だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第552回 「生きてるだけでなぜ悪い?―哲学者と精神科医がすすめる幸せの処方箋」

生きにくいと感じる若者が抱えている、結婚、就職、お金、常識、生きがい、人間関係……などの問題について、哲学博士の中島義道さんと、精神科医の香山リカさんがホンネで語った対談形式の一冊です。社会のルールや常識的にどうだという話ではなく、哲学者と心理学者らしい個性あふれる充実の対談内容です。二人の対談を本を通して聞いてみて、自分はどう生きたらいいのか、自分なりの答えを探してみてください。

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生き辛い私たちの事情

私たちは、「人生」というレールの上に敷かれた数々のイベント…結婚、就職、生活、常識、生きがいといった、色々なものに縛られながら生きています。

節目では大きな判断をしなければなりませんが、そういうときには、決まって大きなストレスやプレッシャーがのしかかってきます。

そのプレッシャーを跳ねのけてこそ、成長し、より良い人生を送れるのかもしれませんが、あまりにうまくいかない日々が続くと、この世界は、本当にがんばる価値があるのだろうか? なんて、悩んでしまうかもしれません。

「生きてるだけでなぜ悪い?」(ビジネス社/刊)は、精神科医・香山リカさんと、哲学博士・中島義道さんが、生き辛さに悩む若者をテーマに、社会を通して語り合った対談本です。

●著者プロフィール 香山リカさんは、精神科医。立教大学現代心理学部の教授として教壇にも立っています。 心理学を語る切り口がユニークで、団塊ジュニア世代を「貧乏くじ世代」と称したのも香山さん。目の付けどころと、言葉の面白さが魅力的な方です。 ※東北大震災被災者に向けて、こちらのサイト(FeBe)でメッセージを送っています。

中島義道さんは、哲学博士。「人生における不幸」をテーマにしたエッセイを主に執筆。 「半隠遁(はんいんとん)」を心情としており、“適度に世界とかかわりながらも、内心において決して死という絶対不幸を忘れず、常に自分の生について考えながら生きつづけている。” 方です。

本書は全編を通して、香山さんと中島さんの対談形式で構成されています。 20代前半〜社会人になって数年未満の男女に向けて、結婚、就職、生活、常識、生きがいといった、現代の若者たちが悩みがちなものについて語り、生き辛さの理由を議論しています。

モテない男と、モテない女はどっちが悲惨?

厚生労働省によると、2005年の平均結婚年齢は、夫29.6歳、妻27.8歳です。 総務省によれば、20歳代から30歳代に向けての未婚化が著しく進んでいるとも言われています。

1章では、現代の若者の悩みのひとつである、“イマドキの結婚”について語っています。 若者たちが結婚について考えるとき、「やっぱりモテないと…」という問題意識が出てくるようです。 社会全体としても、晩婚化は進み、独身貴族が増えています。 その原因のひとつに、「相手がいないこと」があるとすると、「モテ」は、実は大きな問題なのかもしれません。

この問題について、精神科医・香山リカさんと、哲学者・中島義道さんは、「モテない男性と、モテない女性はどっちが悲惨か?」について議論をはじめました。

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中島義道さん モテない女の方がキツいと思う。 一般的に言って、男性は誘う方で、女性は誘われる方。 男は誘うほうだから、誰からも声をかけられなくても、それほど屈辱ではないと思う。

香山リカさん 男性の場合は、知的魅力がなくても、経済的魅力や社会的な地位と引き換えに美女を得ることができます。それに対して、女性は、経済力だけではなかなか男性を得ることはできませんね。 もちろん、女性も知的魅力を手に入れられればよいのですが、どうしても外見的な要素が大きくて、その分、女性の方が大変なのではないかと思いますね。

中島義道さん 今の世の中において、とくに若いときは、家柄やお金ではなく、肉体的魅力と知的魅力が極端に強調されていて、それらが恋愛のひとつの目安になっていると思います。 仮に、生活能力も経済力もないけれど、可愛らしくて優しい人がいたとします。それが男性の場合、結婚相手にはなりませんが、女性であれば、そうではないでしょう。 それが男女の違いです。

香山リカさん 男性と違って、女性はいくら仕事ができて金があっても、ものすごいイケメンが求婚してくれることはあまりないですよね。

中島義道さん 息子が彼女のことを母親に紹介する。「彼女はあまり頭がよくないけれど、可愛らしくて性格が良いんだ」というと、ほとんどの母親は、「あら良いじゃないの」というでしょう。 しかしその逆に、娘が彼氏のことを、「仕事はできないけれど、可愛らしい彼なの」と紹介するのはNGですね。

香山リカさん 私はべつにフェミニストではないけれど、「これからは女性も仕事をするべきです」と言ってる男性に、奥さんはどんな人ですか? と訊くと、「ウチのはバカでまったくだめでね。まぁ、ちょっと可愛げはあるけれど」と言います。 結局のところ、そういう女性が妻の座を得ているんです。

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生きてるだけでなぜ悪い?

本書ではこのように、若者が悩みがちな事象について議論し、社会においてそれはどういう状況にあるのか、原因は何か、これからどうなっていきそうか、など言葉を重ねていきます。

あるべき論でも常識論でもなく、精神科医と哲学者の2人が、それぞれのフィルターを通して見た世の中から感じとったことを、辛らつで思うが侭に語らっています。

取り上げられている内容は以下。

第1章 結婚なんかしなくていい!  やっぱ、モテなきゃダメですか? 第2章 就職なんかしなくていい!  なんのために働くの? 夢がないとだめですか? 第3章 金持ちなんかにならなくていい!  お金がなくても生きていけますか? 第4章 常識なんかなくてもいい!  知識って必要ですか? 人生の目的ってなんですか? 第5章 生きがいなんかなくていい!  生きていると、面白いことがありますか? 第6章 人間関係に悩まなくていい!  人間関係がうまくいくコツは?

読者は、この本に答えを見つけ出そうとするのではなく、2人の議論を通して、自分自身の答えを探し、自分の悩みの原因はどこにあるのか。探していって欲しいと思います。

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生きてるだけでなぜ悪い?―哲学者と精神科医がすすめる幸せの処方箋

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生きてるだけでなぜ悪い?―哲学者と精神科医がすすめる幸せの処方箋

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