投資で利益を出すために日本人が捨てるべき「デフレ脳」とは?
賃金が思うように上がらず、将来が不安、となると必然的に目が行くのが「投資」である。折しも「つみたてNISA」、「新NISA」がスタートしたことで、投資はこれまでよりもはるかに身近になっている。
しかし、投資とは常に損をする可能性をはらむもの。それを考えるとなかなか始められず、先延ばしにしている人も多いのではないか。『そろそろ投資をはじめたい。』(渡部清二著、サンマーク出版刊)は投資をためらう人の背中を押す一冊だ。
正体のわからない不安におびえるくらいなら、この本を読んでその不安の正体をつきとめるべきだ。今回は著者の渡部清二さんにお話をうかがい、渡部さんが今こそ投資を始めるタイミングだと考える理由や株式投資の注意点、情報収集源とその活用などについて語っていただいた。
■投資で利益を出すために日本人が捨てるべき「デフレ脳」とは?
――本の中でも触れられていましたが、今は国が旗を振って国民の資産を投資に振り向けようとしている状況だといえます。渡部さんが「今こそ投資を始めるタイミング」と考える理由について改めてお伺いできればと思います。
渡部:まず、つみたてNISA、新NISAなどが国に制度としてできたというのは、かなり大きな動きといえます。その前に国が旗を振って国民に投資をさせるように制度を作ったのは1951年の投資信託制度発足までさかのぼらないといけません。国民の資産を投資に向ける制度ができたという意味では、当時と同じような大きな転換点にあるというのが、今投資を始めるべきと考える理由の一つです。
――逆に「国が旗を振って進めている政策に安易に乗っかるのは危ない」といって警鐘を鳴らしている人もいますし、「日経平均は3000円になる」と言う人、「今はバブルの只中だからNISAには手を出すな」という人もいます。国の言い分とこうした言い分とどちらを信じていいのかわからないのが投資をためらっている多くの人の心情だと思うのですが、こういう人にアドバイスをするとしたらどんな言葉をかけますか?
渡部:これは日本の金融教育が足りないことに起因している現象だと思います。こういう意見に動揺してしまうのだとしたら、それは株価が下がるという発想がなかったということの裏返しでしょう。
私は日経平均が3000円になるというのはありえないと思います。また「3000円になるからやめておきなさい」というのは、私に言わせると自分の国がダメになるのを助長するような話です。もし本当に日経平均が3000円になったらどんな人の生活レベルも下がりますよ。それならばこそ、尚更投資が必要でしょう。
――日本人がこれまで投資に積極的になれなかった理由として本書で「デフレ脳」を挙げておられます。デフレ脳は投資の大敵だとされていましたが、ついつい成長性よりも価格で買う銘柄を決めてしまう、という行動は、デフレ時代に節約を美徳してきた日本人的だなと感じました。デフレ脳から抜け出すためにはどんな考え方の転換が必要になりますか?
渡部:これまでは経済がデフレでしたから、理屈上は個人が資産を現金で持っておくのは正しかったんですよ。しかし、今は30年間続いたデフレが終わりつつあって、インフレに転換する局面です。この世の中の変化を肌で感じてほしいというのはありますね。
わかりやすい話をすると、私は今の日本は大不況だと思っています。なぜかというとあらゆるものの物価が上がっているからです。モノが値上がりしているのは誰しもが感じていることですよね。でも、この現象ってこれまでもあったかというと、少なくともこの30年間はなかったんです。
これまでなかったことが今起きている、ということは世の中が変わっているんだと捉えるべきで、物価が上がっているけど給料はどうなのか、給料も上がっているならいいけれど、これをインフレと呼ぶなら、どんな行動を取ればいいのか、と突き詰めて考えていくことが必要だと思っています。
――本書では個別株への投資についても詳しく解説されていました。個別株の値動きは相場の局面に影響されやすいとも聞きますが、今の日本の株式相場は株式投資を始めるタイミングとしてはいい局面なのでしょうか?
渡部:そう思います。というのも、私は30年くらい先をイメージして行動しているのですが、日経平均株価はこの先100万円くらいになってもおかしくないと考えています。長いスパン見れば今4万円が3万円に下がったといっても誤差に過ぎません。
――なぜ日本の株価がそこまで上がるとお考えなのでしょうか?
渡部:これは歴史を紐解くと見えてきます。バブルが崩壊する直前の1989年は、日本企業の時価総額は世界一でした。その後時価総額でいうと8割下がりました。アメリカはどうかというと1989年と比べると時価総額は10倍以上になっています。
この時と今はすごく似ています。1989年の時価総額トップ10のうち9社は日本企業でした。今は逆に9社がアメリカ企業です。そして今日本がデフレからインフレに転換したということで、また世界経済の流れが逆転する時期なのだと考えています。
――相場の流れを理解するには歴史を理解する必要があるということですね。
渡部:長期的な視点は絶対に必要です。ただ、こと株式投資の話になると、ほとんどの人は短期的な視点しか持ち合わせていないように思います。今の世界経済の中での日本の立ち位置はおかしいですよ。それが正しい位置に戻るタイミングが今なんだと思います。
(後編につづく)