だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1605回 「アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える」

『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』に続く、驚異シリーズ第3弾。今作ではアップルストアの感動的な顧客サービスを解き明かします。前2作同様、実践的で役立つヒントが満載です。

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概要

こんにちは。ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

今回紹介する本は、アップルの直営店である『アップルストア』の顧客サービスをテーマに取り上げ、前作同様「アップルの活躍を支える魔法を理解し、応用できる」そんな本になっています。

『アップルストア』というと、なじみがない人も多いかもしれません。

『アップルストア』はアップルの直営店で、日本には、札幌・仙台・銀座・渋谷・名古屋・大阪・福岡の7店舗が存在します。

なお、本国アメリカでは200店舗以上あるそうです。

そんなアップルストアですが、ただアップルの製品を売っているだけのお店ではありません。

早速ですが、本書からアップルで小売部門を率いていたロン・ジョンソンという人の言葉を引用しましょう。

「アップルストアが成功したのは製品のおかげだと言われますが、では、ウォルマートやベストバイ、ターゲットでも大半の製品は買えるし、そちらならなにがしかの形で値引きも得られるというのに、また、アマゾンならすべての製品が買えるし、売上税も払わずにすむというのに、なぜ、世間の人々はアップルストアに詰めかけ、定価で買おうとするのでしょうか。お客様は体験を求めてアップルストアに来店され、その分、プレミアムを払ってくださるわけです。」(P16より抜粋)

……そう、アップルストアは顧客サービスが優れているんです!

【エクスペリエンスという魔法】

そんなアップルストアを訪れた時の感動的な体験(エクスペリエンス)は、どのようにして成り立っているのか?

これが本書のテーマなのです。

本書の構成は3部構成で、それぞれ……

第1部「社内の顧客を奮い立たせる」

第2部「社外の顧客をもてなす」

第3部「舞台を整える」

となっています。

分かりやすくいえば、1部がアップル社内・ストア内の人材育成や権限委譲について、2部が接客やサービスのノウハウ、3部がストアそのものの環境づくりについて、書かれています。

では、ここからは本書のいくつかの部分を抜粋してご紹介しましょう。

◆著者プロフィール カーマイン・ガロ。 CNNとCBSのアンカーや記者を務め、 現在は、世界の有名ブランドを支えるコミュニケーションコーチ。 『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』 『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』 は国際的ベストセラーにもなりました。

アップルのビジョン--暮らしを豊かにする

■アップルのビジョン--暮らしを豊かにする

まずは第1部より、単純明快にして、本書の一番のポイントである部分をご紹介します。

『アップルストア』のような素晴らしい顧客体験を生み出すには、何が必要なのか?

その答えは、明確なビジョンです。

これはアップルストアだけでなく、ジョブズにまつわる成功体験の全てに言えることだそうです。

アップルストアには「暮らしを豊かにする」という理念・ビジョンがあり、理念カードにも書かれています。

ビジョンの有効性は、本書だけなく、色々なビジネス書でも語られていますよね。

■アップルストアの採用基準

素晴らしい顧客サービスを提供するためには、素晴らしい従業員が必要です。

では、アップルストアはどうやって優秀な人材を採用しているのでしょうか?

本書のこの一文が大きなヒントになります。

アップルストアが採用しようとするのは、コンピューターについての知識が少なく、人について詳しく知っている人物だ。(P40より抜粋)

過酷なアップルの面接を通った人は、常に愛想よく、笑顔を浮かべていることが大事だと言うそうです。

そのくらい、面接官との面接だけでなく、他の就職希望者との雑談に至るまで、愛想のよさ、人の良さが評価対象として見られているのです。

アップルストアが欲しがっているのは、他人の面倒をどこまでも見れる人の良い人物であり、チームの一員となれるチームプレイヤーであり、そして「スティーブ・ジョブズに正面からぶつかれる」勇敢な人物なのだそうです。

最後の要件で僕は少し笑ってしまいましたが、これは真面目な内容です。

ジョブズと正面からやりあえる、という事は、その人は自分の信じるものがあり、そのためには戦う事もいとわない気概があるということ。

そういった勇敢な人物は、実際に現場で働いても、自分の担当部署を主体的に捉え、情熱と責任感を持って仕事に取り組むんだそうです。

なお、アップルの詳しい採用プロセスが知りたい方は、本書に書かれていますので、読んでみて下さい。

とても簡単に入れそうに思えるかもしれませんが、実際にアップルに採用されるのは非常に難しいんだそうですよ?

サービスの5ステップ

■サービスの5ステップ

最後は第2部より、実際にアップルストアで行われている顧客サービスを、5つのステップに分けて解説している部分をご紹介します。

本書によると、アップルストアのサービスは次の5つのステップで行われているそうです。

A(Approch)・・・・顧客一人一人を暖かい挨拶で出迎える P(Probe)・・・・・顧客のニーズを丁寧に聞き出して理解する P(Present)・・・・顧客に解決策を提示する L(Listen)・・・・・課題や懸念などをしっかり聞いて理解する E(End)・・・・・・・あたたかい別れのあいさつと次回の来店を促す言葉で分かれる

それぞれ、APPLEの頭文字をとったユニークなステップですね。

詳しい説明は本書を読んでのお楽しみ、としておきますが、例えば最初のアプローチ、あいさつ一つをとってみても、アップルストアが非常に優れている事に気づかされます。

「顧客一人一人を暖かい挨拶で出迎える」というのは、日本企業にお勤めの方なら「当たり前だ」くらいに思うかもしれませんが、「ただ声を出すだけの挨拶」ではないのです。

最初にご紹介したビジョンと共通するところがあるのですが……

少し考えてみて下さい。

「なぜ、お店にくるお客様を暖かい挨拶で迎えるのですか?」

アップルストアの従業員になったつもりで答えてみましょう。

アップルストアの店員はこう返したそうです。

「総合的な顧客体験を高めるため、顧客に必ず挨拶をするようにしています。アップルは体験をとても重視していますから。来店してよかったと思っていただきたいし、楽しいと感じていただきたいのです。」

この意識の高さ、ブランドの目標を共有しているか否かが、アップルストアと他の小売店の大きな違いなのです。

■まとめ

では、まとめに入りますが、本書は小売店に勤める方だけでなく、他の職業の方にも役立つ知識が満載です。

テーマとして扱われているアップルストアはアメリカで高い支持を集めていますし、そのアップルストアがお手本としていたり、あるいは著者のガロが引き合いに出した他の優れた企業のエピソードもたくさん載っていて参考になります。

リッツカールトン、ディズニー、フォーシーズンズ、ザッポスなどなど、今現在、世界にはこんなに優れた顧客サービスを提供する企業があるんだなぁと、楽しんで読ませて頂きました。

アメリカ系ビジネス書特有の「あれ?なんか急に小説始まったぞ!?」的なエピソードの豊富さを楽しめると、一層読み応えのある本になると思います。

ぜひ、あなたのお仕事の顧客サービス、従業員育成方針の参考にしてみて下さい。

アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える

アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える

アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える

『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』に続く、驚異シリーズ第3弾。今作ではアップルストアの感動的な顧客サービスを解き明かします。前2作同様、実践的で役立つヒントが満載です。