数の会社で役員に入っているので、実際の収入はもっと多いのですが…」
― 実際はもっと稼いでいらっしゃるけども、きりのいい数字ということで一億円。
佐藤 「そうですね。それ以上の数字だと現実感がなくなってしまうと思ったんです。年収1億円だと月に800万~900万円なので、読者の方もイメージしやすいと思いますが、それ以上になってしまうと、それこそいくつかの会社の役員をやっていたりしないと難しい額です。かといって“年収1千万”だとサラリーマンを普通にがんばれば稼げてしまいますしね。そういったことも踏まえて“1億円”という数字をタイトルに入れました」
― 本書では、主にFacebookなどソーシャルメディアを使ったマーケティングの方法が解説されていますが、その類の本はこれまでにもさまざまなものが出回っています。なぜこの時期にこのような本を書こうと思われたのでしょうか。
佐藤 「版元の講談社さんからも“今さらFacebookですか?”って言われました。ただ、個人事業主や中小企業向けにFacebookのセミナーをやり始めたのって僕がおそらく最初で、セミナーをやった数も国内では最多だと思います。その立場から言わせていただくと、ほとんどのFacebook関連本は大企業向けであったり、アメリカでの成功事例を取り上げるだけのもので、中小企業や個人ブランディング向けにFacebookの、著者本人の実績によるきちんとした事例が書かれた本はなかったんです。
その意味で、僕は長くクライアントの方々と向き合ってFacebookを使った集客に取り組んできたので、この本は満を持して出したという感覚です」
― 佐藤さんが手がけたクライアントさんはみなさん実績が出ているんですか?
佐藤 「出ていますね。僕の場合は塾を開催して、3カ月入ってもらっています。そこでまずはFacebookの知識をゼロから100まで身につけてもらう。そこからFacebookを使った集客・販売だとか、今度はご自身でFacebookのノウハウを教えてマネタイズする方法だとか、もしくはアフィリエイトだとか、そういうことを覚えていきます。 1回目の塾では650人、今やっている第2回は450人くらいの方々と一緒にやっています」
― 佐藤さんがおっしゃる“中小企業”というのはどういう会社を指しますか?たとえば、町工場だとか自分の畑で作った作物を直売する農家なども含まれるのでしょうか。
佐藤 「そういったものも全部含まれます。集客にマスメディアを使わないレベルの会社はたくさんありますが、この本で取り上げているFacebookを使った集客の方法は、そういう会社が自分でメディアを持って、広告費を削減しながら利益をあげていくことを意味するので、対象となる会社は多岐にわたるはずです。実際、僕のクライアントさんには農家の方もいれば、占い師や士業の方もいます。ただ、町工場は少ないですね。基本的にはBtoCの会社が多くて、BtoBの会社にはBtoCの商品を作って、直販部門をやりましょうという話をします。たとえば、飲食店に商品を卸している製麺所なら、直販商品をつくって、ウェブサイトを立ち上げて、ソーシャルメディアで企画を立ててその直販商品を広げていきましょう、という形ですね」
― 現在の中小企業のネット集客の実情はどのようなものなのでしょうか。業種にもよるでしょうが、あまりネットのリテラシー自体が高くないようなイメージがあります。
佐藤 「昔は企業のネットを使ったPR活動というと、自社のホームページやブログを作って情報発信をして、コメントなどで多少顧客からアクションが戻ってくるというような形でした。でも、今はネットが第三世代に入っていて、情報発信者と情報受信者が完全にフィフティフィフティの関係、つまり情報発信をしていないと情報が集まらない時代になっています。ここが重要なところで、情報発信が苦手なせいか、ウェブサイトをとりあえず作っておいているだけの会社がすごくたくさんあるんですけど、そこに人が集める手法がわからなければ立ち行かなくなってしまいます。
今はウェブ自体がソーシャルの時代に入っているので、インターネット利用者の大半が情報発信者でもあるという時代です。そんな中で、なぜ情報発信しないといけないかという意味もしっかりと把握していない企業が多いように思います。どういう風に情報を発信して、どういうメリットがあるかもわからないのでやってみる動機がない。耳に入ってくる事例も失敗事例ばかりなので猜疑心を持ってしまう。特に中小企業の社長の方などはそういう人が多いですね。
でも、その失敗事例は、いい加減なウェブ制作会社に言われるがまま自社ホームページを作ってみただけだったり、本当に効果的な方法でやっていないものがたくさんあります。今回の本ではそういう部分を払しょくしたいですね」
― 本書で取り上げられている手法は、広告予算の取れない会社にとって救いとなる集客の方法だといえますが、Facebookをはじめとしたソーシャルメディアを使った集客を始めたものの失敗してしまうパターンにはどういったものが挙げられますか?
佐藤 「考え方自体を変えられない場合でしょうね。結局Facebookをどんなにうまく使えても、Facebookというのはそこで情報を発信する人の考え方を投稿するツールに過ぎません」
― どのような考え方に変えていかなければならないのでしょうか。
佐藤 「日本が高度経済成長期だった頃は、ビジネスの成功のルールというと、伸びている会社のビジネスモデルを真似するっていうものがベースでした。流行っている飲食チェーンがあったら、同じような飲食チェーンを展開すれば伸びましたし、工場などでも“こういうものを作って売れた”という成功事例をもとにして商品を作れば売れるという時代だった。
でも、これからはマーケットも縮小していくでしょうし、そのルールは通用しません。横の真似をすることからいかに脱却するかが大事になります。それは広告一つとってもそうですし、ウェブサイトも同じで、同業他社の真似をして作った時点で負けです。
だから、ソーシャルメディアを使った集客の一環で経営者が情報発信するとしても、誰かが言っているような当たり前のことを言っても誰も見向きもしませんし、意味がない。まだないもの、今までの延長にないものを考えて発信しないといけません。
つまり、何を発信するか、どういう立ち位置をとるか。結局は自分だけの、あるいは自社だけの“オンリーワン”をどう作るかということが大事になります。それは経営者の色とか、人柄を出していかないとうまくいかないでしょう。それがないままツール一辺倒でいくとうまくいきません」
― ソーシャルメディアを使えばいいというものではないんですね。
佐藤 「そうですね。ソーシャルメディアを使いさえすれば集客できるということではなく、その根底にある核の部分、つまり“オンリーワン”をまず確立する必要があります。
これはすごく難しいことのように思えますけど、“本物しか生き残れない時代”になったとも言えます。かつて、本物が生き残れなかった時代があったわけじゃないですか。広告だけやCMだけきれいに作って、さもおいしそうに見せれば売れた時代です。でも、今は消費者が賢くなって、きちんとした情報から商品を選びます。口コミであったり、その会社の社長の人柄や理念、第三者の評価などです。
だからこそ、いい商品・サービスを扱っているのに世の中に見せていない会社や経営者はソーシャルメディアを使うべきだと思います。
本物の商品、オンリーワンのサービスを作って、それを見せる努力としてソーシャルメディアを使ってくださいということですね。そこができていれば、集客はいとも簡単にできます。もっと言うなら“この会社じゃないとダメなんだ”と顧客に名指しで選ばれる会社になるはずです」
― “オンリーワンを作る”ということをおっしゃっていましたが、経営者や会社にとってこれはなかなか難しい課題でもあります。佐藤さんご自身はオンリーワンをいかに作っていましたか?
佐藤 「僕の場合は、まず事業を興す時に“どんな業種をやるか”というのをおおまかに決めて、その業種をリサーチしていきました。そうすると、当然うまくいっている会社とそうでない会社がわかってきますよね。そしてうまくいっている会社を5社くらいピックアップして、それらの会社がまだやっていないことを箇条書きで全部抜き出していくんですけど、その工程であまり抜き出せる部分がなかったら、勝てる見込みがないということでその業種には手をつけません。でも、勝てる分野がいくつか見つかったなら、それをもとにオンリーワンのコンセプトを作っていきました」
― 本書には、佐藤さんが立ち上げた千葉のもつ鍋屋さんの事例が挙げられていましたが、こちらのコンセプトはどのように決まって行ったのでしょうか。
佐藤 「『龍馬』というもつ鍋屋なんですけど、“おいしいですよ”“安いですよ”という打ち出し方はしていません。
出店の際にまずあったのが、千葉を元気にしたいということ。それと、もつ鍋って博多が有名ですけど、実際に博多に行くともつ鍋に限らず食べ物がものすごくおいしいんですよ。“それなら千葉に博多を作ってしまおう”ということが根本にありました。
じゃあ、マーケットを見ようということで千葉周辺のもつ鍋のお店を調べたら2店くらいしかなかったんです。これなら勝てるということで、それらのお店とは全く違う味を作っていきました。
博多のもつ鍋には系統が何種類かあるんですよ。その中から既存のお店と合致しない系統を選んで、その味をコピーして千葉に持って来たんです。コピーには半年くらいかけましたね。博多のお店の内部にスタッフを入れて“レシピをものにするまで帰ってくるな”と言って」
― そこまでするんですね!
佐藤 「しましたね。ただ、もつ鍋だけでは“オンリーワン”とは言えません。そこで、本当の“オンリーワン商品”ということで生のサバを出すことにしました。
関東には生のサバを食べる習慣がないじゃないですか。サバっていうと“関サバ”が有名ですけど、九州の西に済州島っていう島があって、そこで獲れたサバがめちゃくちゃおいしいんです。ただ、鮮度が大事なのでなかなか関東では食べられない。それを九州から週に3回空輸して、届いたものを千葉から築地まで取りに行ってお店で出すということをしたんです。当然赤字なんですけど、それよりもまずはお客さんをびっくりさせないといけませんでした。
“生のサバ”っていうと、最初はみなさん嫌な顔をするんですよ、馴染みがないですから。でも、“おいしいから食べてみてください”って言って食べてもらうと、それが本当においしくてみんなびっくりするんです。ここにギャップが起きます。ギャップを感じたら、人は誰かに言いたくなるんです。そうすると口コミが起こって人が来るようになります。来てくれれば他のメニューも食べてくれるということです。
もつ鍋だと、他にもお店があるので“オンリーワン”にはならないのですが、当時生のサバを出していたお店は千葉県でうちだけだったと思います」
― 2章の「知らないうちにカモにされる人たち」がとても印象的でした。知識がないばかりに広告代理店やコンサルタントにカモにされてしまう経営者や企業の姿は容易に想像できますが、彼らにPRや集客を一任してしまうことのリスクについてお話を伺えればと思います。
佐藤 「僕も今は右往左往しなくなりましたが、人は言葉で簡単に動いてしまいます。人間はみんな、どこかで自分は頭がいい、僕は騙されないと思っているものです。
でも人間の頭の中は言葉でできていて、言葉がないと考えが起こりません。その言語の並べ替えで人っていうのはいかようにも動いてしまう。その認識がないと騙されてします。僕も過去には言葉巧みなウェブサイトやメールマガジンを信じていろいろなものを買ってしまったし、いろいろなコンサルタントに依頼して悔しい思いをしました。全部合わせると1500万円くらい使っています。
そういった失敗から何を学んだかといえば、騙されないためには、その情報を出している人と実績、第三者からの評判をしっかりネットやソーシャルメディアで調べることです。
ビジネスをやっている人は大体実名でFacebookをやっていたりするので、その人がどんな投稿をしているのかを調べると人となりや交友関係が見えてきます。そうやって、自分の目だけではなく、ソーシャルメディアの投稿を通して普段の行動をじっくり見ること。
それと、コンサルタントを探しているなら組織だったところはやめておいた方がいいと思います。コンサルティング会社だったら、社長は確かに結果を出せる人かもしれませんが、そこの社員の方も同じ成果を出せるかはわかりません。“本物”である人本人に直接教えてもらうことが大事ですね」
― 7章の「10年先まで集客で困らない7つのルール」は、ソーシャルメディアに限らず、マーケティング全般に通用する内容でした。ここで紹介されている7つのステップのうち最も難しいのはどれでしょうか。よくある落とし穴などがありましたら教えていただければと思います。
佐藤 「最初のステップだけですね。先ほどお話した“やることの内容をおおまかに決める”ということ、つまりターゲットを明確にして、この人に何を売りたいか、どういう情報を与えたいか、というところなんですけど、ここをまちがえると、その先方向性を変えにくいんです。やりなおしが大変なんですね。
たとえば本を出すのでも、一度「○○の佐藤さん」というイメージがついてしまうと、それを払しょくするのに何年かかかってしまいますよね。でも、この最初のステップがしっかりしていれば、そのあとFacebookで集客をしてみて、うまくいかなかったのならやり方をちょっと変えればいいだけです。そういう戦略の変更は簡単にできますが、最初のコンセプトをまちがってしまうと難しいということはわかっておいた方がいいと思います」
― 佐藤さんは、本書のなかで「今の時代は新規獲得よりも、リピーターをいかに作るかが重要」ということをおっしゃっていましたが、それも最初のコンセプトができていればうまくいくのでしょうか。
佐藤 「リピーターこそコンセプトが大事です。ラーメン屋さんであれば、リピーターを増やす戦略をしっかりとれていても、味が普通のどこにでもある味だったら、あまりリピートしたくはなりませんよね。
売り上がっている会社は何が違うかというと、程度はあるにせよ商品やサービスに“稀少性”があるんですよ。それがなくなった時点でマーケットから消えていきます。
じゃあ、“稀少性”のある商品・サービスがあるという前提で、どうすればリピーターを作れるかといったら、それはもう単純な話で接触頻度を保つしかありません。
人はあなたが思うほどあなたのことを覚えていてくれません。そんな中で事業をしている人がやらなければいけないのは、“忘れられないためにどんな行動をとるか”ということだけなんです。
Facebookを使えば、たとえDMもメルマガも出せなかったとしても、定期的に自分たちの情報を投げていくことができますし、それを見た顧客と“いいね”などでコミュニケーシィオンを取ることもできます。こんなことは従来のリピーター戦略ではありえなかったわけです。せいぜい顧客の誕生日だけメッセージカードを送るとか、年賀状を出すとか、そのくらいでしたし、それだってすごく人的コストがかかることでした。そのコストをかけずに年賀状や誕生日カードよりも効果があがるリピーター戦略がFacebookでありソーシャルメディアなんです。だから、稀少性を持っている会社・個人であれば、こういった戦略は、やるだけで売り上げが上がるはずです」
― 本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか。
佐藤 「僕はもっとみんなにマーケティングの考え方を持っていてほしいと思っています。この本は、最初は中小企業向けのソーシャルメディア活用法だったんですけど、途中から中小企業だけではなく、サラリーマンの方や大学生や主婦の方にもマーケティングの考え方や方法を知ってほしいと思って、章を書き足したり、書き直したりしました。
これからはもう誰かが食べさせてくれる時代ではなくなっていきます。勤めている会社が30年40年と面倒を見てくれるわけではありませんし、国だってどうだかわかりません。
じゃあどうするかというと、せいぜい“資格を取りましょう”と言われるくらいです。でも、“この資格を取ったら安心ですよ”っていう誰かの言葉だけを信じて稀少性のない資格を勉強している人が世の中にはたくさんいます。今さら税理士の資格を取ってどうするんですか。税理士の資格を取ったけど食べていけないっていう人が僕のところに何人も相談に来ているのに。
自分の価値をどう作っていくか、どうやって自分に“稀少性”を持たせるかっていうことは、教科書には書いてありません。だからこそ若いうちから自分の頭で考えてほしいですし、そのためにも、これからはみんなが経営者の感覚や、マーケティングの考え方を持っておくことが必要なのではないかと思っています。経営者だけでなく、普通のサラリーマンの方、学生の方にも読んでいただきたいです」
― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いします。
佐藤 「この本ではマーケティングの手法とともに、僕が経営者としてやってきた10年間で得た経験をみなさんが一番理解しやすい形で紹介したいと思っていました。
社会が大きく変化し続けているなかで、それに適応できれば社会にも政府にも会社にも依存することなく豊かに生きられるのではないかと思います。僕自身もそれに適応していきたいですし、一人でも適応できる人が増えてほしい。この本がその助けになればいいですね。
あとは、マーケティングは決して難しいことではないということもわかってほしいです。この本で書いたマーケティングの考え方が身につけば、Facebookだけではなくどんなマーケティングでもうまくいくはずです。この不器用な僕でもできたんですから、みなさんが使えばもっと大きな成果を出せると思います」