新刊ラジオ第1691回 「ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た (単行本) / 通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする (単行本)」
『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』
自分のことを何も覚えてない「ぼく」は、そのことを意識をせずに生活をしていた。
しかし、「ぼく」の前に現れた奇妙な男によって物語は動き出す!
『通り雨は<世界>をまたいで旅をする』
「わたし」は世界を隔てるドアから足を踏み出した。
自分の足だけで世界を渡ることができる「わたし」には任務がある。
この世界には「わたし」が“何をなす者”か知っている人もいるし、知らない人もいる。
現代のミヒャエル・エンデ、沢村凛氏による7年ぶりの書き下ろしファンタジー&16年ぶりの書き下ろしSF!!
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
今回ご紹介する本はですね、なんと2冊。
しかも全く別のジャンルの小説となっておりまして、 『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』は沢村さんにとって7年ぶりとなるファンタジー。
『通り雨は<世界>をまたいで旅をする』はなんと16年ぶりとなるSFなんです。
それが同時発刊されるという、かなり驚きの作家さんなのですが、内容もこれまた素晴らしい。
沢村さんは現代のミヒャエル・エンデと呼んでも過言ではないほど作中の思考実験的な表現が面白く、哲学性のある寓話として読んでみてもいいかもしれませ ん。
また、それだけでなく、これまでの作品では骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常生活のひだを的確に切り取るミステリーなどで様々な世界を表現なさっているんですね。
2冊同時だからといって、内容が薄いということはまったくなく、むしろ、どちらも傑作と呼べるクオリティです。
日本のファンタジー&SF評論家である小谷真理氏や、著作家の永江朗氏、また本読み書店員のみなさんをことごとく唸らせているというお話を耳にしました。
名うての本読みたちがこぞって推薦する内容……納得がいきます。
さて、それでは物語のあらすじについてのご紹介なのですが、今回は『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』の方を中心に見ていきましょう。
この物語の主人公は自分のことを「ぼく」と呼んでいる存在が主人公になります。
「ぼく」は毎日ボールで遊んだり、かげふみなどをして遊び、近くの浜辺で綺麗な夕陽を眺めるという日々を送っていました。
その日々はとても幸福で、つらいことや悲しいことなど何一つありません。
しかし、「ぼく」ふと気になり始めます。
様々な言葉が頭に浮かぶけれど、意味が思い出せない、そして自分がなんなのかが分からない。
そんなとき、「ぼく」の前に奇妙な男が現れます。
その男は「ぼく」に町の出口を聞くのですが、そこ「ぼく」は今いる町以外にも当然、ほかの町があるはずだということを思い出します。
男の話によると「ぼく」がいた場所は<眠りの町>と呼ばれるところだそうで、その後遺症によって違和感が出ているとのこと。
また、男は<旅の仲間>というのをさがして歩き続けており、「ぼく」は旅の仲間ではないと言われます。
自分はいったい何者なのか、旅とはどういうものなのか。
ここからはドラマとなりますので、どうぞ本編をお聴きください。
◆著者プロフィール 沢村さんは、1963年の広島生まれ。 91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。他著に『黄金の王 白銀の王』『瞳の中の大河』『ディーセント・ワーク・ガーディアン』『あやまち』などがあり、『黄金の王 白銀の王』はベストセラーとなっています。
ぼくは<眠りの町>から旅に出た (単行本) | |
通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする (単行本) |