お金まわりが不安な中小経営者のパートナー「社外CFO」に必要な7つのマインドとは?
会社で経理をやっていたり、簿記やビジネス会計の勉強をしていたりと、企業にまつわるお金の知識を多少なりとも持っている人は少なくないだろう。「そんなに専門的なことまではわからない」という人であっても、その知識をもとにキャリアを飛躍させるチャンスがある。
『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法(長友大典著、すばる舎)が提示するのは、中小企業の財務のプロになり、「社外CFO(最高財務責任者)」として活躍していく道だ。
■「お金周りの知識がない」ことが不安な中小企業経営者たち
本書によると、株式上場を目指していない中小企業の経営者には、経営に必要な会計や財務の知識を持っていない人も多く、そのことを不安に思っているケースが少なくないという。そんな経営者のアドバイザーとして、投資判断の際に助言をしたり、資金調達をしやすくするために金融機関とのリレーションを作るのが「社外CFO」の主な役割となる。
「自分にできるのか?」と思うかもしれない。しかし、多くの中小企業経営者は、あなたよりもさらにお金周りの知識がない。会計や財務を学んでいる人の中で秀でるのは大変だが、彼らよりもお金に詳しくなることは、さほど難しくないだろう。そして、社長たちが本音を話しやすいように、「上手な聞き役」になることができれば、社外CFOは務まるという。
■社外CFOの仕事と高額報酬の理由
ただ、簿記や会計を学んだ人がもっているお金の知識と、社外CFOに求められるお金の知識には若干の違いがある。簿記も会計も、やることは「企業が過去に行ったことの整理」だが、CFOに求められるのは「企業の未来の戦略を作ること」だからである。
もちろん、税金や会計についての知識はあるにこしたことはない。しかし、それらはCFOが担う「財務」とは性質が違う。これが会計や経理の特別な資格がなくても社外CFOが務まり、なおかつ成果によっては月額50万円にもなるという高額な報酬を得られる理由だ。税理士は単なる税務のアウトソース先だが、社外CFOは「社長の参謀」なのだ。
■社外CFOが身につけるべき7つの投資判断の考え方
「社長のよき参謀」となるために必要なのは税務や会計の知識ではない。社外CFOに求められるのは、前述のように経営者が本音を話しやすい関係を築くコミュニケーション能力、そして投資を検討する社長に向けて適切なアドバイスをする能力である。 本書では「投資判断の際のアドバイス」を正しく行うための「財務の7マインド®」を紹介している。
(1)社長のゴールとスタート(時に描いたゴール)、「EXIT(退き方)」「3年後のゴール」と「創業時の想い」を確認する……社長が進みたい方向を正確に把握し続けること。この確認を怠ると、気づかないうちに本来望んでいなかったゴールにたどり着いてしまう。
(2)常に投資を検討する手助けをする……企業は「現状維持」を目指すと衰退してしまう。事業がうまくいっている時でも、現状に満足せずに「次の手」を考えるサポートをする。
(3)「投資」と「費用」の定義を社長と揃える……何が「投資」で何が「費用」なのかの定義を明確にしておく。
(4)投資に前のめりになっている社長の代わりに客観視する……社長が検討している投資が「いい投資(会社全体に波及効果がある投資)」か「悪い投資(会社の一部だけが良くなり、他の部分にはマイナスになる投資)」かを判断し、悪い投資であれば指摘する。
(5)「儲かったお金」と「借りたお金」で投資を加速させる……「税金がもったいないから」と経費で利益を圧縮しがちな経営者に対し、成長への投資を促す。
(6)過去の決算書で判断せずに未来の資金計画で投資の判断をする……決算資料(過去)だけを見ずに「未来のお金の動き」を予測する。
(7)計画は最悪を想定し、事前に資金調達などの対策を行う……事業のリスクを把握し、資金繰りに余裕がある段階で資金調達をしておく。
これらの7つのマインドはどれも簡単に身につくものではない。しかし、逆に会計や税務の知識が人並みでも身につけることができるものでもある。本書ではこれらのマインドの身につけ方についても詳述している。
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社外CFOとしての投資判断力の磨き方はもちろん、顧客となる経営者との知り合い方や、自身の売り込み方、そして報酬の決め方など、本書では社外CFOとして活動していくために必要な知識を余すところなく解説していく。
企業に勤めながら自身の知識を生かせる副業を探している人や独立したい人にとっても「社外CFO」はチャレンジしてみる価値のある道である。自分にできそうな仕事かどうかを判断する意味でも、手に取って損はない一冊である。
