新刊ラジオ第1459回 「ガンでもくじけない ―誰かのために生きること―」
「ろ胞性リンパ腫」と告知されたSOPHIAのキーボーディスト、都啓一。自覚症状も、痛みもなく、ツアー前に何気なく行った病院で、悪性のガン、それも末期だと告げられます。つらい抗がん剤治療、再発の恐怖と闘いながらも、メンバー、ファン、スタッフ、家族に支えながら生きていく姿を描いていきます。「生きることの素晴らしさ」、都さんの熱いメッセージが込められた一冊です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
SOPHIAキーボーディストの闘病記
自分だけは大きな病気にならない、死なない。なぜかそんな風に思っていませんか? しかし、「死」は必ずだれもが平等にやってくるものです。 今日は、「生きていること」「健康であること」がどんなに大切なことなのか、あらためて気付かされる一冊をご紹介します。
●著者プロフィール 著者の都啓一(みやこ・けいいち)さんは、1971年10月6日、兵庫県生まれ。1995年、SOPHIAのキーボーディストとしてメジャーデビュー。 2010年、新しいロックバンド、Rayflowerを結成。同年、デビュー15周年を記念したSOPHIAの全国ツアー直前に、「ろ胞性リンパ腫」が判明します。ツアー終了後、SOPHIAは活動休止。闘病生活の末、2011年、寛解(かんかい)との診断を受けます。 2011年7月には、SOPHIAの再始動シングルをリリース、8月には日本武道会でSOPHIAとして復活ライブを成功させました。
本書は都さんの闘病生活を綴ったものです。自覚症状も、痛みもなく、ツアー前に何気なく行った病院で、「悪性リンパ腫」の疑いがあると言われたそうです。都さんは、常日頃から体調管理にはとても気を使っていました。健康診断を毎年受け、体の調子がおかしくなったらすぐに相談にのってくれる内科専用のホームドクターもいたそうです。そして、その先生には毎年ツアーが始まる前に、ツアー中に何かあってはいけないと、必ず検査をしてもらっていました。
しかし、2010年ツアーの直前。
ツアー直前に告げられた病名
2010年2月のツアー直前。今回もいつものようにその先生の病院に行きました。そのときも、体調に関して気になるところはなかったそうです。ただ、左足の太ももの付け根にできていた「しこり」を相談しました。病院の先生も、しこりを触診したあと、明るく「別にそこまで心配する必要はないでしょう」と言い、「でも、もしかするとリンパの病気かもしれないので、念のため検査をしておきましょう」と、本当に軽い気持ちで、念には念をという感じでの検査でした。
次の日。病院に付くと、すぐにエコー検査をしました。 そのエコーの結果を見たとたんに、先生の態度がちょっと変わりました。そして、「やっぱり気になるから、すぐにMRIをとりましょう」となり、すぐにその場でMRIの予約をとりました。
そのときも都さんは、「まあ、大丈夫やろう」と思っていたそうです。MRIを撮ったあとも、SOPHIAのツアーのリハーサルを通常通り行っていました。その練習中に、都さんの携帯が鳴ります。
電話の相手は、病院の先生でした。 「早急に病院に来て下さい。血液検査をします」
その時の様子を本の中で、都さんはこのように語っています。 「これは、ヤバイな」とすぐ思った。 「家族はどうなるんやろ?SOPHIAのツアー、どないしよう?仕事は?」 きっと普通のことじゃない。どうなるんやろ、どないしよう…。 いろいろなことが頭のなかを一瞬にしてかけめぐった。 そのうちに体が震えだした。 (P12-13より抜粋)
そして様々な検査の結果、病名を告げられました。 『ろ胞性リンパ腫』。
松岡充さんの支え
悪性のリンパ腫というのは、血液のガンで、白血球のうちのリンパ球がガン化して、リンパ節や臓器に腫瘍ができる病気なのだそうです。都さんがかかったのは、年単位でゆっくりと進行していく、「低悪性度」の「ろ胞性リンパ腫」という病型。そのうえ末期の状態でした。
リンパ系の組織というのは全身にあるので、悪性リンパ腫は全身すべての部位で発生する可能性があるのだそうです。都さんは、このときすでに体のあちこちにガンが散らばっていたといいます。先生からは、「ろ胞性リンパ腫」は、よく効く薬があり進行も遅い、しかしこのガンは治ることはなく、ほぼ再発をすると言われたそうです。
そして抗がん剤の治療が始まりました。
その間、都さんは、全国ツアーを行い、ステージに立ちます。 SOPHIAのメンバーやスタッフ、ファンに支えられながら…。
抗がん剤治療のなかでもかなり強い抗がん剤を使った治療。 その辛さは、読んでいるこちら側も辛くなってくるほどです。
本文では、抗がん剤治療の副作用で苦しむ都さんの様子、都さんを支える家族、SOPHIAのヴォーカルでもあり、学生時代からの大親友である松岡充さんの支え、その思いに答えるかのように病気と闘う都さんが描かれています。
生の終着点=死であるということ
都さんはいいます。 「生きていれば、終着点=死がある。そんなことはわかりきっているけれども、実生活でそれを感じながら生きることはない。 けれども、ガンになってそれを感じながら生きるからこそ家族や健康など、身近で当たり前のことを大切にしたいと思う。 そして、「自分がやりたいこと」がより大切に思えてくる。」 (P162より抜粋)
「命には限界がある。それをリアルにわかっている人じゃないと、これはわからないと思う。人間はいつか死ぬ。それが当然のことだと誰もが普通に思っている。 けど、本当なそんな曖昧なものじゃない。 時間は限られていて、生まれたときから人は「死」に向かって生きているのだ。 そのなかで「あと10年しか生きられない。じゃあどうしよう?」って考えたら、選択肢や大事なものはそんなにないはず」 (P164-165より抜粋)
「生きる」ということをあらためて考えさせられる一冊です。
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