だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1613回 「コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング」

コクヨグループの人材育成も手がける著者が、仕事で役立つロジカルシンキングを優しく教えてくれる一冊。ステップに分かれた構成は理解しやすく、図解を多くまじえた平易な表現で書かれているので、ロジカルシンキングって難しそうと思う人には打ってつけの本です。

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

この本は、ロジカルシンキングの本としては、身近な例えや平易な表現、多くのイラストや図表を使用しているので、タイトル通り簡単な部類に入ると思います。

ですので、ロジカルシンキング?敷居が高いなぁ、と感じる方には特にオススメします。

さて、本の内容ですが、まず著者の下地さんはロジカルシンキングの実際の使い方を2つに分けて説明しています。

「考えを整理して伝える(ロジカルコミュニケーション)」 「問題の解決策を考える(ロジカル問題解決)」

なるほど、その通りですね。

「考えを伝える時」と「解決策を考える時」ロジカルシンキングは非常に役立ちます。

そしてタイトルにもある通り、本書ではロジカルシンキングを5つのステップに分けて教えてくれます。 最初の3つは「考えを整理して伝える」のに役立つ。

「ピラミッドストラクチャー」「帰納法と演繹法」「ミーシー(MECE)」 後ろの2つは「問題の解決策を考える」のに役立つ「ロジックツリー」「マトリックス」ですね。

いきなり難しそうな単語が出てきたなぁと思った方、ご安心下さい。

下地さんは「帰納法と演繹法」は並列型と直列型と言い換えていたり、「ミーシー」はヌケ・モレ・ダブリをなくす、と言い換えていたりして、難しい印象を持たせないように配慮しています。

職場で「帰納法で考えろ!」なんて言われても分かりませんものね、だからこうやって平易な表現に置き換える配慮は、とても僕好みでした。

では、今回の新刊ラジオでは、「ピラミッドストラクチャー」のさわりの部分と、他の2〜5のステップが、どのような場面で役立つかを、ご紹介していきましょう。

◆著者プロフィール 下地寛也。1969年生まれ。 コクヨファニチャー株式会社[コクヨの研修]スキルパーク シニアトレーナー 法人顧客への人材育成・教育研修を担当する一方、コクヨグループ内部の人材育成の企画・実施にも取り組まれている方です。

ピラミッドストラクチャー

伝える時も考える時も最後に導き出すのは「結論」です。

「○○はこうです」とか「○○をするべきです」という結論を導き出すのがロジカルシンキングの役目なんですよね。

こういう結論が無いと、仕事の会議も、日常のちょっとしたお願い事も、曖昧で意味の無いものになってしまいます。

さらには、しっかりした結論でないと、相手に伝わらず、問題解決にもなりません。

この結論を支えるのが「ピラミッドストラクチャー」というテクニックです。

まずはこんな簡単な例えから入りましょう。

食堂に「当店のおすすめは牛丼です!」と貼り紙があったとします。

この貼り紙、お店が伝えたい事が書いてあるので、立派な「結論」なのですが、疑り深いお客さんに対しては、まだ弱い結論ですね。

「牛丼がおすすめ?お前が売りたいだけだろ?」

そんなお客様を納得させるために、この貼り紙にこういった理由・根拠を加えます。

「うまい・早い・安い!当店のおすすめは牛丼です!」

「おすすめは牛丼」という結論を、「うまいから」、「早いから」、「安いから」、という3つの根拠で支えました。

頭の中でイメージして欲しいのですが、「おすすめは牛丼」という結論を「うまい」「早い」「安い」という根拠の3本足で支えている様子をイメージして下さい。

文字通り、揺るがない結論に思えてきたでしょう?

もしも、これよりさらに疑り深いお客さんが来て「本当にうまいのか?」「早いのか?」「安いのか?」と聞かれたら・・・さらに3本ずつ足を追加してみてはどうでしょうか。

「うまい」という根拠・理由に「良い素材」「入念な仕込み」「有名シェフが作った」など、

「早い」という根拠・理由に、「調理手順が簡単」「食券制なのでお客様を待たせない」「注文からすぐ取り掛かる」など、

「安い」という根拠・理由に、「大量仕入れで原価が安い」「利益率を抑えて安価に販売」「家賃が安いので」など、ここまで言えば、大抵の人は納得してくれるはずです。

さきほどの頭の中のイメージですが、「おすすめは牛丼」という結論を「うまい」「早い」「安い」という三本足で支えていましたよね?

この三本足にさらに三本足を足していくと、どういう図形になりますか?

そう、ピラミッド型。これが、ピラミッドストラクチャーなのです。

このように、ピラミッドストラクチャーは結論をしっかり支える、つまり論理をキチンと構成するのに役立つ考え方です。

自分の考えを相手に伝える時、理由や根拠を見つけるために利用してみて下さい。

では、ここからは残りのステップをごく簡単にご紹介しましょう。

様々なステップ

【帰納法と演繹法】

下地さんは並列型と直列型なんていう風に言い換えていますね。

これは先ほどの結論と理由をつなぐための方法です。

ぶっちゃけ結論と理由をつなぐ方法はこの2種類しかありません。

帰納法(並列型)は、いくつかの事実を並べて、その事実から共通点を見つけて結論を導く方法です。

例えば、「A君はXbox360を持っている、B君はPS3を持っている、C君はWiiを持っている」(結論)「だから僕もゲーム機が欲しい」といった感じですね。

もう一つの演繹法(直列型)は、ある事実とそれが当てはまるルールを組み合わせて結論を導く方法です。

例えば、「今日は木曜日だよね」「木曜日にポケモンのテレビあったよね」(結論)「じゃあ今日はポケモンのテレビあるよね?」といった感じですね。

皆さんも日常で使っている論理だと思いますが、どんなものが帰納法で、どんなものが演繹法なのか?

それぞれの方法にはどんなメリット・デメリットがあるのか?

どういう時にどちらを使うのが好ましいのか?

本書でしっかりと抑えておきましょう。

【ミーシー(MECE)】

Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略ですが、本書のどこにも書いてありません。僕もおぼえなくて良いと思います!

頑張って訳すと「相互に排他的な項目で完全な全体集合」となりますが……

もう面倒臭いから、下地さんの言う通りでいいです!

ヌケモレ・ダブリがない状態です!

さきほど、僕が「牛丼がおすすめ」という結論に関しての理由を提示しましたが、あれは僕のオリジナルなんです。

最初は「うまい」の根拠に「良い肉」「良いタマネギ」「良い出汁」と考えたのですが……

ここでミーシー発動!

『素材の話しかしてないじゃん!』

というわけで、「良い素材」「入念な仕込み」「有名シェフが作った」という理由に改めました。

このミーシーですが、どのように使いこなすのかは、本書をお読み下さい。

【ロジックツリー】

ここからは「 問題の解決策を考える」のに役立つテクニックです。

ロジックツリーは問題の原因を探るのに役立ちます。

ピラミッドストラクチャーと似た感じですが、微妙に違うので気をつけて読んでみて下さい。

【マトリックス】

最後は「マトリックス」

映画のイメージが強すぎるのですが、本来は「生み出すもの」「基盤」「行列」という意味ですからね。

本を良く読む人なら、マトリックス図・マトリックス表というものを見たことがあると思います。

あとは、クロスマトリックス。ビジネス書で水野俊哉さんがよく使いますね。

言葉で説明するとややこしいのですが、一目見れば皆さん「ああこれか」と分かって頂けると思います。

何かを選ぶ必要があるときに、複数の評価軸で選択肢を評価する際、役立つ図表です。

詳しくは本書でご確認下さい。

まとめ

ロジカルシンキングをかんたんに学べる本として、とてもよく出来ています。

オススメの読者層は全人類です!

会社員じゃなくても、どんな職種の方にも役立つテクニックですので、ぜひこういった本で学んでみて下さい。

若手に限らず、「経験と勘で仕事ができる!」というベテランの方でも、ロジカルシンキングを身につけておくと、様々な事に柔軟に対処可能になりますので、恥ずかしがらずに学びなおしてみる事をオススメしますよ!

コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング

コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング

コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング

コクヨグループの人材育成も手がける著者が、仕事で役立つロジカルシンキングを優しく教えてくれる一冊。ステップに分かれた構成は理解しやすく、図解を多くまじえた平易な表現で書かれているので、ロジカルシンキングって難しそうと思う人には打ってつけの本です。