だれかに話したくなる本の話

中小企業経営者が知るべき「人事評価制度・報酬制度」が失敗する理由と改善策とは

経営者は自社の業績が上がるように日々努力しているし、そこで働く社員は、会社の業績を上げることで、自分のキャリアが磨かれ、最終的に稼ぐお金となって反映されることを願っている。

両者のベクトルを合わせることで、会社側もそこで働く側も幸せになることができる。そのひとつの手段が「人事評価制度・報酬制度」である。

大企業ではあたりまえのように存在する人事評価制度も、中小企業では存在していなかったり、機能していないことが少なくない。社員のボーナスが社長のさじ加減一つで決まる会社は珍しくないのだ。

◾️失敗する人事評価制度の5つの特徴

冒頭で述べたように、人事評価制度・報酬制度は特に中小企業において業績を飛躍させ、社員に努力の方向性を示し、モチベーションを与えうるもの。『小さな会社が劇的にかわる すごい人事評価・報酬制度のつくり方』(金村秀一著、産業能率大学出版部刊)は中小企業向けに人事評価制度を導入すべき理由とその効果、そして導入の手順を解説していく一冊だ。

人事評価制度・報酬制度は導入さえすれば会社がうまく回り出すというものではない。ただ、本書では「目的を履き違えて人事評価制度を社内に導入することで、混乱を巻き起こし、取り返しがつかなくなる」として、その導入の仕方に警鐘を鳴らしている。

本書によると、失敗する人事評価制度とはこのような特徴がある。 ・複雑すぎる…導入はしてみたものの制度が複雑すぎて経営者もよくわかっていない状態。当然、従業員もどんな成果をあげて、どんな努力をすればいいのかがわかっていない。

・手間がかかる…リソースが少なすぎて人事評価制度の運用コストが大きな負担になっている。

・不満要素になる…評価基準が明確でなかったり、評価にばらつきがあったりして、評価される側の納得感がない。

・評価者のスキル不足…管理職側に人事評価制度を運用する専門スキルがない。

・評価項目が絶対評価…「○○ができる、できない」といったスキル型の評価をしてしまうことで、勤続年数が長い従業員が評価を得やすくなり、実質的に「年功序列」に近づいてしまう。

いずれの項目も、中小企業でありがちな事例であり、人事評価制度・報酬制度導入を成功させるにはこれらの事態に陥るのを避けることが必要だと言えるだろう。つまり、「シンプルに、評価基準は明確に、絶対評価でなく相対評価に」ということだ。本書ではこれらを兼ね備えた人事評価制度・報酬制度の作り方を解説していく。

一方で、「手間がかかる」「評価者のスキル不足」は、「リソース不足」という中小企業には如何ともしがたい点が原因になっている。人事部を持たない企業が多いため、人事評価制度・報酬制度を専門的に運用する部署がないのである。この難題に対して、本書が提示している回答は、多くの中小企業経営者にとって発見となるはずだ。

人事評価制度・報酬制度が機能することで、社員はモチベーション高く仕事に邁進でき、優秀な人材が育ち、定着する。結果として業績が上がり、外部からも人材が集まってくるようになる。中小企業につきものの「採用の悩み」から解放されるだけでなく組織全体を成長軌道に乗せることができる。そのノウハウを示した本書は、中小企業の経営者が誰しも夢見る理想の会社を作るための最初の一歩となる一冊だ。

(了)

小さな会社が劇的にかわる すごい人事評価・報酬制度のつくり方

小さな会社が劇的にかわる すごい人事評価・報酬制度のつくり方

小さな会社で人事評価制度が失敗に終わる理由の第1位。それは制度が「複雑すぎる」こと。
専門家が作った人事評価制度は複雑で、小さな会社では社員はもちろん導入を決定した社長までも、何をどうすれば評価されるかが曖昧でわかりづらい。

この本で紹介する方法は、A3用紙の人事評価シート、たった1枚で完結するシンプルでわかりやすいもの。そのため、社員はどうすれば給料が上がるのか、賞与が増えるのか、昇進できるのかきっちりとわかり、それに向かって努力できる。

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