新刊ラジオ第1633回 「ハナミズキのみち」
東日本大震災で息子を亡くした母。悲しみに打ち拉がれ泣いてばかりの日々に、ある日息子からのメッセージが降りてきます。「おかあさん!いのちをまもるハナミズキを、いっぱいいっぱいうえてね」。息子のモノローグで語られる楽しかった生活と美しい松原の風景。母と息子の愛と絆の物語です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
東北地方ではハナミズキの花が今、一番キレイな季節ですね。
一青窈さんの歌のタイトルでも有名なハナミズキ。
みなさんどんな花かわかりますか?
漢字で書くと「花水木」。
4月から5月にかけて白や赤、ピンクの花をつける木、あれがハナミズキです。
秋には赤い実をつけ、綺麗に紅葉し、一年中四季折々の変化が楽しめる花木です。
元々はアメリカが原産で、1912年に当時の東京市長がワシントンに桜を贈ったお返しに贈られたのがきっかけで、日本に入ってきたそうです。
ちなみにハナミズキの花言葉は「私の思いを受けて下さい」「公平にする」「返礼」だそうです。
この花言葉は日米友好のエピソードにつながっているような気がします。
そんな「ハナミズキ」がタイトルにはいっている絵本「ハナミズキのみち」。
表紙は綺麗な白とピンクのハナミズキが描かれています。
このお話はそんな綺麗なハナミズキの美しい花が中心となっている絵本です。
今回は、文化放送「超!A&G+」の「能登麻美子 おはなしNOTE」から朗読部分をいただきましたので、ぜひ本編をお聴きください。
■朗読(敬称略)
・能登麻美子
◆著者プロフィール 文・淺沼ミキ子(あさぬま みきこ)。 岩手県陸前高田市で東日本大震災に遭い、25歳の長男・健(たける)さんを亡くしました。地震直後に長男に会っているものの、遊びに来ていた孫と娘のいる自宅へ自身は戻り、長男は職務遂行のため避難場所である市民会館へ向かいます。しかし十日後、長男と再会したのは遺体安置所でした。その悲しみをのりこえるため2年の歳月をかけて言葉をつむぎ、絵本『ハナミズキのみち』が誕生しました。
絵・黒井健(くろい けん)。 新潟市生まれ。新潟大学教育学部美術科卒。出版社に入社、絵本の編集に携わった後に退社、フリーのイラストレーターとなります。以降、絵本・童話のイラストレーションの仕事を中心に活動。主な絵本作品に『ごんぎつね』『手ぶくろを買いに』(偕成社)『うまれてきてくれてありがとう』(童心社)『Hotel』『LONG NIGHT』(瑞雲舎)、画集に『ミシシッピ』(偕成社)等多数。2003年に山梨県清里に、自作絵本原画を常設する「黒井健絵本ハウス」を設立します。
絵本について
今回紹介する絵本「ハナミズキのみち」は、著者の淺沼ミキ子さんの東日本大震災での出来事をもとに、2年あまりもの時間をかけて制作されました。
淺沼さんは3月11日の地震直後、指定避難所の市民会館で長男の健(たける)さんと再会しました。
でも淺沼さんは娘と孫が来ていた自宅に戻るため高台に移動。
その間に津波が市民会館をのみこみます。健さんと再開したのは10日後の遺体安置所でした。
淺沼さんは「自分がもっと津波の怖さを知っていれば、助けてやれたのに」と今でも悔やんでいるそうです。
そんな淺沼さんはどうしてこの絵本を書く事になったのでしょうか?
淺沼さんはあとがきでこのように綴っています。
「津波で息子を失ったあと、ねむれない日がつづき、胸が苦しくなり、呼吸困難になることが何度かありました。どうしても会いたくて、会いたくて、泣いてばかりいた日々。 ある日、息子の声が、わたしの耳にはっきりときこえてきたのです。 そうだ、わたしには後世につたえていく大きな役割があるんだ……。 『命を守る木を植えたい』 亡き息子の声におしえられて、わたしは今日も生かされていることに感謝しました。」
現在、淺沼さんの自宅ではハナミズキがきれいな花を咲かせています。
将来、健さんのハナミズキのみちが本当に出来るといいですね。
黒井さんの絵も繊細かつ迫力があり、胸にせまります。
是非お子様から、大人まで多くの人に読んでもらいたい一冊です。
ハナミズキのみち |