新刊ラジオ第1719回 「比べずにはいられない症候群」
他人が幸せそうに見える。友人が成功を手に入れたように思える。自分だけ何もない、自分は不幸だ、運がない。そんなこと考えて落ち込んでしまったことはありませんか。日常的に起こる様々な出来事にふりまわされて、すぐに自信をなくすことは、もうやめてしまいましょう。そんなことは時間の無駄。必要以上に比べるのをやめたら、きっと心が軽くなるはずです。
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概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
「いいなあ、あの人」
「ズルイよ、あの子ばっかり」
「私はだめだ……」
なーんて思ったことありません? ありますよね。
今日は、そんな他人を羨んだり、嫉妬したりする気持ちから解放されちゃいましょう、という一冊を紹介します。
隣の芝生はよく見えるものです。
でも実際にそんなに隣の芝生は青いのでしょうか。
まわりの人と比べて、自分に対してコンプレックスを抱いてばかりではないですか。
いまの自分の生活に満足している人でさえも、他人との比べ合いはやめられないものなんです。
でも、その比べ合い、やめてみませんか。
きっとすっきりするはずです。
恋愛、結婚、仕事、子供、体型、お金、運、趣味、持ち物、出身大学……、人と比べたくなるものを探し始めたらキリがありません。
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ」
石川啄木の短歌が本の中で紹介されていました。
この短歌が作られたのは明治41年。いまから100年以上も前のことなのです。
この頃、石川啄木は24歳。
北海道の新聞社で働いていた啄木は、「やっぱり作家になりたい」と東京に出てきて、新聞社の校正係の職に就きました。
しかも、このとき結婚しているんです!
若い。才能がある。上京にも成功。結婚している。
これ、誰がどう見たって、「勝ち組」ですよね。
それなのに、啄木はそう思っていなかったのです。
啄木の友人が、東京大学の先生になったとか、新聞社の花形記者になったとか、 ものすごいレベルの高い人と自分を比べて「ほかの人はすごい、自分は負けてしまった」と落ち込むのです。
実際、啄木より、ずっと恵まれていない人、苦しい生活をしていた人もいたはずなのにそこは見えていない。
比べる相手はいつも、自分より幸せな人、うまくいっている人、成功している人。
100年以上前の啄木でさえ、「比べ合い地獄」に陥ってしまっていたのです。
でも、比べる相手は本当に幸せなんでしょうか。完全にうまくいっているのでしょうか。
比べて落ち込む必要があるのでしょうか。
◆著者プロフィール 著者の香山リカさんは、1960年北海道生まれ。 東京医科大学卒業。精神科医。立教大学現代心理学部教授。 豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けています。
比べ会いの法則
本の中では、「比べ合いの法則」がある、といっています。
それは……、
?常に自分より恵まれている人、幸せな人と比べる
?自分も恵まれているかも、幸せかも、ということは目に入らない
?相手は「幸せに見える」というだけで、本当は違うかもしれないなどとは考えられなくなる
?自分がいまの生活に満足していても、「あの人のほうが上」という相手が見つかると、すぐに比べ合いをしてしまう
どうです? どう思います、比べ合うってこと。
比べ合いに時間を費やすのがもったいない、って感じてきませんか。
でも、やめられない。それもまた人間っぽい……とも言えなくもないんですけど。
実際、「羨ましい」という気持ちは、ときには向上心のもとになったりして、いいスパイスになったりもします。
でもそれが行き過ぎると「比べ合い地獄」にまっしぐら。
本の中では、どんな「比べ合い」にハマりやすいのかが、具体例とともに紹介されています。
例えば、「結婚しました年賀状」が届きました。自分は独身、結婚の予定さえもなし。
そんなとき、どう思うでしょうか。
「悔しい」 「羨ましい」 「なんであの子が」 「自分はみじめだ」 「やっぱり自分は駄目なんだ」 「自分は負け組だ」
こんな風に考えてしまいがちですが、その考え、捨てましょう!
その年賀状を出したときが相手の女の人生のピークなのです。
とくに女性にとって結婚は、婚約指輪、ウエディングドレス、結婚式、新婚旅行など、素敵なイベントやグッズがあまりにもたくさんあるので、それを手にできる自分はあたかも人生の勝利者のような気分に酔いしれることができます。
でもそんなパラダイスな瞬間は、決して長くは続きません。
結婚式も新婚旅行も終われば、あとは何十年も長く続く、ごくごく普通の生活。
それどころか、夫の家族や親戚、子供ができればママ友との付き合いなど人間関係の煩わしさが増えるのです。
夫ともいつまでもラブラブでいられるなんて夢のまた夢。
著者の香山さんも友人から「幸せモード全開」の年賀状が届くと、 「あわれみの心」を感じるようになってきたそうです。
「せいぜいいまのうちに勝利者気分を味わい、まわりにも自慢していたほうがいいよ。いまに“ああ、結婚ってこんなに苦しいことだったの?”という日がやってくるかもしれないのだから……」 と思っているんだとか。
精神科医の香山さんのとこにやってくる「悩める女性」のおよそ7割が、「夫との不仲」「姑の無理解」などの結婚に関する問題で苦しんでいるといいます。
「結婚した友人」を羨むのは、時間の無駄無駄。
その他にも、本の中には、 「子どもが産まれましたハガキ」 「恋人や、夫がイケメンな友人」 「スタイルのいい人」 「人づきあいが上手い人」 「仕事で成功している人」 「向上心のある人」 「メンタルの強い人」……、などといった、『比べ合い』にハマりやすい出来事が具体的に紹介されています。
まとめ
では、もう少し、「比べ合い」になりやすい例を紹介しますね。
就職難といわれるこの時代に、せっかく就職できた会社を辞めたいという若者が少なくないのだそうです。
大卒の社会人の3割が3年で退職する、なんていう統計もあるんだとか。
辞めたいその理由、なんだと思います?
キツイから? 賃金が安いから? 休みが取れにくいから?
違うんです。
殆どの人が、「仕事内容が単調でやりがいゼロ」 「自分の意見をきいてもらえず、自分らしく働けない」 といった答えが帰ってくるのだそうです。
入社してまだ数年の若者に、いきなり大きな仕事を任せる会社ってどこにあるんでしょう?
その一方で、香山さんの診療室にくる人には、多くの人に注目されて、期待されることがプレッシャーとなってつらいと言ってくる人もいるのだそうです。
そんな人は、「ほかの人より目立たなくて収入が減っていいから、まず食事や整理整頓など地に足のついた生活をしっかり送りたい」「プレッシャーから解放されたい」と言うのだとか。
結局、人間はないものねだり。
仕事が単調だと、目立ちたい、責任ある仕事がしたい、と思ってしまい、 やりがいのある仕事を任されると、もっと気楽な仕事がしたいと思うものなんですね。
このように本当はただの幻でしかない「やりがい」がどこかにあるはず、と信じてそれを求めて右往左往したり、 「あの人はそれを手に入れてる」と、羨んだり、ねたんだりするのは、なんともむなしいことなのでしょう。
香山さんは、こういいます。
「生きがい」も、「自分らしさ」も、あとになってから、「よく考えてみたら、あのとき感じていたものがそうなのかもしれない」と、ぼんやり気付くようなものなのです。
いま、「やりがい」を感じていないからと言って、決してあせることはないのです。
それどころかもうとっくの昔に手に入っているかもしれません。
もう一度、「私ってホントはやりがいを感じているんじゃないかな」と確認してみることをおすすめします」
どうですか? いまの仕事、本当にやりがいのない仕事ですか?
他の会社と比べたり、他の人と比べたりする必要なんてこれっぽっちもないんです。
このように、人は色々なことで他人と自分を比べてツライ思いをしています。
本の中では、どうすれば他人と自分を比べなくなるのか、 「比べ合い地獄」からの脱出法、「比べ合い地獄」にハマらない法則を教えてくれています。
この「比べ合い地獄」から解放されれば、ココロも軽くなって、明日からあなたも生きやすくなるはずです。
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