新刊ラジオ第1635回 「親の家を片づける―ある日突然、膨大な老親の荷物や家の整理と処分が、あなたの身に降りかかってきたら、どうしますか? (ゆうゆう特別編集)」
親の家の片づけを迫られる50代の子世代が増えています。老親が介護施設に入ったり亡くなったりしたとき、膨大な量の荷物や、家の整理と処分があなたの身に降りかかってきたらどうしますか?親の家は親が生きた証そのもの。単なる整理整頓とは異なります。本書で紹介されている親の片づけに関わった15人のケースを参考に、ぜひ、あなたらしい親の家の片づけ方を見つけて下さい。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
今回は親の家の片づけという極めて今日的な問題についての本のご紹介です。
「モノは豊かさの象徴である」、「もったいない」という考え方が深く根付いている世代を親に持つ、50代・60代の子世代。
そんな彼らの親が介護施設に入ったり亡くなったりしたとき、モノで埋め尽くされた親の家を残されたら、どうすればいいのでしょうか。
親が亡くなった後に親の家を片づけは当たり前ですが、親が一人暮らしになった時にも親の家の片づけが問題になる、というこを意識している方は少ないかもしれません。
本書で紹介されているケースを基に、「親の家を片づけること」について考えていきましょう。
◆編集プロフィール 本書は主婦の友社より発行されております雑誌『ゆうゆう』の特別編集本です。 雑誌『ゆうゆう』は「50才からの人生を輝いて生きたい!」という女性に向けた読み物たっぷりマガジンで、毎月1日に発売されております。
一軒家でのひとり暮らしから、母は高齢者専用の集合住宅に。判断力のある母と娘が協力して一軒家を片づけたケース
都内在住の主婦、山口さんが、親の家の片づけに直面したのは昨年のこと。
それまで元気だった山口さんの母親が体調をくずし、突然、ひとり暮らしが難しくなってしまったことがきっかけでした。
18歳の時、大学進学の為に上京した山口さんは、卒業後も東京で就職し、その後、職場で出会った東京出身の夫と結婚。一男一女を育てながら仕事を続けてきました。
一方、山口さんの両親は、父親の定年を機に家を建て、出身地である福岡に移り住みました。
6年前、山口さんの父・康平さんが病気で亡くなってからは、母・朝子さんはひとり暮らしに。ひとりになっても泣き言も言わず、犬の散歩をし、カラオケクラブにも入り、いつ電話しても明るい声を出してくれるなど、気丈にがんばっていた朝子さんですが、康平さんが亡くなってから4年半後、突然、体調を崩しました。
「“そっちに行こうか?”と言うと、普段なら負担をかけまいと“大丈夫よ”という母が、素直に“うん”と返事をしたんです。」
山口さんは会社を早退し、その日のうちに福岡に飛びました。
自宅に着いて母の様子を見た山口さんは、顔色も悪くなくいつも通りの朝子さんの姿に、ほっと胸を撫で下ろしました。
山口さんはそのまま2日間を朝子さんのそばで過ごし、そして3日目、東京に帰るという日に朝子さんは再び、山口さんに不調を訴えました。
熱は37度足らずでしたが、顔色は真っ青、体が小刻みに震えだした朝子さんの様子に、何か悪い病気なのかもしれないと、あわてて救急車を呼んだ山口さんは、そこで担当医から老人性うつからくる転換性障害ではないかと言われ、このとき、もう母をひとりで福岡に置いておけない、ひとりっ子の私が母の面倒を見る日がついに来たと決意したそうです。
しかし、実際問題、朝子さんを山口さん宅に引き取るのは、スペースの問題もあり難しいものでした。
悪いことは重なるもので、当時、山口さんの義父母も体調をくずして入退院を繰り返しており、加えて、山口さん自身の仕事も忙しいときでした。
この状況の中、わが家の近くに母の住む場所を探し、母の引っ越しをし、遠く離れた福岡の家をたたまなくてはならない。
このとき、山口さんを助けてくれたのは雑誌で得た高齢者用の施設の違いについての情報や、福祉関係の仕事をしている友人でした。
友人に状況を包み隠さず打ち明けて相談した山口さんは、数日後、「高齢者向け優良賃貸住宅があるよ」と連絡を受け、すぐに見学に向かいました。
そこは、日中はヘルパーの資格を持つ管理スタッフが常駐しており、家事援助や介護支援の手配もしてもらえる高齢者向けの集合住宅。
コミュニティスペースもあり、本来社交的な母にぴったりだと思った山口さんは、その日のうちに契約しました。
「母の状態がどのように変わるのかわからない。これ以上、お互いに不安を抱いたまま遠距離で暮らすのは得策ではない。答えが出ていましたから、一刻も早く母の住まいをこちらに移したかったんです。」
引っ越しは2カ月後。
朝子さんが夫とともに30年間暮らした5LDKの一軒家から移る先は、35?の広さしかない1LDKでした。
山口さんが結婚した後、終の棲家として両親が購入した家には、大人二人の暮らしとはいえ、モノがぎっしりと詰め込まれていたそうです。
新しい生活のために何を持っていくか、何を置いていくか。リミットは2カ月後。時間との戦いでした。
体調が完全ではない母ひとりで引っ越しとモノの処分が出来るはずもなく、山口さんは土日を利用し、有給休暇も取って福岡に通いました。
父と母が30年間暮らした家にぎっしりと詰まった家財道具の処分に、どこから手をつけていいか分からず途方に暮れ、底なしの不安に押しつぶされそうになったこともある。と山口さんは当時を振り返ります。
しかし、やるしかない。
心を奮い立たせた山口さんはやるべきことを紙に書き出して、いとこ夫婦にも力を貸してもらいながら、粛々とこなしていきました。
母・朝子さんも体調が悪い中、がんばって必要なものと不用品を分けていました。山口さんが東京に戻っている時も、毎日、メールで片づけの進捗状況を確認し合いました。
“きょうはどこを片づけた?” “台所。でもまだ半分も終わっていない” “惜しいと思っても、絶対に必要なもの以外は残さないで” “思い出があるんだけど…” “思い出は心にしまっておけばいいでしょ。これからまた東京で思い出をつくろうよ”
こうして、母と娘、励まし合いながら片づけをしていったのです。
また、家の片づけと同時に家の処分の準備もすすめ、引っ越ししたその年のうちに、家の売買も成約しました。
全てを終えた今、母・朝子さんは欠食もなくなり、最近では歌のサークル活動にも参加するほど、心身ともに元気を取り戻したそうです。
怒涛の日々を振り返って、山口さんはいろいろなことを考えています。
「私もいつか、母のように持ち物のほとんどを処分しなくてはならないんだろうなって。私だけでなく、誰もがモノを処分しなくてはならない時代なんだと思います。」
これだけは覚えておきたい「親の家の片づけ」の基本ルール
・仕分けしたものの置き場を確保する
片づけでは、まず「残すもの」「処分するもの」「判断を保留するもの」に分ける必要があります。
そして分類したものを仮置きする場所が必要です。
処分するものはベランダや庭先など雨風が多少当たる場所でもいたしかたありませんが、残すものは家の中に置かなくてはなりません。
そのために6畳一間分ぐらいの空きスペースは確保したいもの。このスペースのありなしで、作業効率は全く違ってきます。
・一度に全部やろうと思わない。体力・気力も考えて、何回かに分けて片づける。
親の家の片づけを迫られるのは50代以上がほとんどです。
子世代も年齢を重ね、確実に体力・気力が落ちています。若い時なら一気に整理できたことも、エネルギー不足で思うように勧められなくなっています。
そんな状態で心身を奮い立たせて片づけに取り組まなくてはならないのが、親の家の片づけです。
だからこそ無理は禁物。
疲労が蓄積しないように、心身の調子にも配慮して、何回かに分けて片づけるのが現実的です。
・ひとり暮らしに多くのものはいらない
親が介護施設や高齢者専用の集合住宅に移る場合、居住スペースにも制限があるので、ほとんどモノを持っていくことはできません。
高齢者のひとり暮らしに多くのものは、いりません。料理に生きがいを感じているというような人は別にして、鍋なら中小各1個で事足ります。
コートも何枚もいりません。今使うもの、これがなかったら困るというものだけをまず選びます。
そして生活を彩ってくれるものをちょっとプラスしていけばいいのです。
■ まとめ
今回紹介した以外にも本書では計15例の「親の家の片づけ」ケースや、片づけの際に役立つちょっとした知識もコラム形式で掲載されています。
また、親の家の片づけに直面した際に非常に役に立つ「親の家の片づけ心得7か条」といったものも紹介されているので、まだこのようなことに直面していない方でも心構えとして読んでおくといざという時にとても役立つでしょう。
「決して楽ではなかったけれど、親の家を片づけてよかった。親の人生に思いをはせることもできた。自分のこれからの生き方も考えることができた」
本書を通して、そんな風に親の家の片づけに取り組めたら素敵だと思います。 ぜひ、あなたらしい親の家の片づけ方を見つけてください。
親の家を片づける―ある日突然、膨大な老親の荷物や家の整理と処分が、あなたの身に降りかかってきたら、どうしますか? (ゆうゆう特別編集) |