だれかに話したくなる本の話

ユニーク商品でシェア1位 後発傘メーカーが大事にする仕事の哲学

雨の日の必需品といえば「傘」である。家に傘が一本もないという人はかなり珍しいのではないだろうか。

実は、日本は世界有数の「傘大国」である。数百円から千円程度で手に入り、サイズも形もデザインも豊富。さらに、あまり知られていないだろうが、年間の販売本数は約1億をゆうに超えるという。

ヨーロッパと比べてみると、違いはあきらかだ。ヨーロッパでは傘は値段が高いため使い捨てにする文化がなく、一度買ったら長く愛用する。そのせいか店頭に置いている傘の種類は、日本と比べるとかなり少ない。これは他の地域でも同様で、日本に来た外国人観光客に人気の土産物として、安価で品質が良く、バリエーション豊かな日本の傘は密かな人気となっている。

■後発の傘メーカーがトップを取れたワケ

この日本の傘文化の担い手の一つが、現在国内で最大のシェアを占める「ウォーターフロント」である。

薄さわずか2.5cmの折り畳み傘「ポケフラット」や、直径3.5cmと極細の「ぺん細」、そして骨が24本入っている丈夫な「24本骨」などの名物傘は、使ったことがある人、使っている人はきっと多いはずだ。

しかし「ウォーターフロント」は、傘メーカーとしては後発。
なぜ既存メーカーを追い抜いて、業界シェアを拡大することができたのだろうか。

■「傘は雨の日に買うもの」という概念を変えた

『晴れの日に、傘を売る。waterfront(ウォーターフロント) 支持率ナンバーワンの傘を生んだ「良品薄利」の経営』(林秀信著、CCCメディアハウス刊)には、快進撃を続けるウォーターフロントの秘密に迫る一冊。

キーワードはタイトルそのまま「晴れの日に、傘を売る。」である。
本来傘は雨の日に買うもの。そして、日傘は別として、傘とは雨を防ぐものである。つまり、あくまで実用的なものなのだ。

ウォーターフロントが目をつけたのはこの点である。つまり、実用一辺倒・機能一辺倒ではなく、傘を楽しく、華やいだ気持ちになるものに変えることができれば、雨の日だけではなく、晴れの日の買い物でも、そしてギフトや土産物としても買いたくなる傘になるのではないかと考えたのだ。

もちろん、これは「言うは易し行うは難し」の挑戦である。
本書では、これを達成するための取り組みを明かしているが、ここには近道はないのが実情だ。

・高品質・低価格を実現するための工夫
・ユーザーが欲しがる傘を徹底追及する開発姿勢
・小売店が「売りたくなる」関係づくり

どれも当たり前のことではあるが、これを実直に、地道にやってきたのがウォーターフロントの強み。その日々の取り組みに、本書の多くのページが割かれている。

これらの取り組みが商品として結実したのが「絶対に折れない傘」や、水分を多く含む富山県の雪対策のために開発された「富山サンダー」、鹿児島県の火山、桜島の降灰への配慮がデザインに込められた「桜島ファイヤー」など、ユニークで地域の特性に合わせたデザインの傘である。どんなに凝ったつくりでも価格は高くても3000円。「品質を保ちつつ、気軽に変える値段に」は絶対に譲れないこだわりだという。

モノを売るにはマーケティングも重要だが、はじめに来るのはやはり商品だ。
商品に力があれば、噂は広がり、遠くからでもバイヤーが買い付けに来る。ではどうすれば、ユーザーの心に刺さる商品を作ることができるのか。傘を使う人の心理をどうとらえればいいのか。

本書で自身の哲学とアイデアの源を語る、社長の林秀信氏の言葉からは、「顧客心理に立つ」ことの本当の意味が読み取れるはずだ。そしてそれは、どんな仕事、どんな業種でも関係ない普遍的な学びとなるだろう。

(新刊JP編集部)

晴れの日に、傘を売る。 waterfront(ウォーターフロント) 支持率ナンバーワンの傘を生んだ「良品薄利」の経営

晴れの日に、傘を売る。 waterfront(ウォーターフロント) 支持率ナンバーワンの傘を生んだ「良品薄利」の経営

従業員30人強の小さな傘メーカーの挑戦。

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