新刊ラジオ第1502回 「運命を拓きゆく者へ 理想を携え、道は一歩ずつ」
本書は、新渡戸稲造さんの著書『修養』『世渡りの道』『人生読本』から、自己啓発をテーマに精選し、平易な表現にしてまとめたものです。明治・大正の人々に大きな感化を与え、今も色あせない、新渡戸稲造さんの教訓や金言は、ビジネスパーソンの成長、自己鍛錬について考えるきっかけに最適です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
今年の一冊目はこちらです〜!
あけましておめでとうございます! 今年も良い本をたくさん紹介していきますね!! よろしくお願いします。
さて、今日は、旧五千円札の顔、新渡戸稲造さんの本です。
本書の概要 本書は、新渡戸稲造さんの著書『修養』(1911年刊)『世渡りの道』(1912年刊)『人生読本』(1934年刊)から、自己啓発をテーマに、実業之日本社編集部が項目を精選し、平易な表現にして一冊にまとめたものです。巻末には、新渡戸稲造さんが初代学長を務めた、東京女子大学第一回卒業証書授与式の学長祝辞「ジュネーブ湖畔より」が収録されています。
佐々木恒夫さん(『そうか、君は課長になったのか。』 著者) が、「発刊に寄せて」というメッセージを寄せています。佐々木さんは、「最近では、私のことを『ビジネスマンのメンターおじさん』と呼ぶ人もいますが、さしずめ新渡戸稲造先生は、『百年前の偉大なメンターおじさん』だったのかもしれません」ということを書いていました。
まさに本書にまとめられている内容は、ビジネスパーソンや、ビジネスリーダーの成長に繋がるような教訓や金言で、新渡戸さんの言葉をきっかけに、自分の働き方や、 人生の生き方、部下、同僚とのコミュニケーションのとり方など、いわゆる“自己鍛錬”について考えられるようになっています。
文久に生まれ明治を生きた人ですから、格調高くない? と思われるかもしれませんが、文体は読みやすくなおされていますし、どこか“俗っぽい”というか……実学的であり、誤解を招く言い方かもしれませんが、“あるある”なんですね。
たとえば、こんな箇所があります。
8章「どうしようもない怒りへの対処より」から
経営者はもちろん、部長、課長、そして、チームリーダーには、株主や上司からのしかかってくる「責任」がありますね。すると、部下のちょっとしたミスが許せないときって、あるんじゃないでしょうか??
余裕があるときであれば、「まぁしかたない…」と思えても、それが忙しい時期や大切な時期、期末などプレッシャーのかかっている時期だったら?
「お前は何やってんだよ!!!(怒)」 …なんて、爆発しちゃうこともあるのでは?
「百日の説法屁一つ」(長い間努力して取り組んできたことが、最後のわずかな失敗でむだになることのたとえ)なんていいますが、努力して積み上げたものも、たった一時の怒りのために、台無しになってしまうこともあります。「怒り」の感情は危険な感情で、そしてコントロールが難しいのです。
そこで新渡戸さんは、「怒りに打ち勝つ八つの方法」として、このようなことをあげています。
● 他のことで紛らす ● 思い切り発散する ● 相手を馬鹿扱いする ● 相手を可哀そうな奴だと思う ● 自分が悪かったと思う ● 怒らない修練を積む ● 反省表をつくる ● 他力にすがる
どうでしょうか?(俗っぽいというか、人間的で実学的しょう?)
品のいい方法もあれば、子どもじみた方法もありますね(笑)。しかし、新渡戸さんは、「だが、怒りの抑制に対しては、そんな方法でさえも、実際、役立つことがあるのである」と言います。
責任の重いリーダーなら、この気持ち、わかるはずです。 怒りのコントロールは、本当に難しいのです。
新渡戸さんは、「怒りに打ち勝つ八つの方法」として、具体的な気持ちの切り替え方や、習慣を書いていますが、「いずれにせよ、僕があげた方法に拘泥せずに各自工夫を凝らしてもらいたい」としています。
怒りが湧き上がると、どうしても冷静でいられなくなりますし、たとえそれが義憤であったとしても、周りに良い影響を与えることは稀の稀です。 大切なのは、制しようと決心することなのです(そのための方法を新渡戸さんが考えた結果、ああいう八項目になったのでしょう)。
13章「人生の目的はどこにある」から
ある夕方、外出の支度をしていたら、三人の生徒が「二十分ばかりお時間をいただきたい」と尋ねてきたそうです。
学生たちの話では、 「自分たちは大学での生活を昨日で終え、学士の称号を受け、いよいよ社会に出ることになった。それで今後はいかなる目的で進むべきか人生の目的とはなにかが大問題になり、三人で一晩中議論を交わした。しかし、結局目的は何もないということになり、論じれば論じるほどわからなくなり、先生の御説をうかがいたくて来た」と。
新渡戸さんは、まず(こんな大問題を僅か二、三十分で解決しようとするのか)と驚き、(そういえば釈迦は四十年間説教し、孔子も数十年間道を説き、キリストはわずか三年とはいえ毎日のように説教活動をしたものだ…)なんて思考をめぐらせながら、出かける予定をキャンセルし、数時間、青年たちと話したのです。
ここでは、次のような言葉が並べられ、それぞれについて語られています。
遠大なる問題を解くには、目の前の問いから始める。 世間の評価が偉大さを決めるわけではない。 世を恨み、天を恨み、自分を恨む愚かしさ 結局、原因は自分にある 己れの義務を完全に成し遂げることが天命
もしかしたら新渡戸さんは、青年たちが考える「人生の目的」とは、「世にでることや、偉くなること、世間から注目されることでなければならない」というような硬直的な観念に支配されているのではないかと感じたのかもしれません。
当然、「人生の目的」なんて、そうやすやすわかるもんじゃあありません。 ですから新渡戸さんは、「まず目の前を問いかけよ」と、大上段に構えた頭をほぐし、君は世間のために生きるのか?と諭す。そして、「まずは、君が人生の義務と目的を理解する道に進むことができるかどうか、話はそれからだ」と話をするわけです。
さて、面白くなってきました。
新渡戸稲造の説教「君は人生の目的を“知る”道に進めるか」
ご興味が沸きましたら、ぜひ本屋さんへ。
まとめ
全体を通して、実学的で面白い一冊です。 実業之日本社の編集さんたちが、読みやすいように平易な文体でまとめて下さっているのがありがたいです。原文で読むのは慣れてないから、ちょっと大変かな……という方は、ぜひこちらの本で読んでみてください。
ちなみに、前作の『逆境を越えてゆく者へ』(実業之日本社/2011年7月刊行)は、 新渡戸稲造さんの原著 『修養』と、『自警』の2冊から、「苦難の時をいかに生きるか」をテーマに項目を精選し、現代仮名遣いで読みやすく編纂された本です。 テーマが、「苦難の時をいかに生きるか」ということもあり、被災地域の方たちにもぜひ手にして頂きたい1冊です。 どちらもとてもポジティブになれる本です。合わせてオススメしたいと思います。
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