だれかに話したくなる本の話

「介護のプロ」が説く自宅介護を止めたほうがいい決定的な理由

超高齢化社会で、多くの日本人にとって「親族の介護」はもはや他人事では済まされない時代です。「自分の親族を、どの介護施設に入れたらいいのか迷う」という現実にぶつかっている方もいるでしょう。

その一方で、多くの方が望むのが「自宅介護」です。
たとえ病気や認知症などが進んだとしても、できる限り住み慣れた家で家族と一緒に過ごしてもらいたいと思うのは、人の情として当然のことです。しかし、自宅介護の現実を知るプロの目から見たら、あまりいい選択ではないようです。

『70歳の新人施設長が見た 介護施設で本当にあったとても素敵な話』(アスコム刊)の著者で、岩手県の「介護保険施設 老健たきざわ」の施設長を務める川村隆枝さんは、介護施設にまつわる誤解を解くとともに、自身が今は亡き夫の介護に携わった経験をふまえ、介護をプロの手に任せることの利点を説いています。

■介護施設は「姥捨て山」ではない

近年、介護施設における虐待などがニュースになる機会もあり親族を施設に預けることに一抹の不安を覚える方もいるかもしれません。

しかし、そうしたケースはあくまで一部です。多くの介護施設ではスタッフがプロとして、お年寄りの気持ちになって親身にお世話をしています。「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる」という例え話のとおりです。

川村さんが施設長を務める「老健たきざわ」では、普段の医療的なケアはもちろん、食事にも最大限気を遣い、栄養価だけでなく美味しさも保っています。季節に合わせて、ひな祭りのちらし寿司やクリスマスケーキもあるとのこと。施設の食事は味気ないイメージがありますが、それは昔の話とのこと。

また一年を通してイベントも行われています。
お花見や、雪見、海などの行事があり、車いすのお年寄りならばスタッフと一緒に外出もできたり、コロナで中止になった地域の祭り「チャグチャグ馬コ」を、スタッフが馬の被り物をして施設内で臨時開催した時は、入所者一同大盛り上りだったそう。

スタッフの気配りも細やかで、一例を挙げると、年とともにイライラしやすくなったあるお年寄りのために、その人が若い頃大好きだった音楽を家族に相談して、わざわざ取り寄せたのです。音楽を部屋の中で流すと、そのお年寄りはだんだんと気持ちがおだやかになり、周囲に当り散らすこともなくなったといいます。

■悲惨な結果を招きやすい「自宅介護」の現実

一方で、川村さんは、自宅介護は、介護する方、される方の双方を幸せにしないと語ります。
全介助、または一部介助が必要な高齢者を自宅介護するとなると、付きっきりで側にいない限り、食生活は不規則となり、入浴も不十分になりやすくなります。低栄養と不潔な環境は免疫力を低下させ、場合によっては生命を脅かしかねません。とても一人の手に負えるものではないというのが現実。

これが、川村さんが、かつて夫の介護で精神的、肉体的に追い詰められた経験から導き出したアドバイスなのです。

もしも、あなたが病気をしたとき、軽い風邪でもない限り「家庭の医学」を読みながら自宅で療養はしないはず。ほとんどの人は病院に行くでしょう。介護施設に入るのはそれと同じようなものです。

施設への入所をことさら大げさに考えるのではなくベストな選択をすべきだと、川村さんの著書は教えてくれます。

(新刊JP編集部)

70歳の新人施設長が見た 介護施設で本当にあったとても素敵な話

70歳の新人施設長が見た 介護施設で本当にあったとても素敵な話

もはや、介護は誰にとっても他人事ではない時代です。例えば、親の面倒を施設に任せることになった場合一抹の不安や、罪の意識を覚える人もいるでしょう。しかし老人介護施設が「本当」はどんな場所かご存知でしょうか。悲惨な部分が切り取られたマスコミの報道などを基にしたイメージだけで判断していませんか。このエッセイには、介護施設の「本当」の姿が書かれています。それは、笑顔と思いやりがあふれる、とても「素敵」な空間なのです。

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