新刊ラジオ第1601回 「自立する国家へ!」
憲法、防衛政策、対中政策、歴史認識など、考え方が全く異なる、田母神さんと天木さん。戦後から続く日本のアメリカへの従属。これからの日本は、日米同盟を脱し、自立への道を進んでいかないと何をやっても救われない。最強の自主防衛策とは?権力と闘い逆らう元外交官と、政府見解を否定する発言で注目された元航空幕僚長のふたりが大激論!安倍新政権の覚悟を問う!
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概要
こんにちは。ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
防衛政策、対中政策、歴史認識など、考え方が全く異なる、田母神さんと天木さん。
そのお二人が、日本がアメリカへの従属から自立する道を進むべく提言する本を今回出版しました。
考え方が違うもの同士が一冊の本を出版する。それはとても画期的なことであり、興味深いものです。
なぜ、考え方が180度違うお二人が共著したのか?
そもそもおふたりは、防衛政策や憲法9条観、対中政策、歴史認識など、おおよその考え方は正反対であるといいます。
それでもそれらの違いを超えた一致点があるというのです。
それは、日本が対米従属から脱却して自立しなければならないということでした。
日本はアメリカから自立しなければ日本の未来は見えてこない。
政権交代をはたした安倍政権ならば経済、防衛、領土問題にも期待が持てるのではないだろうか……という点から実現した、今回の出版。
本書は3部構成になっていて、まず第1部が天木さん、第2部が田母神さん、おふたりが個々の持論を展開なさっています。
そして、第3部でおふたり揃っての大激論が繰り広げられています。
◆著者プロフィール 田母神俊雄さんは、1948年福島県郡山市生まれ。 67年、防衛大学電気工学科に入学。卒業後の71年、航空自衛隊に入隊しました。 地対空ミサイルの運用幹部として部隊勤務10年。 統合幕僚学校長、航空総隊司令官などを経て、2007年には第29代航空幕僚長に 就任。 08年、民間の懸賞論文へ応募した作品が政府見解と異なるものであったことが問題視され、幕僚長を更迭されてしまいます。 その年の11月3日に定年退職。 そのわずか数日後の11月11日に、参議院防衛委員会に参考人招致されましたが、論文内容を否定するものでないことを改めて強調しました。 現在は執筆、講演活動を中心に、ご活躍なさっています。
天木直人さんは、1947年山口県下関市生まれ。 69年、京都大学法学部中退後、上級職として外務省に入省しました。 中近東アフリカ局アフリカ第二課長、内閣安全保障室審議官、在マレーシア日本国大使館公使、在カナダ日本国大使館公使、在デトロイト日本国総領事などを経て、 01年から駐レバノン日本国特命全権大使となりました。 03年8月末、小泉政権下、イラク戦争に反対し、外務省を解雇処分となってしまいます。その後は評論・執筆活動を続けていらっしゃいます。『さらば外務省!』はベストセラーになりました。
考え方の相違、認識の一致
おふたりが共通して仰っていることは、これまで講演や集会などに招待してくれた団体は、自分たちと同じ考えのひとたちばかりで、そこでいくら話をしたとしても、仲間内で気勢をあげるだけに終わってしまい、その思いが拡散していかない……、というじれったい思いがあったといいます。
異なる考え方を持つ人たちを相手に話してこそ意味がある、そう考えていたので、お互いがあえて敵地に乗り込むという態勢で臨んでいった訳なのです。
そもそも、なぜ日本の外交はこんなに対米従属になってしまったのでしょうか。
天木さんは本書の中で、このように述べています。
「日本は1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約を締結し、米国が主導する自由主義陣営に与する形で国際社会に復帰する道を選んだ。しかし、同時に同じ日に、日米安保条約を締結し、米国の望む場所に、米国の望む時まで、米国の望むだけの米軍駐留を許した。 以来、日本の歴代の政治家の最大の課題は、この不公平条約の撤廃と、米国の占領状態からいかに脱却し、自立する日本を取り戻すかであった」 (P3―4より抜粋)
その従属関係は外交、安保問題を超えて全ての分野に及んでいるというのです。
その点を田母神さんは、本書で次のように延べています。
「およそ70年前、日本はアメリカと4年に及ぶ戦争を経験した。そして、1945年8月15日、日本は連合軍が示したポツダム宣言を受諾し、昭和天皇は、終戦を迎えたことをラジオ放送を通じて日本国民に知らせた。 あの日から今日に至るまで、アメリカという巨大国家の影は、面積がわずか25分の1という日本列島を覆い続けてきた。 GHQ、在日米軍、日米安全保障条約、日米地位協定、日米構造協議、日米同盟、そしていま話題のTPPに至るまで、さまざまな形をとりながらも、アメリカの影が日本から消えてなくなることはなかった」 (P88より抜粋)
アメリカからの自立を訴える点では共通しているお二人ですが、考え方の部分では意見が異なっています。
軍事的な部分でも、アメリカから独立をして軍事的に自立しなければ、国家は自立できないという田母神さん。
自衛隊から国防軍へのバージョンアップも主張しています。
それに対し、天木さんは、日本国憲法に高い評価を持っておられ、世界に誇る平和憲法であり、その思想を実現することが大切で、日米同盟に頼ることは、本来の平和国家を捨てて、イラク戦争に参加したときのようにアメリカの戦争に加担することになるから日本の自立が必要なのだと訴えています。
対米自立が必要だという認識では一致するおふたりですが、その理由は全く異なっていました。
そんなふたりが対談をした。それだけを聞いても興味が湧いてきませんか?
まとめ
現在の日本はアメリカに守ってもらっており、その結果、アメリカの意に反することはできずに、経済的に損をしているともいいます。高い兵器やミサイルを買わされたり、TPP問題もしかり、だそうです。
本を読み進めていくと、いままで知らなかったこと、誤解をしていたこと、騙されていたこと、信じ込まされていたことなど、政府やマスコミが伝えてこなかったことなどがみえてきました。
アメリカは今まで何をしてきたのか、これから日本をどのように操縦していきたいのか。そして、このままいけば、日本はどんどん弱体化していってしまうのではないかという不安にかられます。
そこから脱却するためには、安倍新政権に何を期待すればいいのか。
安倍新内閣にエールをおくるという意味も込められた今回の作品。
政権交代で日本が変わろうとしている今だからこそ、読んでおきたい一冊ではないでしょうか。
この問題は深く難しいことなのですが、とても分かりやすく書かれており、今までこの分野の書籍を敬遠してきた人にもお勧めです。
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