新刊ラジオ第1652回 「パンダをいくらで買いますか? ストーリーで学ぶファイナンスの基礎知識」
パンダ、いくらなら買います?では、そのパンダの価格はどうやって決めるのか分かりますか?身近にあるモノ、サービスの価値から値段を決める仕組み、企業評価までファイナンスの基礎知識を学ぶことができます。難解だと思いがちなファイナンス理論がやさしく丁寧に書かれているので、読み終わるころには高度な概念や手法までもが理解できるようになっていることでしょう。
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概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
題名の「パンダをいくらで買いますか?」を最初に目にしたとき、いったい何が書かれている本なんだろう?と思いました。
パンダを買う?
パンダの飼育方法とか書いてあるのかな?
などと勝手に想像して読み始めたら、なんと!ファイナンスの本でした!
ファイナンスの本というと、耳慣れない用語や、複雑な数式ばかりが出てきて、難しいそうで・・・、と思いがちですよね。
でも、この本では、そんな数字が苦手という人でも抵抗なく読み進めることができて、知識を学ぶことができます。
本のなかでは、「モノやサービスの値段がどう決まるのか」に焦点が当てられています。
身近な出来事を題材に、なじみのある話題から説明が展開されているので、分かりやすく、最後まで読むことができるでしょう。
そのためにも、「パンダをいくらで買いますか?」という投げかけがポイントになっていたのですね。
内容も、概念や用語の説明ばかりではなく、語りかけるような感覚で書かれているので、勉強をする、という感じではなく、話を聞くというような感覚で、ファイナンス理論の考え方が自然に身に付くような構成になっています。
身の回りのモノやサービスの値段、貴重な品物の値段、会社の値段、人間の値段までも、世の中のあらゆるモノを、「お金」という価値に換算して理解していく能力が身についてしまう一冊です。
◆著者プロフィール 著者の野口真人(のぐち・まひと)さんは、 京都大学経済学部卒業後、みずほ銀行に入行、外資系投資銀行を経て、2003年に企業価値評価の専門機関である、株式会社プルータス・コンサルティングを設立。 年間300件以上の企業価値評価を手がけ、トムソン・ロイター社の2013年上半期M&Aのファイナルシャル・アドバイザーリーランキングでは、独立系評価機関として最高位を獲得しました。一般には知られていませんが、金融界では知らない人はいないコンサルティング会社の創設者です。また本業の傍ら、10年以上もMBAスクールで教鞭をとり、教科書を無視した独自の教え方をすることで有名な方です。
パンダをいくらで買うのか
では、まずパンダの値段。
みなさんなら、パンダにいくらの値段をつけますか?
また、いくらならば、パンダを買おうと思いますか?
本の中では、この「パンダを買う」ということを設定してファイナンス理論の第一歩である価値評価の基本的な考えが書かれています。
モノの価値を評価して、「価格」として数値化する作業とはいったいどういうものなのかを、考えていくのです。
さて、そのパンダの値段。
想像してみて下さい。
安くはないことだけはなんとなく想像できますが・・・。
で、具体的な数字となると・・・、1億円? 100億円?
見当さえもつかないっていう人も多いのではないでしょうか。
現実的な答えを言ってしまえば、パンダは国際自然保護連合によって、「絶滅危惧種」に指定されているので、ワシントン条約で商業目的の取引は禁止されています。
なので、売買は不可能、ということになります。
けれど、それでは話しは進まない。
値段のないパンダに無理やりにでも値段をつけるとしたら、どのような方法があるのでしょう。
それが、価値評価という考え方へとつながっていくのです。
パンダの価格を決めるためには、何が必要なのか。
どのようなものを参考にしていけばいいのかといったことが具体的に書かれています。
パンダの価格を考える手段として、ひとつ挙げると、まずパンダの原価を考えます。
パンダを飼育するときにかかる全てのコストを合計して、それに利益をのせた金額が、パンダの値段であると考えてみます。
年間のエサ代、人件費、光熱費、飼育舎のレンタル代、その他もろもろを足して、利益をプラスする。
理屈では、これでパンダ価格が出た。ということになるのでしょうが、実際にはそう簡単なものではないのです。
何故でしょう。
これは、「売り手の都合」だけにもとづいて計算された価格であって、買い手の価値判断を考慮していないからなのだそうです。
「これだけお金をかけたのだから、この値段で買ってください」と言われて、 即決で、「イエス!」という人がはたしているのでしょうか。
すでに相場が決まっているモノでしたらともかく、価格が想像できないモノを売り手の言い値で決まるなんてことはないのです。
では、パンダの値段、どうやって決めればいいのでしょう。
そこで、色々な考え、方法を駆使して決めていかないとならないのです。
が、なんとその方法はなんとイソップ物語の「金の卵を産むガチョウ」という話に隠されているというのです。
このように、ファイナンスの世界で、どのように手段と計算によって価格が決められていくのかということについて、パンダやイソップ物語などのストーリーをふんだんに用いて興味深く説明していきます。
まとめ
第二部では、「会社の値段はいくらか?」、という企業価値を決める方法も説明されています。
実は、パンダの値段もトヨタやFACEBOOKなどの企業の価値も、同様の方法で導き出せるそうです。
入門書と謳いながらも、企業価値を求めるプロセスについてはかなり深くまで、掘り下げて解説しています。
急に難解になるのではないかと一瞬不安になりますが、さすがにそこは本書の特徴である「ストーリーを用いた解説」が企業価値の仕組みを一気に説明していきます。
ビジネスやファイナンスの世界では、モノの価格がどのように決まっているかが理解できるようになれば、モノでもサービスでも、企業価値でも、投資案件でも、そこに提示された価格が高いのか安いのか、得なのか損なのかという判断が容易になるというのです。
ビジネスマンならば、このファイナンスの知識を理解して、毎日の仕事や生活に活用させてみてみませんか。
著者の野口さんは、本の中でこう言っています。
「本書をお読みいただいたことで、みなさんのファイナンスの知識はすでに相当なレベルまできているはずです。自信をもって保証します」
ここまで言い切られてしまうと、読まずにはいられなくなりませんか。
パンダをいくらで買いますか? ストーリーで学ぶファイナンスの基礎知識 |