新刊ラジオ第1830回 「知らないと取り返しがつかない 不動産投資で陥る55のワナ」
「○○をすれば成功する!」「年収○百万円でも家賃収入○千万円!」このように華々しい成功事例を紹介する不動産投資本とは一線を画し、本書では不動産投資における失敗や投資家が陥ってしまいがちな罠を紹介しています。不動産業界の不透明さを明らかにし、投資のリスク回避指南書としても読める一冊。不動産投資にご興味のある方に特にオススメです。(提供・総合法令出版)
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不動産投資の55の「ワナ」とは?
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
さて、本書はどんな内容なのか?
ざっくり言えば、不動産投資における失敗や、投資家、投資家予備軍の方が陥ってしまいがちな罠を場面別に55例、紹介している本です。
出てくる事例は全て、実際におきたことですので、貴重な情報と言えます。
そして、何故、これが小林さんでなければ書けないのかというと……
小林さん曰く、不動産投資界の現状があまりに不透明であるため、その情報を投資家の方々に公開したかった。
つまり、この本でいう「罠」というのは、業界が普段あまり公開しない情報なのです。
「○○をすれば成功する!」「○○で資産○億円!」というポジティブな情報ではなく、不動産投資にはリスクがあるぞ、と警鐘を鳴らし、正しい不動産投資のやり方、心構えを教えてくる。
そんな本になっています。
ここで、引用してご紹介したい一文があります。
「本書が世に出ることで、一部業者や同業のコンサルタントから反発があるかもしれません。しかし、すべてはこれから投資なさるみなさまのため、不動産業界・不動産投資業界のことが今ひとつわからないみなさまのため、不透明なことが多すぎる不動産投資業界に一石を投じる覚悟をしています。」
本書、はじめに、からの引用ですが、小林さんの覚悟を感じる文章ですね!
僕はこの一文に惚れました!
では、この業界にはどんな不透明な「罠」があるのか?
その一部をここから紹介していきましょう!
◆著者プロフィール 小林大貴さんは、大手不動産デベロッパー「住友不動産」総合職出身の、不動産投資専門コンサルタント。 2012年に独立し、「徹底してお客様一人ひとりと向き合うこと」を信条に、個人個人の目標を大切にする不動産コンサルティングをされている方です。
目標の決め方を間違える罠
【01 目標の決め方を間違える罠】
小林さんは、不動産投資とはきわめて簡単なもの、と言います。
具体的には、不動産投資とは……
まず現実を整理し、目標を設定し、そのギャップを認識し、そのギャップを埋めるための戦略を構築し、戦略を遂行していくための戦術を設定する。
そして、そのPDCAを回していって、どんどん前に進んでいく。
ということだそうです。
なるほど、一般的な企画・経営とフレームワーク的には大差ないということですね。
目標→戦略→戦術という順番で、大きな視点からアプローチし、その手段を細かく現場レベルに落とし込んでいけば良い、と。
確かに、不動産投資をできるほどの資産を築いている方ならば、この位は普段のお仕事でもされていることでしょう。
しかし、ここに一つの落とし穴があるようです。
それは「現実的に達成可能な目標」を間違える、という点。
やはり、投資の世界には投資の世界の常識があります、そこを初心者の方は間違えてしまうのですね。
さらに言えば、巷では「年収○百万円で家賃収入○千万円!」みたいな、甘美な情報が流れているので、そこに騙され、目標設定を見誤ってしまう方も多いのだとか。
これを回避するために、色々な資料を読み、セミナーなどにも参加し、メンターや先輩投資家と無料面談をするなど、様々な視点から情報を集め、急がずにしっかりと自分に合った目標を設定することが肝要なようです。
なお、資料の読み方や、セミナー、先輩投資家の発言をどのように信頼すべきか、は別の項目にて詳しく語られています。
不動産投資を考えている方は、そちらを参考にして下さい。
【12 利回りが正しいかわからない罠】
これは物件の選定段階でのお話。
特に仲介専門業者で管理をやっていないようなところから買う場合に必要な知識です。
小林さんは、仲介専門業者は物件情報を取ってくることや営業や融資に関してはスペシャリストなのですが、管理のスペシャリストではない可能性があると言います。
その結果、仲介業者は明確な理由なく「今と同じ家賃でいけますよ」と言ったり、概要書の想定家賃を調査せずに作って、根拠の乏しい利回りを提示する可能性があるという事です。
これを回避するために必要なのは、物件の利回りの根拠となる賃料は、自分で裏をとる、ということ。
具体的な方法としては、ネットの募集価格と照らし合わせたり、地場業者と大手管理業者から意見を聞いたりすることだそうです。
なるほど、全ての仲介業者がそのように悪質とは限りませんが、仲介業者としての目標が、必ずしも不動産投資家の目標と合致しない可能性は考えておいた方が良いのですね。
自己資金の見せ方の罠
【25 自己資金の見せ方の罠】
さて、皆さん。これはかなり衝撃的な内容です。
心して聞いて下さい。
ここで紹介されるのは、小林さんがこれまで出会った様々な手法の中で、最高のメリットと最悪のデメリットを孕む手法です。
それは不動産投資に必要不可欠な自己資金に関する手法。
まず、自己資金というものは、融資を組むならば物件価格の1割?2割は絶対に必要なものです。
しかし、若い世代のオーナーは、それが難しい場合があります。
1000万円も持っていない、という20代の方は多いことでしょう。
そこをクリアするために、自己資金が十分に無い方はオーバーローンをする必要があります。
ですが、このオーバーローンも全くの無貯金では銀行が引き受けてくれません。
貯金が数百万円も無い方は、不動産投資ができないのです。
ところが、ここを突破する悪魔の手法があるのです!!
それが自己資金書類の改ざん行為。
具体的には、インターネットバンクの残高画像を画像編集ソフトなどで修正し、実際の預金よりも多く見せるという方法!
なるほど、こんな手があったのか! と驚きましたね?。
……アウトです。
どう考えてもアウトです。
どう考えても私文書偽造罪です。
さらに、それで融資を受けてしまったら詐欺罪になります。
小林さんは、この手法について、このように述べます。
『いまだに面談に来るお客様から「こういうやり方を提案された」「こんなことやっても大丈夫なのか?」と聞かれます。私をそれを聞く度に、この業界のモラルを疑います。』
はい、そうです。
絶対にやってはいけません!
小林さんも強く反対しています。
それでも、小林さんが本書にこの手法を載せたのは、こういう悪い提案に耳を貸す方が減ってほしいという思いからだそうです。
小林さんが本書を書かなければ!と思う理由がよく分かりました。
【まとめ】
では、そろそろまとめに入りたいと思います。
本書は、不動産投資における失敗や、投資家・投資家予備軍の方が陥ってしまいがちな罠を場面別に55例、紹介している本です。
第1章「目標設定段階での罠」 第2章「物件選定段階での罠」 第3章「融資打診段階での罠」 第4章「契約?引渡し段階での罠」 第5章「管理段階での罠」 第6章「融資を得た後の罠」 第7章「売却時の罠」
そして番外編として「コンサルタントや不動産投資塾、セミナーの罠」 となっています。
本書は全体を通して、ある程度不動産投資を知っている、あるいは興味がある人に向けて書かれていますので、投資に当たってのマインドや不動産の基礎的な用語については説明が省かれています。
しかしながら、これまであまり世に出ることの無かった、不動産投資の失敗例や罠について幅広く書かれた書籍ですので、不動産投資に関する2冊目の書籍として押さえておきたい一冊です。
世の中には「こうすれば成功する! 儲かる!」と強調する書籍が多いのも事実。
むしろこの本で、投資家は自分で考え、自分で調べなければならないことを肝に銘じておくのがいいのかもしれません。
不動産投資をお考えの方は、ぜひ参考にして下さい!
知らないと取り返しがつかない 不動産投資で陥る55のワナ |